恐怖を抱いて名を呼んだ
「・・・・も・・と!!」
「か・・・る・・・!!」
「わ・・・がし・・う手に入れたいのは特務エスパーの名簿だ。強情を張らずにパスワードを教えたまえ。でないと・・・こいつの悲鳴を聞くことになるぞ・・・・!!」
パチリと、なまえが目を開ける。
すると目に飛び込んできたのは、椅子に縛らてボロボロな皆本と、ナイフを突き付けられている薫だった。
「こ・・・子供には手を出すな・・・!!お前らそれでも人間か!?」
「そーだ、このサディスト!!フツーじゃねえよ!!」
「エスパーに言われたかねーよ!!我々はフツーだッ!!」
「かおる・・・・?みなもと?」
「なまえ!?目が覚めたのか!?」
ボーッとする意識のままなまえが皆本と薫を呼ぶが、それに気付いたリーダーの男がなまえを押さえつけるように指示を出す。
それを見た皆本と薫が心配そうになまえを呼ぶが、今だ意識がはっきりしないのか返事はない。
「あぅ・・・・」
「なまえっ!!」
「なまえに何しやがる!!」
「我々「普通の人々」はエスパーを人間だとは思っていない!奴らは異形の力を持つ怪物だ。人類の天敵として生まれた、新種の生物なのだ・・・!!」
「そんな連中になおさら教えられるか・・・・・・!!どのエスパーにも家族と生活があるんだ!それを踏みにじって脅かすつもりか!?」
「議論する気はない。ガキは4匹いるんだ、1匹くらい使い捨ててもいいだろう?」
「――――――!!」
「あっぅぅ―――、」
リーダーのおっさんは薫の鼻先にナイフを近づけ、地面に押さえつけられているなまえにも銃を突き付けるよう指示した。
皆本は諦めたように首を下げて言う。
「や・・・やめてくれ!!その子には手をだすな・・・!!パスワードは「SAVE THE CHILDREN」。」
「それでいい、初めから素直に―――!?」
『ピーッ.緊急事態モード起動します!全データファイル物理消去・・・!!続いて――――ECCM作動!!』
「な・・・何ィッ!?」
リーダーのおっさんがパソコンに皆本の言ったパスワードを入力するとパソコンの画面に<緊急事態対応中>と表示される。
さらにパソコンの横からECCMと書かれたアンテナのような物が飛び出た。
「かかったな・・・・・・!!我慢していれば、いずれ子供を連れてきて脅すと思っていたよ!!」
「超能力が戻った・・・!?よくわかんないけど―――念動うう――――どこでもドア!!」
薫の手錠が外れ、薫は男達を壁を突き破る勢いで吹っ飛ばし、なまえを念動力で引き寄せる。
薫によって手錠を外さた皆本はなまえに話しかけた。
「大丈夫か、なまえ!」
「ごめん・・・・なんか、あたまがボーッとして、たぶんちょーのうりょくつかえない・・・」
「・・・・そうか、」
「なぁ皆本、ECCMって何!?」
「「超能力対抗対抗装置」、超能力を無効化する装置を無効化する装置だ・・・!!」
なまえを抱き抱えながら、薫の質問に皆本はパソコンを手に持ちながら答えた。
「こういう技術は結局イタチごっこになるものなのさ!僕らがあれの開発に積極的に関わるもう一つの理由がこれだ・・・!!競争の最先端にいた方が有利になるからね!ただ―――」
「あれは非常用の超小型機にすぎん!パワーも低いし、エネルギーもすぐ尽きる!ECMの出力を上げろ!!この新型なら、どんな超度でも無力化できる!」
リーダーのおっさんの叫びでECMの出力が上がった。
「バケモノめッ!!」
「殺せーーーーーーッ!!」
男はなまえ達に向かって銃を撃ちはじめる。
薫はなまえと皆本を守るように念動力でシールドをつくった。
「念動・・・無敵の盾ッ!!く・・・!!」
「いけるぞ!!撃ち続けろ!」
ECCMのバッテリーが減ってきたためか、薫のシールドもどんどん押されてくる。
『燃料電池、残量0・・・!!』
そして遂にバッテリーがきれ、銃弾の一つが皆本にぶつかる――――――
「(止まらない――――!!)」
「皆本―――――!!」
薫が叫び、ピタッと弾丸は止まる。
―― ド ン !!
「う・・わぁああぁぁッ!!」
建物が破壊され、男達は外に投げ出され、ECMは爆発する。
「!!ECMを振り切った・・・・・・!?バカな!!このガキは――――誰にも止めることができないということか・・・!?正真正銘のバケモノ・・・!!」
辛うじて起き上がったリーダーのおっさんは、頭上にいる薫を畏怖の目で見ている。
「みなもと、・・・・だい、じょうぶ?」
「なまえ!?お前が守って・・・・・!!」
皆本は気力でもっていたなまえを抱きしめる。
「ごめ、ちょっと、しか、だめだっ・・・・・」
「なんてことを・・・・!!」
「ぼく、はいいから、かおるのとこに、!」
息も絶え絶えになまえはリーダーのおっさんに近づく薫を指さす。
薫は念動力でおっさんを引き寄せ、頭を潰しにかかっている。
「はや・・・く!!」
「すまない、なまえ!」
必死な表情のなまえ。
僅かに躊躇ったが、皆本はそっとなまえを地面に倒すと、薫に向かって走りだす。
「や・・・やめろ薫ッ!!もう終わった!!こいつらは元々負け犬だ!自分の中に超能力以上の価値を見つけられないんだ!!だからエスパーを恐れてる・・・!!こんな連中のために君が汚れる必要なんかない!!薫ッ・・・・・・!!」
「・・・・・皆本・・・・!!」
皆本の訴えに、薫は攻撃するのをやめて皆本を振り切った。
その目は涙に溢れていて、薫は皆本の足にしがみついて泣き出す。
皆本はそんな薫の頭を撫でながら、思った。
「うわああああああ―――――――ッ!!」
「(止められるさ・・・・!!でも、それは――――武器や機械の力でじゃない・・・・・!!」
「・・・・!!」
「な!?待っとったらチャンスが来たやろ!?」
「ホント・・・!!」
皆本達の側に葵と紫穂がヘリのパイロット達を連れて現れる。
「・・・!紫穂!!なまえのこと、透視てやってくれないか!?」
皆本に言われ、紫穂は急いでなまえへと走っていく。
なまえは地面にぐったりと倒れていた。
「なまえ、どないしたん!?」
「・・・・大丈夫、薬が原因みたい、ただ―――無理矢理、超能力を使ったから、かなり疲れてる。」
「そうか・・・・。」
紫穂の言葉に、皆本はホッとした。
それから、紫穂はにっこりと綺麗に笑い、言った。
「じゃ、仕返しの時間ね」
「!!あそこだ・・・・・!!」
『皆本――――――ッ!!子供たちは無事かあッ!?』
「なまえが少しやられましたが、四人とも無事です!!ただ・・・」
気絶していたなまえを抱き上げたまま、皆本は局長に言う。
そして、汗をだらだらとたらしながらチルドレンを見た。
「大至急回収してください!さすがに三人揃うと止めるの大変なんで。」
「さーそれじゃ次っ!!「一番恥ずかしい思い出」!!」
「『小学校』、『好きだった女の子の前で・・・』。」
「や、やめろおおおおーッ!!なんでもするッ!やめてー!!」
「あかん!!復讐ゆう料理は冷めてからがオイシイんや!」
現場に響くのは三人の楽しそうな声と、「普通の人々」の悲痛な叫びだった。
普通の敵
(油断してたら駄目なんだよ、)