普通が一番難しい




発電所らしき場所で火災が起きている。



「爆発はないよ―――――やるなら今。」



目を閉じて静かに告げたなまえに応じて、皆本は指示をだす。



『よし、行けっ薫!!』

「了解ッ!!念動ぅう―――――――落としブタあぁーーーーーッ!!」

「オーケー任務完了ね。タンクの温度下がるにはもう少しかかるけど・・・・・もう燃える心配はないわ。」



タンクに触れて透視を終えた紫穂。



「よっしゃ!!ほな帰ろか!」



言った途端にテレポートで消えた葵達に現場に居た人達は目が点になっている。



「―――――!!あんな子供が特務エスパーなのか・・・・・!!」

「あっというまに消し止めちまった・・・・!!なんてパワーだ・・・・・・・・!!」

「火事なんかより―――――あの子達の方がよっぽどおっかないな・・・・・・・!!」



現場の恐怖に包まれた声を余所に、バベルのヘリは夜空に消えて行った。



















「だ〜〜〜〜〜〜っ!!暑かった〜〜〜〜〜!!」

「髪も服もコゲくさい・・・・!!」



任務の終わったチルドレンは、ヘリでくつろいでいた。

薫は制服のシャツを全開にし念動で団扇を動かし。

葵はリボンを外し首元を緩めてタオルをかけ水筒を飲んでいる。

紫穂は自分の服を嗅ぎ。

なまえに至っては、既に横になって寝ていた。



「ご苦労さん!!今日の任務は満点だ!!いつもこの調子なら―――――・・・・って、なんだはしたない!!くつろぐの早いよ、お前ら!?」



水筒を一生懸命降る葵、上半身が下着で涼む薫、自分の靴下を汚そうに摘む紫穂、そしてぐっすり気持ち良さそうに眠るなまえを見て皆本は叫んだ。



「基地に帰るまでが任務ですっ!!」

「細かいことをいちいち・・・・・うるさいんだよッ!!」

「がッ!!」



怒鳴る皆本にイラッとした薫により、皆本はヘリの壁にぶつけられる。

その衝撃で寝ていたなまえが、にゃっという声をあげて目を覚ます。



「お前な・・・・言っとくけど明日は間違ってもこーゆーマネはすんなよ!?」

「明日・・・・?」

「やだ、忘れてたの、薫ちゃん。」

「あ、そっか!学校――――――――!!明日からだっけ!」



ぽん、と手を叩いて納得したように言う薫に、皆本は不思議そうに声を掛けた。



「なんだ、それ。うれしくないのか?」

「そりゃまあ「行ってみたい」とは言ったけどさ。超能力使うなとか、仕事のこと秘密とか、めんどうくさくて・・・・」

「ウチは楽しみやけどな。こんなパワーのせいで小さい頃から幼稚園も学校も断られてきたし・・・・」

「私も・・・・!!」

「まぁ一応・・・・(二回目だけど、前は学校どころじゃなかったからなぁ)」



面倒くさそうな顔をする薫とは対照的に葵や紫穂は笑顔だ。

何故かなまえだけは遠い目をしていたが。



「同い年の子って「チルドレン」しか知らないもんね。フツーの子って何、考えてるのか透視するのが楽しみ。」



くすくすくすっと自分の手の平を見ながら黒く笑う紫穂に、皆本は汗をダラダラ垂らしながら言った。



「君たち・・・約束してくれ!学校では超能力は使わない!!何がおきてもそれ以外の力で解決するんだ!いいね!?」

「その命令なら何度もきいたよ!」

「今のは命令じゃない。約束だ!」



何度も言われた言葉に切れかける薫。

