誰か教えておくれ
「あ、おい──!」
なんて運の悪いことだろう。
奥から見えるエレンに反応し、すぐさま近くにいたサシャへと近寄った。
「ね、ねえ!サシャ、今日の夜のパン半分あげるね」
「ええ、ほんとですか!!ありがとうございます!!太っ腹ですね──!」
「あはは」
あれから3日たった。あのエレンとの課題の時の事を思い出せば、必然的に顔がちょっとだけ赤らむ。どうしてもあの大きな目を見ればこの前のことがフラッシュバックされてしまうだろう。もはや今も少しだけしているが。
そんなことで──がエレンを避けるのは心の防御本能だろう。
──は極力話したくないが、エレンはそうでもないらしく、幾度なく──に話しかけてきた。その度避けてしまうのはこの際しょうがない。
「本当にいいんですか?最近貰ってばかりで...」
「うん、いいよ。食欲がないから食べて」
「そうですか...じゃあお言葉に甘えて!!」
「どうぞどうぞ」
「わーい!」と大声で喜ぶサシャを横目にスープをちまちまと飲んでいく。
エレンを避ける口実に思わずサシャへと話しかけてしまったが、食欲がないのも事実なわけで、有難かった。この奇妙な気持ちに思わずはあ、とため息をつけば「ため息つくと幸せにげるぞ」と上から声をかけられた。
「ユミル...」
「なあお前なにそんなに悩んでんだ?このユミル様に話してみ?」
「...なにその顔」
心配している、というより面白がっているというのがお似合いだろうユミルの顔は口元が緩みまくっている。
「まあまあ、話してみれば案外楽になるもんだろ?相談にのってやるよ」
そのまま──の隣に腰をかけ、ご飯を食べ始めるユミル。
もちろん誰かに話してしまいたい気もするが、人選は大事だ。仮にここでユミルに話してしまえば明日から大変なことになるだろう事は容易に想像ついた。
話を聞いてくれるというのは有難いが、「悩んでません!」と突っぱねた。
そのまま諦めてほしかったが、ユミルにはなんの効果も無いらしい。
「それで、どうしたんだよ。エレンがなんかしたのか?」
「な、別にエレンは関係ないから!」
「...お前嘘つくならもっと上手くつけよ」
ズバリ当てられて思わず狼狽えてしまうが、ここで負けたら認めているようなものだと気持ちを強くもった。
「なんでそんな、エレンだと思ったの」
「そりゃあお前のその避けっぷりをみれば誰でもわかるだろ」
そんなに露骨な避け方をしてしまっただろうか、少しだけエレンに申し訳なくなってしまった。こうなったのは全部エレンのせいだけど。
「ま、まあエレンは関係してるような、してないような.....。でもユミルが期待してるような面白いことはないから!」
「はいはい、分かったよ。べつに私にとっちゃどうでもいい事だ」
「...どうでもいいなら聞かないでよ」
まだニヤニヤとしているユミルの顔を思わず殴ってしまいそうになるのを堪えた。
「それよりさっき教官に頼まれたんだけど、代わりに頼まれてくれねえか?」
「ええ、やだよ。めんどくさいもん」
「断るならエレンとのありもしない噂流す」
「な!それ立派な脅迫だからね!?」
そんな事言われたら断れないじゃないか、隣で──の反応を見ているユミルをひと睨みしてもユミルはからからと笑うだけだ。
「まあ簡単だよ、物置小屋からハタキ持ってこいとのことだ」
「なにそれ、そんなの明日でも良くない?」
「知らねえ、これから自室でも掃除すんじゃね?」
「...」
教官からの頼みだなんて急いで言った方がいいじゃないか、と残っているパンを頬張って、大股に食堂を出ていった。
最後のユミルの勝ち誇ったような笑みは二度と忘れないだろう。
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