君はだれ?
「皆本は局長と出張だって?」
薫はもしゃもしゃとサツマイモを食べながら言う。
「「晩ご飯、出前とってくれ」って。」
「私、ピザがいい!!」
ゲームをしながら葵と紫穂は言った。
突然、ソファーで本を読んでいたなまえが立ち上がり、玄関に向かっていく。
それを見た葵、紫穂、薫はなまえに声をかける。
「どーしたんか、なまえ?」
「どこ行くの、なまえちゃん?」
「トイレか、なまえ?」
「薫、それは違うから。・・・・・・あーっと、僕、ちょっと用事あるからー、出掛けてくるね。」
困ったように笑って、言うなりさっさと玄関に走っていったなまえに、薫達は首を傾げるのだった。
「・・・・・兵部、京介・・・それが、彼の名前か・・・・」
皆本のマンションから少し離れた上空に、なまえは居た。
「不二子ちゃんは、なんで・・・・・・僕に教えてくれなかったんだろ・・・兵部京介は皆本と同じ、鍵になる人物なのに・・・・、」
なまえの表情は苦悩に満ちていた。
そして、なぜだか彼女は兵部のことを以前から知っていたような気もした。
ありえないことではない。
自分と兵部は「同じ時代」を生きたはずなのだから。
「・・・・・・なんにせよ、取りあえず、皆本と局長のとこに行かなくちゃ。」
そう力なく呟いて、なまえは瞬間移動した。
――ヴーッ ヴーッ
「警報!?何事です!?」
「嫁!?嫁と言うたか!?この野郎ッ!!」
突如鳴り響きだした警報に皆本は反応するが、局長は兵部に向けて、許さん!!わしゃ許さーん!!と叫びながらガラスケースを殴っている。
「脱走だよ。上でひとり暴れてる。」
「なに!?」
「・・・・ってなまえ!?なんでここに・・・・!?」
後ろを振り返った局長と皆本が見たのは、暢気に手を振るなまえだった。
「忘れたの?僕にECMは効かない。」
「だからって・・・・・・!!」
「・・・・兵部、京介っていうんだね、」
叫ぶ皆本を無視してなまえが声をかけたのは、兵部だった。
真剣な顔で兵部を真っ直ぐ見るなまえに兵部はにっこり笑った。
「そうだよ。久しぶりだね、なまえ。僕のブライド。」
「・・・・・・・・・皆本、ブライドって日本語で花嫁だよネ、」
「・・・・・・・・・そうですね、局長、」
兵部の花嫁発言に局長と皆本はもはや意識がとんでいた。
そんな二人を楽しそうに見ながら兵部は言った。
「早く行かなくていいのかい?」
「・・・・ッ!!これも貴様の差し金か!?兵部少佐!!」
「さあね。知ってることはいくつかあるけど、教える気はないね。」
くすくすと笑いながら言う兵部。
なまえはただじーっと兵部を見ている。
「特務エスパーに応援の要請は!?」
「しました!「ザ・チルドレン」がまもなく到着するそうです!」
「!あのコたちが―――――!?」
「奴のことはあとだ、皆本!!戻るぞ!!」
「は・・・はい!!行くぞ!・・・なまえ!!」
「・・・・・うん。」
警備員の言葉に局長と皆本は驚き、急いでなまえを連れていこうとする。
なまえは少し立ち去るのをためらっていたが、皆本に手をひかれてしぶしぶ歩き出す。
「(まだ・・・・・・聞いてないことたくさんあるんだけどなぁ・・・)」
「・・・・・・・・(相手が悪いな。あのお坊ちゃんじゃ守りきれないかも――――)」
「皆本っ!?」
「皆本はん無事かっ!?」
心配そうな顔をした、薫と葵と紫穂が瞬間移動してくる。
三人は皆本の上に乗っかり無事なことを確認する。
「なんだ、巻き込まれたわけじゃないのか・・・!!」
「もうっ!!ビックリさせんといてーや!!」
「でも良かった・・・・・・・・・!!」
「し・・・心配かけて悪い。重いからどいて!?」
そんな皆本を見た局長は、チルドレンに期待したように尋ねる。
「あの・・・ワシは!?ワシは!?」
「「「・・・・・・・」」」
「「「こんにちわ局長」」」
「ああッワシには良い子のごあいさつ!?なんかすごくくやしいッ!!」
ぺこっと頭を下げる薫たちに、局長は悔しそうに涙を流した。
とそこで、薫がなまえに気付き声をかける。
「・・・・・ってなまえ!ここにいたのか!」
「心配してたんやで?」
「大丈夫?何かされなかった?」
「・・・・急に立ち去ってごめんね、別に何にもなかったよ、」
にっこりと笑って言うなまえに、薫たちはそれ以上何も言えなかった。
「それはともかく騒ぎは2号棟だ!!急いでくれ!」
「了解!」
「そこで止まれッ!!」
「うわ・・・!?」
銃を構えた警備員が叫ぶが、念動力により攻撃される。
「退がれ!!やつは超度5の念動能力者だ!」
「くそっECMが作動してるはずなのに・・・・・・!?」
「チッ・・・!!キリがねえ!!」
はッはッと、息を切らしながら脱走者は苛々と吐き捨てる。
――ヒュパッ!