機嫌の悪くなった薫に慌てて皆本は約束だと言った。



「ええけど・・・・何か買うてくれる?」

「そんな必要はないだろ。命令だって出てるんだから・・・・」

「・・・・・・・」



葵は皆本に約束の見返りを求める。

皆本と葵を眺めた薫は何を思ったのかモガちゃん人形を取り出し、サインペンで背中にはった髪に“小学生”と書きだした。



「「わあ、ついウッカリ」―――――――」

「わかった!!よし、約束!!守ったら何か買ってやるから!!」



棒読みで言いながら、モガちゃん人形を念動で爆発させる薫に皆本は泣きながら約束した。



「わあい」

「皆本さん大好き」

「お前って奴はカワイイぜ、チクショウ!!」

「わぁー皆本ってばふとっぱらー!」

「・・・・・・(本当に大丈夫か?いくらなまえがいるとはいえ・・・・)」



皆本が頷いた途端に、態度を変えて抱きついてくるチルドレンに皆本は不満げだった。


























「・・・・・・・というわけで、家の都合でまとめて転校してきました!」

「野上葵です!」

「明石薫です!」

「三宮紫穂です!」

「みょうじなまえでーす。」

「「「「よろしくお願いしまーす!」」」」



ニコニコと笑いながら自己紹介をする四人は可愛いかった。



「(ふわ〜〜〜〜!!子供がこんなに・・・・!!)」

「(スゲエ!!これを全部作るの大変だったろーな・・・・・)」

「(なにげに下品なこと考えてるわね・・・・)」

「(・・・・眠い)」



三人の心境は様々だった。



「じゃ、その一番後ろが、あなたたちの席よ。」

「!あたしたちの―――――――席・・・・かあ・・・!!」



自分達の席をみつけた薫の声は、嬉しさに溢れていた。

























「用意はいいか、皆本!」

「はい、局長!」



バベルの車の中。

局長は、あちこちに目玉のようなレンズのあるスーツを着ている皆本に言った。



「陸自で開発中の特殊光学迷彩服です!2着しかない試作品を回してもらいました。」

「しかし、こーまでして警備、監視ってのは大げさでは・・・?あいつらも約束してくれたわけですし。」



特殊光学迷彩服のスイッチを入れながら、愚痴る皆本に柏木はフォローを入れる。



「最初のうち、あくまでも念のための措置ですよ。私たちもあのコたちは信用してます。」

「だが、油断はするなヨ!?万一、事故がおきでもしたら、教育省はエスパーの受け入れをますますしぶるようになるだろう。だが、強力なパワーを持つ者が、一般社会から離れて育つことの方がより危険なのだ!!「チルドレン就学計画」には国の・・・いや、世界の未来がかかっておる!!」

「くれぐれもシュミレーションの時のよーにならんようにナ!ま、なっても全力でモミ消すつもりだが。」

「いや、それは。」



局長と皆本の頭にシュミレーションでロボットを壊した薫が浮かぶ。



「万一の事態にそなえて、これを――――弾は麻酔弾、ESP抑制剤が強化配合されています。」

「ちょ・・・しかしこれは・・・!!」



柏木に手渡された銃に、皆本は慌てる。

しかしそんな皆本に局長はぐわっと、目の色をかえて叫ぶ。



「バカ者、お前の任務は監視と護衛だ!!もし、ウチの可愛い「チルドレン」に――――国の宝に、意地悪をする奴や悪い虫がついたりしたらどうする!?その時はためらわず撃て!!

