醜きもの、儚きもの
その場にいた者は皆、全身が凍り付いてしまったかのように身動き出来ずにいた。




「何してくれたん?僕の琥珀に、何て真似してくれたん?」
「…あ…っぎん、たいちょ…!」
「こないしてくれた分、ちゃんと返したらなあかんなぁ」





ギンは普段と変わらず笑みを浮かべているというのに、それがまた余計恐ろしく感じる。

スッと斬魄刀を取り、その刃先を女達に向けるギン。そっと目が開かれ、青い瞳が垣間見えた。




「死ぬ覚悟はえぇ?」
「やっ…お、許しくださ…っ」
「あかんあかん、今更命乞いなんかしても無駄や」
「ごめ、なさっ…わ、私…!」
「謝る相手、間違えてるんやないの?」





ちらり、とギンは傷ついて倒れている琥珀に目をやる。痛々しく、愛らしい顔にまで傷が出来、大きな瞳から涙が零れ落ちていく。自分が何よりも大事な女の子が、傷つけられた。嫉妬に駆られた馬鹿な女達によって。





「安心しぃ、一瞬や」




そう言って、ギンが刀を構えたそのとき。




「やめてっギンちゃんっ!!」




琥珀の悲痛な声が辺りに響いた。





「やめ、て…っギンちゃ…!だめ…っ」
「…琥珀、何言うてるん」
「おねが…っ!痛っ…!」
「!あかん、琥珀!」





無理して体を起そうとする琥珀を慌てて止めに入るギン。彼女の傍へと駆け寄り、そっと抱き寄せる。痛々しい傷を浮かばせながらも琥珀は微笑みを見せた。





「琥珀は、大丈夫…だから…へへっ……」
「…琥珀っ」
「…ごめんね、ギンちゃん……琥珀のせいで、嫌な思い…させちゃ…て…」
「…なんで、琥珀が謝るんよ…琥珀は何も悪いことなんか…っ!」
「ごめんね。ギンちゃ…ごめん、ね…」
「ちょ、琥珀…っしっかりしぃ!琥珀!!」





ゆっくりと、瞼を閉じ…意識を失った琥珀をギンは揺す振って、無事かどうか伺うが返事は返ってこない。





「…今のうちにっ…逃げなきゃ…!」
「きゃあああっ」





女達はこの場を後にし、身を振り乱して逃げていくが、今はそんなことギンにとってはどうでもよかった。…自分が大事に想う子の無事がわかればそれでよかった。





「…今、四番隊に診てもらうさかい…しっかりしぃや、琥珀…!」
「…っ…」





傷ついてボロボロになった琥珀の姿は。見るに堪えなかった。自分のせいで、彼女はこうまで傷つけられたのかと思うと、怒りが込み上げてならなかった。




「琥珀…」



1/52
prev  next