掃除、洗濯、料理、お茶入れ。
──が積極的に腕を磨いたものである。
生きていくうえで、というか兵舎内で暮らしていればこれくらい一般的に出来るはずだが、──は他の人とは意欲が桁違いに違った。特に掃除とお茶入れだ。
「ほぉ〜、そう聞くといいお嫁さんになりそうだね、──は」
「ほんとですか!?えへへ、相手はもちろんリヴァイ兵長でお願いします!」
ハンジが感心したように素直に褒めれば、──は嬉しそうに顔をほこらばせた。
恒例になりつつあるハンジ班のお手伝いに来ていた──は、ハンジとの会話に花を咲かせていた。
「すみません──さん、いつもいつも手伝わせてしまって」
モブリットが心底申し訳なさそうに──に言えば、──は慌てたように首をふりながら否定した。
「そんな、全然大丈夫ですよ!むしろわたしの話をハンジさんに聞いてもらってるようなものなので、...」
リヴァイとの話をここまで興味深そうに聞いてくれる人は数少ない。兵舎内だとハンジとペトラぐらいだろう。
そのハンジに甘えてリヴァイの話をついついしてしまうものの、嫌な顔1つしないハンジには──は感謝していた。
「それに今日はハンジさんの部屋の片付けなので、楽勝ですよ!」
「ありがとうございます」、とモブリットは何度目かわからないお礼を──にして部屋をあとにした。
「あはは、本当に──はいい人だね。リヴァイには勿体ないくらいだよ。なんならわたしのお嫁に来て欲しいくらいだ」
書類にペンを走らせながら言ったハンジに──は少し考えた後に口を開けた。
「兵長にはまだまだ届かないほどですよ、なのでもっと頑張らなきゃいけないくらいです!」
「そうかなあ、──は頑張るね」
「はい。なんてったってあんなにかっこいいい兵長ですからね...!日々全身全霊でアタック中です!」
数時間前のリヴァイの姿を思い出して、──は密かに意気込んだ。
どうすればリヴァイに近付けるか、何度考えたことだろう。
「はは、そっか。まあリヴァイもこんなに猛烈なアタック経験したことないだろうから新鮮だろうね」
「え、そうなんですか?!」
自分が入団する前は何も知らない。リヴァイともなれば自分のようにアピールする女の人がいるだろうと──は考えていたのだが、ハンジの言葉にびっくりしたように口を開けた。
「そりゃあ人類最強様だもん、憧れる女の人もいるだろうけど、想いを伝えようとする人は少ないだろうね」
「そうなんですか、」
「うん。だから──のそのアピールはなかなかいいと思うよ、私は。リヴァイも満更でもなさそうに見えるしね」
「...ハンジさんにそう言って貰えると、すごく自信持てます...」
そうハンジに言われれば──は嬉しそうに、少し気恥しそうに目を細めた。
好奇の目や、不審な目を貰うことは多々あるが、こういった言葉を貰うことは少ない。
ハンジといえばリヴァイに続き調査兵団の古株であり、自分よりリヴァイのことを知っているだろう。そんなハンジから言われれば嬉しさは増す。
「まあ私は──を応援してるからね!前話してたあれ、覚えてる?どっちに賭けてるかって、もちろん"くっつく"に賭けさせてもらってるよ」
ばちんと音がつきそうなウインクをハンジから頂けば──は歓声をあげた。
「ほ、ほんとですかハンジさん!!わたし、本当に頑張りますよ!?応援しててくださいね、!」
もちろん、と少しおどけたように告げたハンジに──は満足そうに、先程より丁寧に部屋の片付けを始めた。