君に追いつく日はあるのかな
訓練日和の晴れ。とはいかずに、未だにどんよりとした重苦しい真っ黒な雲が空に広がっている。
この天気でやるのか、と気持ちは落ちていくばかりだ。お腹はすいているが、気の進まない朝ごはんをちまちまと食べていく。
最後の水をごくりと喉を鳴らして飲んだあと、食器を片付けるために立ち上がれば、近くに座っていたユミルが──のなびく髪の毛を見て声をかけた。
「おいお前、その髪のままでいくのか?」
「ユミル!おはよう、...やっぱり縛った方がいいかな?」
「当たり前だろ」 そうユミルにばさりと言い捨てられ、縛ろうとするものの、生憎今ゴムは持ち合わせてない。取りに帰ろうと部屋にしぶしぶ戻る。
みんな食堂かグラウンドへと出ているらしく、誰もいない、がらんとした廊下を1人で歩けばギシリギシリと床が鳴った。
「──!!」
シンと静まっていた廊下に、自分の名前を叫ぶエレンの声が響き渡り、──は小さく驚きの声をもらした。
「エレン.....、びっくりした、」
はあ、と息を吐き出したエレンはどうやら走ってきたらしい。
「悪い、突然」と斜め下を向いたエレンに戸惑いながらも、大丈夫だと伝える。
急に話しかけられた驚きよりも、ここ数日避けられていたエレンに声をかけたられたことに驚きが隠せなかった。
変な意味はないが、緊張から少しだけ身構えるものの、エレンは気にせずに──の目を見て口を開いた。
「今日の夜、話がある」
エレンの真っ直ぐ見つめてくる瞳が久しぶりで、思わず息を飲んだ。
「...」
「...」
「わ、...わかった」
──の返答を聞いて 「じゃあまた、夜にな」、とエレンは踵を返していった。
そんなエレンの背中を少しずつ加速する心臓を抑えるように見送った。
久しぶりに話せた嬉しさと、話ってなんだろうとほんの少しの不安と期待。
惚れた弱みだろうか、いつもより何倍もかっこよく見えたエレンに──は頬をほんのりと赤く染めた。
ごちゃごちゃになった気持ちに、これからの訓練のことを考え、こんなんじゃダメだ、と喝を入れようと自分の頬を叩けばパチンと音がなった。
完全にではないが、気持ちを入れ替えてグランドへと急げばほとんどの皆は既に集まっていた。
変わらない曇り具合に、日程を変えて晴れた日にやってほしい、と教官には口が裂けても言えない願いを心にしまう。
「...ふつうこれで登山訓練しようと思う?」
明らかにテンションがだだ下がりな──にジャンは淡々と答えた。
「ふつうの事ばかりやらないのがキース教官だろ。最後まで降らなきゃいいけどな」
「ジャン気をつけてね、ほんと山は危ないから」
「お前だけには言われたくねェよ...」
眉を下げ心底呆れたようにいうジャンだが、人一倍自分のことを心配してくれていると知っている──は、昨日の夜を思い出して嬉しそうに笑った。
「なに笑ってんだ」
「べっつにー!なんでもない。じゃあ班ごとに集合だから行くね!またあとで」
「おう」
残念だがジャンとは同じ班ではないので、心細いが自分の班へと向かった。
班長のマルコを見つければ、向かう足は早くなる。どうやら私以外のみんなは揃っているようで、「──が来たぞ」とコニーが大声で言えば、視線は集まる。
「ごめんごめん、私が最後?」
「おう!がんばろうな、──!」
息を整えて──が言えば、コニーは歯を出してニッと笑った。
「うん!もちろん!」
そう返答した──の目には同じ班であるサシャが映る。
コニーとサシャがいるなんて明るくていいな、と重かった気持ちは少しだけ軽くなった。
ちらりとエレンのことを探すように見れば、どうやらジャンと同じ班のようで、早速口喧嘩をしているその風景に思わず笑ってしまった。
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