忍び寄る過去
「バカ!!なまえ―――――――!!」
「大丈夫、正面で受けずに斜めに弾けばすむことなんだから。」
「!!だ・・・・・・・誰!?」
「ほら、早く。なまえなら大丈夫だから。」
「うっ、わ!?」
突然、薫の後ろに瞬間移動してきた少年――――――――兵部は薫に囁き、なまえの腕をひっぱり自分の方へ抱きしめた。
「ひょ・・・兵部!?」
「あ、あんたは!!ひ、むぐっ!!」
「!!」
「・・・・・・・・・・!!」
兵部に気付いた皆本は叫び、なまえも声を上げようとするがその前に、口を兵部に塞がれる。
兵部はなまえに、しーっと口の前で人差し指を立ててから弾丸をはじいた薫の頭を撫でた。
「ほら、できたじゃないか!」
「(薄いバリアしか張れなかったのに・・・・・・・・・!?)」
にっこり笑っている兵部とは違い、薫も脱走者も驚きを隠せない。
「次は攻撃しよう。いいかい、コツは・・・・・・・・・・・攻撃は受けるより流す。こっちの力は小さく一点に集中するのが戦いの基本だ。絞り込んだキミの力を防げる者はこの世に存在しない・・・!!」
「・・・・・・・・・・!!」
「薫ッ!!そいつから離れろ!!」
皆本が無線で叫ぶが、薫の耳には届かない。
薫の表情は自信に溢れていた。
「そうか・・・・・!!(いける――――――――!!)」
「いい子だ・・・!!(そう、キミはまだまだ強くなれる・・・!!)」
「ふ、ふふふよふゅふひょーふふ!!(は、はなしてよひょーぶきょーすけ!!」
今まで大人しかったなまえがそこで急に暴れだした。
「ダーメ、キミを放したらキミは僕の邪魔をするだろう?なまえ、」
「ふふりふーふふふーふ!!(あたりまえじゃないか!!)」
じたばたと手足を使い、抵抗するなまえに兵部はわざとらしくため息をつく。
「しょーがない子だなぁ、"相変わらず"強情なんだから。」
――ペロッ
「ふ、ふひょっ!?」
「キミって"昔から"ここが弱いよなあ、」
「ふ、ふぁふ・・・・!!」
舐めた、なまえの首筋を。
兵部はそのままなまえの首筋に顔を近づけたままでいる。
それがくすぐったいのか、なまえの顔は真っ赤だ。
なまえから力が抜けたのを感じた兵部は口から手を放す。
そんなことをしている間に異変に気付いた皆本が現れた。
「にゃ、ふぁふぅー!」
「なまえに何してるんだこの変態!!」
「変態とは失礼だな!・・・心配はいらない、キミとこの子たちには催眠能力は使ってない。・・・僕が味方だということをわかってほしくてね。」
へにゃりと力のないなまえを抱きながら皆本を見る兵部。
皆本は銃を取り出し、兵部に向かって構えた。
「そんなことより薫だ!今すぐやめさせろ!」
「何を怒ってる?戦闘の基本を教えていない君たちの方がどうかしてる。あいつに脱獄の手引きをしたのは僕じゃなく反エスパー組織だ。エスパー犯罪者の危険性を宣伝するためらしいけど――――君たちもしょせん連中と同じ普通人だからな。「チルドレン」が自分の力で歩くのを恐れてるんじゃないのか?成長させる気がないらしいからな。」
「ちがふにょ、」
「え?」
なまえは兵部の腕の中で静かに否定する。
皆本もなまえに続いて物凄い形相で叫ぶ。
「ちがう!この子たちはまだほんの子供なんだよ!超度7のパワーを使いこなすにはもう少し待つ必要があるんだ!!今はまだああいうことを続けると、負荷が大きすぎてオーバーヒートを―――――」
「えっ。」
「あーーーうーーーのーーー」
「ゆーこときかにゃいから・・・・」
薫は頭から湯気をだし、目は焦点が定まらずにいた。
兵部は様子の可笑しい薫を見て驚く。
なまえは疲れたように零した。
――ドン!!
