きっと僕らなら大丈夫
「念動うぅ――――――!!」
「よせ!!薫ッ!!(ESP制御措置の中和容量は超度3―――――今のままでも薫は超度4のパワーを出せる!!相手にケガでもさせたら何もかもおしまいだ!!」
「(・・・・皆本の馬鹿、声出したら駄目じゃんか。)」
「!!・・・・・・・・・」
攻撃しようとしていた薫は皆本の声が届いたのか、かざしていた手を下げた。
そして、皆本が居る方向をじっと見ている薫の目には皆本は見えていないが。
皆本に気付いていたのか、なまえは叫んだ皆本に呆れていた。
「あたしは・・・・・・・超能力を使ってない!!」
「使ったじゃねーか、ウソツキ!!」
「ウソなんかついてない!!じゃー証拠見せろよ!?」
「そんな必要ないねっ!!お前がどう思おうと、あたしには使わないって約束して、それを信じてくれた奴がいるんだからなっ!!」
「(―――――!!)」
東野に力強く言い放った薫はくわッと顔付きをかえ、拳を握っり言う。
「だいたい、てめーなんかに超能力は必要ねえっ!!漢ならコブシで来いやあーーーーーーッ!!」
「そこまで言うなら上等だッ!!くらえッこの―――――」
薫に殴り掛かった東野――――だが。
「はーい、席についてー!!チャイムはとっくに鳴ったわよー!?」
「はーい」
「・・・・・・・・・・!!」
ガラッと教室のドアを開けて入ってきた先生。
それを見た瞬間、薫はコロッと態度を変えて可愛い子ぶる。
そのせいで避けられた東野は壁におもいっきりぶつかった。
「東野くん?なにやってるの?」
「やだー、漢じゃなかった、男の子って乱暴」
「(な、なんだあのすばやさはっ!?あれも超能力の一種!?)」
語尾にハートをつけて先生に言う薫の変わりように、東野は驚く。
「大丈夫、明石さん!?ごめんね、私のせいで・・・・・・」
「へーき、へーき!!」
「あんた、念力使う気ィやったやろ!?ようガマンできたな。いやー、危ないトコだった・・・・・!!」
「一瞬―――――泣きそーな皆本の顔が見えたような気がして・・・さ。」
「(薫・・・!!僕も信じてやりたいとは思ってるんだ・・・こんなふうに見張ってるって知ったら君はきっと・・・・でも――――)」
薫を見つめる皆本の表情は、苦しげだった。
「(何が「約束」だ・・・・!!エスパーはみんな同じだ!!)こっそりズルして、バレなちゃそれでいいと思ってるんだ!!」
「だああーーーーー!!」
「くっ・・・!!」
憎しみを込めるように思いっきりボールを投げる東野。
それを受け止め、更に投げ返す薫。
薫のボールをキャッチする東野。
「すごーい。」
「薫と互角にやりおうてる・・・!!東野もけっこうやるやん!?」
「でも・・・・・体育の授業なのにこれじゃ――――」
「いいんじゃないかな?僕は眠いよ・・・・・・。」
紫穂と葵は関心したように言う。
今は体育の授業でドッチボールをしているが、薫と東野がボールを投げ合っているため他の生徒は暇そうだ。
「さっきの決着、ここでつける気ぃか・・・」
「・・・・・・・東野くんね、幼稚園からずっと一緒なの。」
ちさとは東野を見ながら、話し出した。
「家が近所だし、ママが仲いいから最近よく遊んでた。私が精神感応能力者ってわかってからも普通にしてくれてて――――でも・・・私、どうしても気になったから・・・・・一度だけ心を読んだの。」
「・・・・・・・!!」
「超度2じゃたいしたことはわからなかったけど・・・遊ぶとき、東野くんの心、楽しそうだった。超能力のこと気にしてないのは演技じゃなかったわ。それで・・・嬉しかったから・・・・・・・そのこと、ママに話しちゃったの・・・」
ちさとの表情はくもっていた。
なまえ達は黙ってちさとの話を聞いている。
「そしたら、それがあとから伝わっちゃって―――――東野くん、すごく怒ったわ。それからずっとあんなふうなの。」
「あちゃ〜〜〜!!」
「私も――――たいていの人が手を触れるとすごく嫌がるわよ。でも・・・私にはひとりそうじゃないひとがいるの。そのひとは怒ってもすぐに許してくれるわよ。」
「・・・・いいなあ。」
「東野くんもそーゆーふうにしちゃえばいいのよ。怒る気なくなるまで心を読みまくってあげたらどうかしら」
「なるほど、しまいにあきらめるかもな!?」
「・・・・その人、そんなひどい目にあってるの?」
「本人も満更でもなさそうだけどね〜。」
「(私も――――許してほしいの、東野くん。でも、もう無理なのかな・・・・)」
ちさとの表情はやはり暗かった。
「―――っと!?しまった・・・・・!!」
「よしッ、チャンス!!」
薫達の対決にも終わりが見え、薫がずるっと滑る。
それをみた東野がボールを投げようとするが、突然東野の足が動かなくなり、こけてしまった。
それを見た皆本は何かを確信する。
「今のは・・・・!!もう間違いない!!」
「東野・・・・・!?」
「・・・・・・(エスパーのやることに証拠なんかない!だから・・・・・でも――――)」
「東野くん!!」
「「(もうたくさんだ!!)」」
「(許せ!!薫ッ!!」
皆本は銃を構え、発砲する。
弾は薫をこえ、東野の後ろにいる何かに命中する。
そして東野は薫に向かってめいいっぱい叫んだ。
「明石ーーーーーッ!!お前じゃないっていうなら証明しろッ!!それができたらもう一度だけお前らのこと信じてやる!!」
「・・・・・・・・光学迷彩は2着!!もっと早く気づくべきでしたよ・・・!!局長!!」
「う!!」
校舎裏で皆本にヘルメットを外され、局長の顔があらわになる。
と、そこに瞬間移動でなまえが現れる。
「やっほ〜!」
「なまえ!?な、なんでここに・・・・!?早く戻れ!」
「僕は超度7の予知能力者で催眠能力者だよ?こんなの朝飯前。それに、僕らを信用できないような悪い子には―――罰が必要だよね。」
ニコニコと笑うなまえと、泣き叫ぶ局長に皆本は脱力するのだった。
「・・・・・それで仲良くなっちゃったのか・・・!?」
「まーね!!今度、遊ぶ約束した!!」
左頬に大きなガーゼが貼ってあるが、幸せそうに笑う薫に皆本も口元が緩む。
「・・・・・・よかったな。それでコレか?」
「いやー、勝負ランジェリーかモザイク除去措置かって思ってたんだけどな・・・・」
「でもホンマに全部買うてくれるとは思わへんかったわ〜〜!!」
「たのんどいてなんだけど、給料日前なんでしょ?大丈夫?」
ローラースケートを履く薫、ゲーム機を嬉しそうに持つ葵、大きな縫いぐるみを抱きしめる紫穂を見ながら皆本は胸を張って、言った。
「いやー、約束ってのは守らないとなっ!!それに今回はスポンサーがちゃんといるから!!」
「(このくらいで許してあげたんだから逆に感謝してほしいな、局長には。)」
皆本に買って貰ったノートパソコンを手になまえはニコニコ笑った。
「・・・半分だけでも経費にまわしてもらえんかネ?」
「ダメです!自腹を切ってよおーく反省なさってください!!」
泣いてる局長に柏木はピシャリと言った。
姿なき保護者
(信頼してるからこそ、できることがある)