タイムリミットよ、シンデレラ
「うわ、!ホコリやばいな...」
扉を開ければぶわっと僅かだがホコリが舞った。
食堂からすこし離れたそこは、明かりなんてないので、小さなランタンを持っていく。薄暗さから妙な雰囲気があり、急いで帰ろうとするものの、お目当てのハタキは見つからない。
一体このハタキは本当に必要なのか、なんでこんな事してるんだろうと気持ちが下がる。
探すのに夢中になっていたところ、無音に近いこの状況に後ろから、ギィッ、と足音が響きビクリと体を強ばらせた。
「っ、!!」
「──、」
「え、エレン...。び、っ...くりしたあ」
「何やってんだよこんなとこで」
「いや、あの、ユミルに...頼まれごとされて...。エレンはどうしたの?」
「はあ?俺はユミルに──がここで待ってるから行ってこいって言われたんだよ」
「え。.....どうゆうこと」
「俺が聞きてえよ」と意味がわからないといった顔をするエレン。
騙された。ユミルは私達のことで楽しんでるんだ、勝手に。
もはやユミルへの怒りより、この状況への焦りが止まらなかった。散々避けてしまったエレンと心の準備無しに会ってしまうなんて最悪だ。
ハタキなんて必要ないじゃないか、と急いで帰ろうと足を動かした。
「.......ユミルに遊ばれたみたいだから、あはは、帰ろっか」
「おい待てよ」
扉の隣に立っているエレンが、開いていた扉を閉めた。
出口を塞がれたせいで、行き場を失った足は体と共にぴたりと止まる。
「なあ、俺になんか言うことあるんじゃねぇか?」
「なにも....ないかな」
「ああそうかよ」
そのままエレンは──へ追い詰めるように前へと進んだ。
そんなエレンと間を取るように──はうしろへとジリジリと下がる。
「ちょ、ちょエレン!」
「なんだよ」
「なんだよじゃなくて、!」
苛立っているようなエレンに肩身が狭くなる中、狭い小屋の中ではすぐに逃げ場なんて無くなる。
トン、と背中に壁がついたのを感じれば、心臓はバクバクと動き出す。
エレンは──を壁まで追いやると、そのまま──の顔の横へ手をついた。
「散々無視しやがって」
「ご、.....ごめん、」
エレンの大きな目がギラギラとまるで獲物を求めてるような、そんな瞳に思わずゴクリと喉を鳴らした。
──の首元へと顔を寄せたエレンは、そのまま白い首筋へ、がぶり、と歯をたてた。
「や、!ぃた...っ」
「俺が傷ついたってこと知らねえだろ──は、」
首筋で喋ったエレンの吐息がそのままかかり、ぶるりと体を震わせた。
もはや体全身に熱を帯びた──の体は、緊張と戸惑いで硬直し動く余力は無い。
「ほんと...ごめんってば...、だってエレンが急に変なことするから...っ!」
「変なことってなんだよ」
頬に時々あたるエレンの柔らかい髪の毛のくすぐったさと、エレンの吐息に体をよじらせる。
「エレン、ねえ、.....くすぐった!、やだ、」
力が入らない腕を無理やり動かし、弱々しくエレンの胸板へと力をかける。
そんな──の抵抗は意味もなく、エレンの体はピクリとも動かない。
ちゅう、と音が鳴り、ぴりりとした痛みが体を襲った。
「え、エレン、...ちょ、!」
「今度無視したら許さねえ。これでも悩んだんだからな」
顔を上げてグッと眉をひそめているエレンの言葉に、少し罪悪感を覚えて慌てて「わかった、」と首を縦にふった。
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