「「ザ・チルドレン」、解禁ッ!!」
「特務エスパーかっ!?だが・・・まだガキだ!!」
瞬間移動で脱走者の前に現れたチルドレン。
皆本は、チルドレンに無線で指示をだす。
「ECCM出力全開!!施設内はECMが稼動中!新しく追加したECCMで君たちはいつも通り超能力を使えるが――――バッテリーは10分で切れるからな!?」
「りょーか・・・・・!!局長、皆本!!あれ――――!!」
「同型のリミッター!?じゃあ奴もあのECCMで―――――!?」
薫は、脱走者の腕にリミッターがあるのを発見する。
「どこで入手したんだ!?柏木クン、こっちであれをコントロールできんのか!?」
「シリアルナンバーがわからないと無理です・・・!!」
焦る大人たちをおいて、薫が脱走者を攻撃しようとする。
「ノシちまえば同じさ!!」
「ま、たんま薫!!」
「念動―――鉄槌!!」
「!!」
なまえは薫を制止しようとするが薫は止まらない。
ドガガァアアン!!と派手な音をたて、収容施設の壁が破壊される。
「よっしゃあ!!一丁あがり――――――」
「薫の馬鹿!違うっ!!」
「へ?・・・!?」
「へッへッへ・・・・・・お前ら超度6・・・いや超度7だな?たすかったぜ!!俺の力じゃここの強化壁までは壊せなくてな・・・!!出口まで行く手間がはぶけたぜ!!」
どわはははははっ!と豪快に笑う脱走者に、薫は驚き、なまえはため息をつく。
「な・・・!?全力でカマしたのに――――壁だけ壊れてなんでアイツは平気なの!?」
「だから言ったのに・・・・・・・、」
「彼は強盗殺人で服役中ですが―――その前は軍の特殊能力部隊に所属していたそうです・・・!!」
「ESP戦のプロじゃん!?そーゆーことは先に言いたまえヨ!?」
資料を見ながら柏木は言う。
局長は警備員に詰め寄っている。
皆本も静かに焦っている。
「(超度の差を技術でカバーできるのか・・・!!マズイな・・・!!「チルドレン」は力を解放することしか知らない・・・!!)」
「そんなんカンケーあるかいっ!ウチのテレポートで――――・・・・!?」
「まっ、葵!!」
「あれ―――――!?」
「葵ーーーーーッ!!」
「!?葵ちゃん!?脳しんとうだわ・・・!!さっきの爆発のどさくさに何かされたみたい・・・!!」
いきなり、地面に倒れた葵。
紫穂が急いでかけより、触って葵の容態を透視た。
なまえも急いで葵に治癒を施す。
「見逃さないなら次は殺す!ガキは家でおとなしくしてろ!!」
「な・・・なんだとこの野郎ッ!!」
「だ、だめ!!薫!!」
「しょうがねえっ!悪く思うなよッ!!」
右手に念動力を集め、脱走者に向けて走り出す薫。
慌てて薫へ向い出すなまえ。
薫に攻撃をする脱走者。
「薫!!後ろだッ!!」
「!!こんなもの―――――!!」
薫の後ろに迫っていた岩に気付いた皆本が叫び、薫は振り返り念動力で防御する。
「違う!!そっちじゃない!!」
「そうさ!!かかったな!?こっちがお留守になってるぜ!!」
岩に意識の向いた薫の背後から、脱走者は銃を乱射。
「ヤベ・・・!!(バリアが間に合わない――――)」
「だめぇぇ!!!!!」
叫びながらなまえは、薫を弾丸から守るように瞬間移動した。