しょうがないって諦めて
「これで半分行ったかな?」
「うん。そうだね、たぶんあそこに見える木がポイントだと思うんだけど...」
少しずつ息が苦しくなってきたころに、──が質問すれば班長のマルコが的確に答えてくれる。
本当にマルコは班長に向いてるよ、と無事に帰ったら言ってあげよう。きっとこの班で1番緊張しているだろう。
「あそこの木ったって、ものすごく遠いじゃないですか...」
サシャはへろへろになりながら言ったが、本当にその通りで、目の前なんかではなくもっとずっと先だ。
ああ、登山訓練というものは何度やっても慣れないし負の感情しか出てこない。
そんな嫌な登山も、兵士からいえば心肺能力、筋力、筋持久力、チームワーク、精神力、どの面でも鍛えられるお手頃トレーニングだ。といっても割り切れるわけではないが。
「もうここがゴールでよくないですか、...?」
「それは賛成だよ、わたしも」
ぼんやりと答えたサシャに──はすぐさま首を振った。そんな2人にマルコは苦笑いを落とした。
「この前の時とポイント地点違うんだね」
「そうみたいだね...。コニー、さっき地図渡したよね?」
「おう」
「ちょっと見てもらってもいいかな」、とマルコが伝えればコニーはひとつ返事をして手荷物から地図を取り出した。
と思ったが、出てきたのは白いハンカチだ。そんなコニーにサシャは 「なにしてるんですか、それハンカチですよ」、と呆れた。
地図を探すコニーの顔が徐々に青くなっていけば、──達班員の顔の表情も変わっていく。
まさか、そんな予想が当たるだなんて思いもしないが、コニーのひとことでみな凍りついた。
「悪い.........地図落としたかも」
「「「...」」」
顔は真っ青で心底申し訳なさそうにするコニーに怒ることも出来ず、とりあえずここまで来て戻ることはできない。が、最近落としたかもしれないので近場は見ようと少しだけ戻っていく。
ごろごろと小岩が多く、慎重に進んでいけば、道の端っこの斜面沿いの近くに紙が落ちているのを見つけた。
「あ、あれ違うかな!?」
「見つかったか?!」
──は見つけた希望から少し小走りで向かっていけば、だんだんと鮮明に見えていく。どうやら探し求めていた地図らしく、──はホッと安堵の息を吐いた。
「見つけたよー!!」
「良かった!ありがとう──!!」
「──!そこの斜面急になってるから気をつけて、!」
地図が見つかり喜べば、班のみんなも先程の白い顔とは大違いに笑顔を浮かべている。
そんなみんなと比べマルコは1人だけ焦った様子で──に叫んだ。そんなマルコに──は 「うん!」と呟いた矢先だった。
ほんとに一瞬だった。
地図を取ろうと1歩踏み出せば、踏み場が悪かったらしい。
力を込めた右足が空振る。転ぶ、と思った瞬間には、もう地面が目の先にあった。体をぶたれる衝撃があり、体がぐにゃりと回転し、突き刺すような痛みが広がり、視界が回り、そして意識が、途切れた。
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