何が幸福で、何が不幸なのか
「…駄目だよぉ…ギンちゃん…光之君、傷つけちゃ…っ」
ギンにしがみつき、必死に止めようとする琥珀。その大きな瞳には涙が浮かんでいる。今すぐにでも零れ落ちそうだ。
「…離しや、琥珀」
「…嫌…」
「僕の言うことが聞けへんの?」
「…だ、って…ギンちゃん…光之君、傷つけようとしてるもん…そんなの、琥珀嫌だもん…!」
ふるふる、と左右に首を振って断る琥珀。しかし、そんな彼女の態度が余計ギンをイラつかせるだけに過ぎなかった。
「琥珀に、光之君は必要ないんや。安心しぃ?琥珀のことは僕が守ったるから」
「…そんなことないもん、琥珀にとって光之君は…!」
「それ以上は聞きたない」
「…っ!…ギン、ちゃ…」
「琥珀の口から、僕以外の男の名前なんか聞きたないわ」
「でも…光之君は、琥珀の斬魄刀で…」
「…どうせ、僕は琥珀のこと守ってあげれへんもんなぁ?」
そう告げるギンの瞳はどこか寂しげで…琥珀もつられて悲しげに表情を曇らせる。
「そんなことないよ…ギンちゃんはっ…」
「……ごめんな、琥珀」
ぽん、と琥珀の頭に手を置くと…ギンはそれ以上何も言わず、部屋を後にした。残された琥珀と光之君はと言えば…
『…ははっ、所詮はその程度の思いなんだ。俺が少し言えば、容易く手放してしまうほどの思いで琥珀を守るだの好きだの言うとかどういう神経してるんだ』
光之君はせいせいしたとでも言うような素振りを見せる。その顔は誇らしげに笑みを浮かべていた。
『琥珀、これでよかったんだよ。あんな何考えているのかわからない男にこれ以上…』
「…ギ、ンちゃ……」
『もう今すぐにでもあんな男のことなんか忘れるんだ。いいじゃない、俺がいるんだから。俺は琥珀を簡単に見捨てるような真似はしない。今まで同様ずっとずーっと傍にいてあげる』
「…ギンちゃんっ…」
『……琥珀、もうアイツのことは忘れ…』
「ギンちゃん!!」
ギンがいなくなった方向ばかり眺め続ける琥珀を、強引に自分の方へ振り向かせようとする光之君だったが…それに逆らうように琥珀はギンの名前を呼んだ。
「ギンちゃん、いなくなっちゃった…っ!琥珀が、琥珀のせいで…ギンちゃん傷ついちゃったんだ…!琥珀のせいでギンちゃんが……!!」
『琥珀、落ち着いてっ…!』
「ギンちゃん、ギンちゃんっ…!!」
『琥珀っ!!』
「わぁああんっ!!ギンちゃああんっ…!ごめんなさい、お願いだから…琥珀、置いてかないで…っ!!ギンちゃん……!!」
光之君の言葉など、最早琥珀の耳には届かない。ただただ…いなくなったギンを求めて、声を上げて泣きじゃくることしか…琥珀には出来なかった。
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