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「おい。早くしねぇと置いていくぞ」

リヴァイは後ろで足を止めている──に振り向き声をかけた。

「いま行きますよ...っ!」

そんな余裕があるリヴァイに、顔を赤くした──は少しムッとしながら答えた。

2人廊下を進み、ポカポカと陽の当たる外へと出れば、その眩しさから思わず目を細めてしまう。

厩舎の前には、ペトラ、グンタ、エルドにオルオと、リヴァイ班の皆が集合していた。

「全員ちゃんといるな」

「私たちが最後みたいですね」


まだ集合時間より余裕があるくらいだが、既に皆集まっている所は流石である。

今日の訓練は班ごとに行われ、指示や連携の訓練である。リヴァイ班といえば兵士の精鋭が集まる調査兵団の、トップクラスの人が集まる班で有名が故、一人一人の力は強い。

折り紙付きのその強さに自分もちゃんとついていけるか、そう思うのは毎回恒例である。肩の力が強くなっていく──の耳に、リヴァイの声が届いた。

「そんな気を張らなくていい」

──の眉間のシワが濃くなっていっているのを見かねてか、リヴァイは──の頭に手を置いた。

「...っ!」

「散々練習してきただろうが、お前のいつも通りでいい。全力でやれ」

「わ、かりました」

「力みすぎて失敗するなんざ笑えねえからな」

リヴァイの手が乗せられている頭に、全神経がいってしまっているように感じた。
リヴァイには珍しい、その軽いスキンシップのに──は心踊らせた。

「毎回考えこんじまうそのクセをそろそろ直せ、──」

離れていったリヴァイの手に、──の心の奥では名残惜しさが心に残る。

「...そうしたいのも山々なんですけど、こんな精鋭揃いに囲まれたら考えちゃうもんですよ」

通常調査兵団というものはいつでも入れ替わりが激しいものだ。
50%の割合で最初の壁外調査で命を落とす、そんな厳しい世界の中で何度も壁外調査で成果を上げ帰ってくる。
何を知らない人が聞けば簡単に聞こえてしまうだろうが、決して簡単なことではない。壁外調査を何度も乗りこえるのは極一部の兵士しか居ない。

そんな人達の集まりなのだ、リヴァイ班といえば。


「お前の努力が見初められたからこそ俺の班にいるんだろうが」

「.......」

いつもは1人で悩んで終わりの所を、リヴァイに鼓舞されれば誰だって頬は緩むだろう。
リヴァイは褒め言葉として言ってないかもしれないが、──にとっては大いに褒め言葉であるその言葉数々に、照れくさくなり少しだけ下を向いた。


先程まで眉間にシワを寄せていた──が突然黙り込み、また何か考えているのかとリヴァイは舌を打った。

「おい。今度はなんだ」

「.....ちょっと恥ずかしいだけです、から...気にしないでください」

そういった──の耳は微かに赤くなっているのが分かった。

「そうか」、と呟いたリヴァイの顔は心做しか穏やかに見えた。