バタバタと廊下を駆け走る足音がリヴァイの背中へと近付いた。
途中で何事だ、とこちらを見る視線をかいくぐり、──はリヴァイの元へと急いだ。
「兵長、!リヴァイ兵長!」
まるで親を見つけた子のように、リヴァイを見つけた──は嬉しそうにその名を呼んだ。
「なんだ」
「あのですね!」
「オイ。一旦落ち着け。そんなでけェ声出さなくても聞こえる」
落ち着きのあるリヴァイに言われれば、──はハッと、足を止めた。
「あ、ごめんなさい。つい嬉しくて...」
走ってきたからか、息が整っていない──だが苦しそうな素振りはせずに、むしろリヴァイに会えた事によりその瞳は輝いていた。
そんな──にリヴァイは、「用件はなんだ」と短く問いかけた。
「この前の立体機動訓練で私ヘマしちゃって、」
「ああ、...オルドが言ってたな」
誰が自分の失敗を好きな人に言いたいだろうか。伝えなくなさそうに──がリヴァイに言うものの、さらりとリヴァイに言われたそれに──は大きな瞳をさらに広げた。
「え、!オルドが言ったんですか!?やだ...オルドの話全部信じないでくださいね!、じゃなくて、...」
「なんだ」
「あの、」
もじもじと、まるで告白するかのように──は次の言葉を躊躇った。
そんな──にリヴァイは急かすわけでもなく、ただジッと頬を赤く染めている──を見つめた。
「1回でいいので!!...迷惑かけちゃうんですけど、」
「...」
「私に立体機動、教えてくれませんか...?」
「...」
「あ、あの決して強制じゃなくて、いや強制であっては欲しいですけど...、リヴァイ兵長みたいにもっと上手くなれば、私も強くなれるかなって、」
ダメですか、とおそるおそる──は少し上にあるリヴァイの目を僅かな希望をかけて見つめた。
先程から思っていることがバレバレな──にたいして、リヴァイはあまり表情筋が動くわけではない。
その結ばれている唇がなんて動くか、──はどきどきと、胸を高鳴らせた。
「俺はそこまで暇なわけじゃねェ」
「うっ、...やっぱりそうですよね」
希望は薄かったにしろ、どうせ教わるのであれば他の誰でもなく、リヴァイに教わりたかったのだ。
それはリヴァイの能力が高い故でもあるが、少しの下心はこのさい置いておこう。
駄目か、と肩を分かりやすく落とす──に、リヴァイは言葉を続けた。
「明日の朝食の1時間前にはきちんと外にいる事だな」
「...え、それって引き受けてくれるってこと、ですか、?!」
「寝坊すんじゃねェぞ」
「し、しません!絶対、いつもより3時間は早く起きますから...リヴァイ兵長も忘れちゃだめですからね!!」
しょぼくれていた時とは一変、キラキラと目を輝かせて、──はリヴァイを見つめた。
兵士長という役職を持っている中、やらなければ行かないことも多いいだろう。そんなリヴァイに頼むことは駄目元だったとはいえ、まさか本当に了承してもらえるだなんて。
これからの毎朝、朝食の1時間前。
早起きはあまり得意ではないが、──はワクワクと弾む心を隠せなかった。