わたしの話を聞いてください

「…内部は傷ついていないので、しばらく安静にしてもらえれば完治するでしょう」
「さよですか…」
「今はただ、彼女の傍にいてあげてください。それが何よりの薬となると思いますから…」





卯の花隊長はそれだけ告げると、琥珀が眠りについている病室を後にする。残されたギンは琥珀の傍へ近づく。ただただ静かに、ぴくりとも動かない琥珀の手をそっと手に取り、優しく握ってやる。…手のひらから伝わってくる温かい温もりにようやく安心して胸をなでおろすことができた。






「…ほんま、なんで琥珀が…」






ぐっと思わず彼女の手を握る力を強めるギン。小さい体で、どれだけ痛い思いを我慢したのだろうか。





「…堪忍な、琥珀…」






そっと、琥珀の白い頬へ手を伸ばす。愛おしい存在が、わけのわからぬ女達によって傷つけられたのかと思うと…虫唾が走る。

そのとき、こんこん、と扉を叩く音が聞こえた。そして、ギンが返事をする前にその扉はガチャと音を立てて開かれた。






「…ギン」
「…何や、乱菊か…どないしたん?」
「…そんなの、決まってるでしょ」






ツカツカと足音を立てながら、琥珀が眠るベッドの傍へと駆け寄る乱菊。…無事だった琥珀の姿を見てほっと息をつく。





「…琥珀…ほんと、無事でよかったわ…」
「…なぁ、乱菊。少しの間、琥珀の傍にいてやってくれへん?」
「え…?」
「僕な、やらなあかんことがあんねん」






すっと、琥珀の手を離し、スタスタとこの場を後にしようとするギンに…乱菊は言葉をかけた。





「…っ何しに、行くつもり?」
「…別に乱菊には関係あらへんことや」




ギンは歩みは止めてくれたものの、一切乱菊の方へ振り向こうとはしなかった。…そして、乱菊にはギンが何をしに行こうとしているかなどと…聞かなくてもわかっていた。





「琥珀を傷つけた子達を、懲らしめに行くつもりなんでしょ?だったら、やめなさい。そんな馬鹿な真似…」
「…乱菊が、何言うてるんかようわからんわ」
「…っそんなことをしても、琥珀は喜ばないって言ってるのよ!」
「…僕は何も知らんて。そんなん」
「琥珀が、琥珀がどんな思いで堪えてきたのか考えてあげなさいって言ってるの!!」





乱菊の言葉に、ギンはぴくりと反応を示した。…そして、ようやく…ゆっくりと乱菊の方へ振り向いた。





「…何や、その口ぶりやと…乱菊は知っとったみたいやなぁ」
「え……」
「琥珀が、いつもこない目に遭うてたこと」
「…!」
「なして、僕に教えてくれなかったんよ!?琥珀が、こない目に遭うてることを知っとったら…!!」





ギンが珍しく声を荒げた、そのときだった。





「……や、めて…ギンちゃん……乱ちゃんは、悪くないの……」
「…!…っ琥珀!」
「…琥珀……」




弱々しい声が…ぽつりと小さく響いた。

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