「うわーっ!?」
「み・・・皆本!?」
「皆本さん・・・!!」
薫の力により、なまえ達が立っていた辺り一面に爆発が起こり、局長たちの居るモニターの映像が消えた。
「薫ちゃん・・・!!」
「あああああ―――言わんこっちゃない・・・!!」
葵の瞬間移動で建物の上に避難した皆本は言った。
「・・・・・・・・なるほど・・・・・まずいな・・・・」
「どーしてくれるんだ!?」
なまえを抱えたまま皆本たちの元に瞬間移動してきた兵部。
皆本は泣きながら兵部に叫んでいる。
「彼女のECCMは切った?」
「切ったけどムダだ!暴走時のあいつにECMは効かない!」
「のーー・・・」
薫の周りは地面が割れ、破壊されている。
「こらあかん!!完全に暴走してる・・・!!」
「なんとかしないと本人も無事ではすまないわよ・・・!?」
「ほーほーにゃらあるよ、」
「え?」
焦ったように言う葵と紫穂になまえが声を上げた。
「・・・・・こういうのはどうかな?多分なまえも同じ考えだと思うんだけど。」
「――――――――!!」
兵部専用の監房が悲鳴をあげている。
原因は薫の念動力。
兵部となまえ達は、監房にあるガラスケースのような場所にいた。
部屋の中の家具は暴走した薫によって飛び回っている。
「ここなら多少は威力も弱まる。超能力対策が普通の何倍も施されてるからね。しばらくここで休ませておさまるのを待とう。」
兵部は相変わらずなまえを抱えたまま言う。
ちなみになまえは先程のダメージが抜けないのか、力が抜けたままだ。
「ついててやるのは僕一人で十分だぜ?ああ、なまえは別だけど。危ないから君たちは外に・・・」
「お前なんかにあずけられるわけないだろ!?というかいい加減なまえを離せよ!?」
「・・・・・・・・・・」
兵部は何も言わない。
「ただ、ここを思いついてくれたことと―――さっき危ないところを救ってくれたことには礼を言っとく。こいつを守ってくれて、感謝する。」
「・・・・・・・!!」
渋々といった感じだが、はっきりとした皆本の感謝の言葉に兵部は訝しげな顔をした。
薫が目を覚ます。
「にゃ?みにゃもと・・・・・・・・?」
「薫!超能力をひっこめろ!できるか!?」
「あたひ、もっろ強くられるって・・・・・・・」
朧げな意識の中で言う薫に皆本は真剣にかえす。
「そんなことは僕にだってわかってる・・・!!でも、ゆっくりでいいんだ!僕はちゃんと待っててやるから・・・・・・!!」
「にょ?えへへ・・・・・・・・・・・すー・・・」
薫は嬉しそうに笑い、ゆっくりと目を閉じた。
兵部はそれを面白くなさそうに顔をひそめた。
「・・・・・・・・・」
「!よかったおさまっ・・・た!?」
「皆本はん!?」
がんっと大きな音をたて、皆本の頭に椅子が降ってくる。
葵は倒れた皆本に声をかけ、紫穂は兵部に文句を言う。
「最後までガードしてよ!あなたはここでも超能力が使えるんでしょ!?」
「使えるけどかなり疲れる。それにそもそも・・・僕にECMや能力測定が効かないのはこの傷のせいでね。なまえも同じだよ。」
なまえを抱きながら兵部は自分の前髪をどかし、額を見せる。
額にあるのは銃で撃たれた痕だった。
それをみてなまえはビクリッと体をすくませる。
「彼は僕やなまえに傷を負わせた連中の仲間でもあるんだよ。それくらいの不親切は大目に見て欲しいなあ。」
「・・・・・・・!!いったい何が・・・!?」
「むかーしのハナシでね、君たちは知らなくていい。そーだろうなまえ?」
「ひょーぶ・・・・・きょーすけ、」
なまえはガタガタと何かに怯えていた。
兵部はそんななまえを見、気絶したまま薫を抱えている皆本を見てため息をつく。
「だいいち、こんな状況でサービスは無理さ。こいつは僕の恋敵なんだぜ?(君だってどうせいつかその手を放すさ・・・!!同じ予知を聞かされたときの――――僕の仲間のようにな・・・・・・!!)」
「きょう、すけ、ごめん・・・・」
「・・・・・なまえ?」
「ごめん、ごめん、ごめんなさい―――――」
譫言のように謝り、気絶したなまえを、兵部はただ黙って抱きしめていた。