エンドロールは大勢ね



「あれ...ジャンとマルコは?」

アルミンは少しだけ辺りを見回したが、やはり居ない。
もう日も沈み、消灯時間が迫ってきたのにも関わらずこの男部屋に居ないことに不審に思ったが、そんなアルミンにコニーは「ああ、」と返答した。

「なんかマルコが教官に用があるらしくて、ジャンはその付き添いだとよ」

「そうなんだ、ありがとうコニー」

「おう。それよりさ、なぁなぁ、エレン!!俺昨日見ちゃったんだけどよ、お前...この間の立体機動の訓練の時。.....──とチューしてただろ、!」

そう言ったコニーは口角を上げて興奮からか、奇妙な笑顔をした。ムフムフと聞こえるかのように鼻を荒くさせて、いつもなら必ず引かれるであろう顔だが、皆コニーの顔より、コニーの言葉の衝撃で体を固まらせた。

「は...、はあ?!まじかよ...」

「おいおいちょっと待てよ、エレン、お前それマジか?!」

「えぇー!!!うそだろ、!?」

1人が口を開いて叫べば、次々と驚嘆の声があちらこちらと聞こえた。
当の本人であるエレンは、特に驚くわけでもなくさらりと答えた。

「なんだよコニー。お前見てたのかよ」

途端に部屋がまたざわりと騒がしくなる。コニーが騒ぐものの本当にそうか信じていなかった人もいたようだ。
エレンの肩を掴み、コニーは前後に思い切り揺さぶった。

「お前、訓練の時ってなあ.......なにしてんだよ!?俺が頑張ってる時によー!」

「別に訓練の時って最中じゃねェだろ。ふつうに、終わったあとだ」

「ふつうってなんだよ?!お前の訓練のふつうはキスが待ってんのか?!」

エレンの近くで大声で叫ぶように話すコニーに、近くのアルミンが落ち着かせるように宥めるが意味は無い。

思春期の男子にこの話題は盛り上がるようで、エレンを囲むようにわらわらと集まり、みな興味深々だと顔で丸わかりである。
大勢に囲まれ、少し眉をひそめエレンは鬱陶しいといった顔をしたが、そんなのは関係ないらしい。

「──かーー、まあ確かに可愛いよな、ふつうに」

「たしかに、まあ」

「俺はクリスタ派だけどな」

「あーーー、たしかにクリスタは王道だよな」

各々に女子トークのような会話を弾ませる今日の男子部屋は、普段の訓練の時の顔とは打って変わってイキイキと目を輝かせている。

「それで、どっちから言ったんだよ?」

エレンの取り巻きの1人であるライナーは、頬をあげ楽しそうに質問した。

「何をだよ?」

「何がって...。告白だよ!好きだってどっちから言ったんだ、やっぱりエレンか?...ずっと好きだったもんなあお前は」

「告白.....?...したっけか、俺」そう曖昧に答えたエレンに、本日2度目の驚きが部屋に響いた。
質問したライナーも目を丸く、大きく見開いて止まっている。

「なんだよ、そんな驚くことか?」

「いや...、いやいやお前、それなのに──にキスしたのか...それは男としてやっちゃダメだ。まさか最後までなんて手出してねェだろうな...」

「...してねェよ」

アルミンに邪魔されてな、とエレンは心に思った。ほかのみんなの焦りのような表情に、さすがにエレンもおかしいと思い首をかしげる。

「なにがダメなんだよ?」

「お前なあ、エレン。お前が──のこと好きでも、──はお前のことどう思ってるのか分からんだろ。.....──に好きだって1度でも言われたか?」

エレンは少し考える素振りをした後に、ぼんやりと声に出した。

「.......ないかもしれねェ」

エレンの返答にライナーは額に手を当て溜息をついた。

「ダメだ。いいかエレン。ちゃんと伝えて、──の気持ちも聞くんだ」

「...そういうもんなのか」

ライナーに真剣に言われれば、説得力はあり、エレンも大人しく頷いた。

「そうだ、そういうもんだ」

得意気に答えたライナーの内心は、好奇心でいっぱいだった。元々この隔離された訓練兵の中でエレンの──に対する見え見えの好意は注目の的だった。そんなエレンに進展があったなんて、喜ぶべきだろうが、それよりもライナーは楽しくなっていた。
他のみんなも気持ちはさほど変わらず、ライナーとエレンの会話を密かに聞いているものもいる。

「なあライナー、告白っていつすればいいんだ」

「そりゃおめぇ、」と続くライナーの言葉を真剣に聞くエレンは、ライナーにどうかしてやりたい、と思わせるものだった。
どうもエレンの直球さは、応援してやりたくなるものである。

ライナーに加え近くにいた人も各々にアドバイスをした。それが全てためになったとは言い難いが。
今日の男部屋はいつもより何倍も盛り上がるものだった。



消灯時間もすぎ、暗闇と誰か分からないいびきが響くなか、エレンは1人起きていた。

ふと先日の物置小屋での──を思い出した。薄暗くぼんやりとしたなかでも分かる、──の赤く染った頬に潤んだ瞳。心臓の音が聞こえるほど近くにいた時を。
途端にエレンは──に会いてえな、と消えるような声で呟いた。

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