「動く奴はいぢめっこだーーーー!!動かない奴は訓練されたいぢめっこだーーーーッ!!」

「局長・・・!!冷静に!!」

「(大丈夫かな、この組織・・・・・・)」



皆本は不安でいっぱいだった。


















「へーーー四人とも友達?」

「一緒に転校なんて・・・・」

「う・・・うん、あの、仕事が同じなんでその都合・・・・!!」

「どこに住んでるの?」

「えーと、まだ決めてへんけど・・・多分皆本んちかな。」

「皆本・・・・?」



転校生が珍しいのか、なまえ達四人はクラスのみんなから質問責めにあっていた。



「ね、こんど一緒に遊びに行かない?ここ、近くにでっかい都営公園があるんだよ。」

「え・・・・う・・・うん。」

「・・・・・・・・・」



クラスメイトの誘いに、薫と葵は少し驚きながら、三人は喜ぶ。

なまえはそんな三人をニコニコと嬉しそうに見ていた。



「(・・・・・・よかった・・・・!!すんなり打ちとけそうじゃないか。これなら心配いらな――――)」



特殊光学迷彩服で、教室に潜入しそんなチルドレン達の様子をみた皆本は一人安心していた。



「ね、それ、ESPリミッター?三人ともエスパーなんでしょ?」

「(・・・・!!)」

「私もなの。超度2の精神感応能力者よ。ホラ・・・・!!」



そう言って、服からリミッターを出す少女の言葉に焦る皆本。



「超度2ぐらいじゃなんにもないのと変わらないけど。私、花井ちさと!明石さんたちの能力は何?」

「え・・・えーと・・・・」



ニコニコと嬉しそうに尋ねるちさとに薫と葵と紫穂は慌ててメモを取り出し、見事な棒読みで言う。



「「私は超度2の念動能力者です」。」

「「同じく瞬間移動能力者」。」

「「超度2、接触感応能力者」・・・」

「超度2の複合能力者だよー。」

「?」

「・・・・なぜ棒読み?」



完璧な棒読みにクラスの女の子達は不思議に思っていた。

そんな女子達に突っ掛かってくる少年がいた。



「――――なんでえ、クラスに5人もエスパーがいんのかよ!?やんなっちまうな!!」

「!」

「リミッター外すんじゃねーぞ!?変なマネされたら迷惑だからな!」

「やめて!東野くん!!」



薫達は東野の言葉が許せないのか切れていた。

なまえもムカつくのか、東野を睨んでいる。



「なんだ、あの野郎!?」

「感じ悪いなぁー。」

「東野 将!エスパーの花井さんにいっつもあーやってからんでくんの!」

「ちがうの、東野くんは―――――」

「またそーやってかばう!!エスパーで何が悪いのさ!?」

「そうよ!あんなこと言うのあいつだけでしょ!?」

「ごめん、超能力の話なんか、今しなくてよかったのに・・・今までまわりにいなかったから、つい嬉しくて――――――」



雰囲気が悪くなかったことに責任を感じたのか、悲しそうに言うちさと。



「・・・気にせんでええて!その気持ち・・ようわかるから。」



葵は励ますようにちさとの肩をぽんっと叩く。

紫穂も東野に向かい、一言 最低 、と冷たく言い放った。

これには東野も少しショックだったようだ。



「へッ!!ま、せいぜい―――ブスのエスパーどうし、仲良くやんな!!」

「なっ・・・!?」

「ちょっと・・・・!!」

「おいッ!!てめえ――――」



薫が東野に声を掛けた途端、どこからか黒板消しが飛んでくる。

そして、そのまま東野の頭に直撃した。



「わっ!?」

「(えっ・・・・!!お・・・おい!?薫のヤツ・・・!!)」

「やりやがったな、サイコキノ!?」

「あたしじゃねーよ!!インネンつける気か、てめー!!」

「いや、今のはインネンとちゃうやろ。」



薫に向かって怒鳴る東野に薫も負けじと怒鳴りかえす。

葵はそんな薫に冷静にツッコミをいれた。



「じゃーどーして黒板消しが飛んで来んだよ!?」

「あたしが知るわけないだろ!?くらわすぞ、コノ!!」



薫と東野は額をつき合わせて、睨み合っている。



「やる気か、女のクセに!!リミッター外しても超度2じゃたいしたこともできねーだろ!!」

「そう思うか・・・!?」

「(か・・・・薫、お前――――――!!何もかも台なしにする気かっ・・・・・・!?」

「(馬鹿だなー。薫を挑発するなんて・・・)」


2018.01.17

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