痛みよりも、ただ今は

「琥珀…っあかんって、そない体で起きるなんて無茶や!」
「ら…乱ちゃんは…悪くないの、ギンちゃん…だから、乱ちゃんを……」
「もうええ、わかったから…横になっといて」






未だ完治しきっていない体で無理に体を起そうとする琥珀を、ギンは慌てて止めに入った。しかし、琥珀は変わらず自分のことなどお構いなしで話を続ける。







「…琥珀が、全部悪い…の…だって、琥珀…」
「何、言うてるんよ…?琥珀は何も悪いことなんて…」
「琥珀が、ギンちゃんの傍に…いたかった…から…」






琥珀の一言に、ギンは…頭が真っ白になった。






「…っ何、言うて…琥珀が僕の傍におるんは当たり前のことやないの…」
「…琥珀は…ギンちゃんと一緒にいちゃ、駄目なのに…」
「そないこと…っ!」
「…ギンちゃんと一緒にいるから…みんな、怒るって…知ってるのに…」






ギンちゃんといたい。…だけど、ギンちゃんと琥珀はあまりに違い過ぎた。ただ一緒にいたいという自分の我儘のせいで、こんなにも迷惑をかけてしまった。






「…ごめんね、ギンちゃん…琥珀が、一緒だから…ギンちゃんにも、嫌な思いさせちゃ…た」
「…そない寂しいこと言わんといて、琥珀。僕は、琥珀がただ、僕の傍におるだけで幸せなんよ…琥珀」
「…っけど、琥珀がいると…みんな、嫌な思いしちゃう…」






ギンちゃんだけじゃない、乱ちゃんだって…きっといい思いはしない。






「…琥珀は、ギンちゃんと会わない方が、よかったのかなぁ…?」
「…っ何馬鹿なこと言うてんの、琥珀!そないこと言うたらあかん!」






ポロポロと涙を零しながら告げる琥珀の姿が見ていられなくて、ギンは思わず彼女を抱きしめた。小さくて、細い…弱い、少女の体。この小さな体でどれだけの苦しみを一人で背負ってきたというのだろうか。もっと自分を頼ってくれて構わないのに…彼女はそれを良しとしなかった。







「…だってね、琥珀…よく、わかるから…」
「何が、わかるって言うんよ?」
「…琥珀を、殴ったりした人の気持ち…わかるから…」





ギンちゃんのことが、大好きだから。大好きな人の傍に、自分以外の人がいたら…寂しいってこと知ってるから。その場所に…自分が居たいって…思うから。






「…せやったら、僕の想いはどうなるんや…」
「ギンちゃ…」
「こない琥珀のことで頭一杯やって言うのに…この想いどないしたらええねん…!」
「…っギン、ちゃん…!」






ぎゅう、と先程より強く抱きしめられる。未だ完治していない傷に痛みが走るが…それ以上に何より…もっと、彼の温もりを求めた。






「…好きや、琥珀…」
「…ギンちゃん…」
「せやから、頼むから…僕と会わへん方がよかったなんて…言わんといて」






大好きなギンちゃんの声が…今にも消えてしまいそうなほど、弱々しく聞こえた。
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