甘い囁き

「…せやから、琥珀は来週から現世任務なんやけど…」
「そっか…うんっわかった!ギンちゃんのためにも、琥珀、頑張ってくるね!」
「〜っ嫌や!琥珀、僕をほっといて現世なんか行かんといて!!」
「ひゃっ!?」






ギンからの現世任務への通達に琥珀はにこりと笑顔で返す。…が、ギンはどうも気に入らないらしく、目の前にいる彼女をぎゅうっと自分の腕の中へ閉じ込めてしまった。




「何やってるんですか、隊長!月丸君はちゃんと了承したじゃないですか」
「せやかて、琥珀が現世やで!?…僕の目の届かんところなんかに行かんでええねん…」
「?ギンちゃん…?」




ぎゅうう、と琥珀にしがみつき、離そうとしないギンにイヅルが呆れ気味にも話を続ける。




「なんで僕と琥珀が離ればなれにされなあかんの?」
「離ればなれって、たかが一週間じゃないですか!本当なら二週間のところを隊長が強引に一週間にしたんですよ?」
「一週間もや!!そんなん、僕堪えられへんわ!琥珀に一週間も会えへんなんて…イヅルはほんまに鬼や!」
「鬼って……」





ギンの当てつけにイヅルは言葉を無くす。そもそも、先程も彼が言った通り、本来なら二週間、現世で任務をしてもらうところをギンが無理矢理一週間にしてしまったのだ。…そして、もう一週間はとばっちりを受けたイヅルが埋めることになってしまったのだ。





「なぁ、琥珀。やっぱり来週から現世に行かんでもええよ。そない危険なこと琥珀がやるのが間違ってるしなぁ〜…心配せんでも二週間ともイヅルがしてくれるさかい」
「え、イヅル君が……?」
「なっ何勝手なことを言ってるんですか隊長!駄目ですよ、これは決定事項なんですから。今更変更なんて出来ません」
「…イヅルはほんまケチやな!」
「ケチとか、そういう問題じゃなくて…!!」



ギンとイヅルの間に挟まれ、琥珀はただただ小さく首を傾げるばかり。



「月丸君は五席の実力を持つ優秀な死神なのに、隊長は彼女を信じられないんですか?」
「そんなんちゃう!ただ僕が一週間も琥珀に会えへんのが堪えられんのや!!」
「そんな子供みたいなことを……!」





ギンの自分勝手な言動にイヅルは頭痛を覚えた。彼の腕に抱かれながら、首を傾げている琥珀が憐れにも見える。…こんな我儘な彼のどこに彼女は惹かれていると言うのだろうか。





「月丸君からも隊長に言ってくれないか?」
「イヅルが何で琥珀にそない口聞けるんよ!?」
「僕は彼女の上司です!」
「……?…んー、なんか、よくわかんないけど……ギンちゃんっ」
「何や〜琥珀〜」
「あのね………」





イヅルへの態度とは一変し、にこにこっと笑いながら琥珀に話しかけるギン。すると琥珀はこそこそ…とギンの耳元で何やら囁いた。
彼女が全てを告げ終えると、ギンのテンションはあり得ないぐらい上昇した。




「…ほんま琥珀はええ子やね。さすが僕が面倒見て来ただけあるわ」
「へへっ…ギンちゃん……」
「………月丸君は一体何て言ったんだろう…」






情けないぐらい笑みを浮かべ、嬉しそうにしているギンと、そんな彼に甘えるように抱きついている琥珀を眺めながら、今度はイヅルは首を傾げる番へと変わったのだった。



「琥珀が戻ってきたらギンちゃんに会えなかった一週間分…いっぱい甘えさせてね…ギンちゃん…」

1/52
prev  next