それは押し込めたはずの

薫と皆本が船の中で攻防戦を繰り広げている頃。



「・・・もう少しスピード出ない?」

「これでフルスピードですよ!」

「催眠のかかった状態で二人っきり――――危ないわ・・・!!」



救助者となまえ達をつんだ潜水艦のなか、珍しく紫穂が焦っていた。

しかしなまえと葵は少し呆れた感じだ。



「・・・・・皆本にかぎってまさか。」

「せや、皆本はん、マジメやし大丈夫やろ。」

「マジメだから危ないのよ。」



ちらっと紫穂がなまえと葵を見ながら言う。



「私はまだいいけど、現場に行くのは葵ちゃんでしょ。そのとき―――――二人が「びくっ」とかして急に離れたりしたら――――気まずいわよー。」



紫穂の妄想はさらにひろがり、止まるところを知らない。



「しかもそのあと、薫ちゃんがなんだか大人っぽく雰囲気変わってたりしたらどうする!?」

「うわッキツ!!」

「・・・・・・・・・・(どんだけ。)」



葵と紫穂の頭に、「心配しないで・・・!!なんにもなかったよ。」と頬を可愛いらしく染め、片目をつむる薫が浮かぶ。



「そのクセなんや目と目で会話してる二人!?」

「そう、そんな感じ。」

「・・・・・・・・・・(うわぁ)」

「で、帰りの船では二人こっそり指をからめあってたりするのよ!!」

「最低!!フケツ!!そんなチームでこの先 脇役として生きていくのはイヤーッ!!」



ヒートアップする二人に、なまえは声をかけた。



「・・・・じゃあ僕が薫と変わってこようか?」

「なまえちゃんが?」

「うん。」

「なまえが?」

「うん。」



少し落ち着いた様子の紫穂にこくん、と頷くなまえ。



「・・・・・まぁなまえやったら薫みたいに過ちは起こらへんやろな・・・・・。」

「確かに・・・・・・。」

「「・・・・・・・・・」」



じーっとなまえの顔を見つめ、考える葵と紫穂。



「「じゃあ、お願いします。」」

「うん、行ってきますー。」



あっさりと頼んだ二人になまえは微笑んだ。


























「はーい、選手交代だよー。」

「「なまえっ!?」」



突然現れたなまえに瞠目する薫と皆本。



「お前・・・・・どうやって!」

「どうやってって言われても・・・・・普通に瞬間移動したとしか言えないんだけど。」



ケロッとそう言ったなまえに皆本は脱力する。



「・・・お前なぁ。」

「まぁ、そんなことはどうでもいーんだよ。薫、寒いし臭いし、嫌でしょ?こんなとこにいるの。」



くるっと薫のほうに向き直り、尋ねるなまえ。



「そりゃあーまあな。」

「ってことで強制退去ー。」



なまえは薫が頷いた途端に瞬間移動を発動させる。

う、わっとか薫の焦った声だけを残し薫の姿は見えなくなった。



「っと、まぁそういうことだから。」

「・・・・・・・・なまえ、何か予知、したんだろう。」

「・・・・・・・なんのこと?」

「君が突拍子もないことをする時は決まって"何か"ある時だ。」



薫がいなくなって、静かになった場を和らげようと皆本の隣に座り笑いかけたなまえに、皆本は真剣な顔をした。



「気のせいじゃないかな?」

「・・・・・・君が予知についてあまり話したくないのは知ってる、でもこのままじゃ駄目だッ!!」

「・・・・・・このまま・・・ってなにが?」



声をあらげる皆本を、横目に見るなまえ。



「・・・君が、一人で背負い込もうとすること。」

「・・・・っ!・・・・・・・・・おかしなこと、言うんだね皆本。僕は、別に、一人でなんか「予知を一人で背負い込もうと、しているじゃないか。」



バッと皆本を見上げるなまえ。

その瞳には様々な思いが篭められていた。



「・・・・・・・・・・・・」

「なんで僕らに頼らない!薫や葵、紫穂だってそんなこと望んでいないはずだ!!」

「・・・・・・皆本。未来は、変わらない。特に、逆らいようのない、大きなものは。例え、逆らったとしても、どこかで――――必ず"補修"される。」



陰を落とすなまえの瞳。

しかし皆本は臆すことなく、真っ直ぐになまえの瞳を覗き込む。



「それでも君一人で背負い込む必要はどこにもない!・・・・なまえ、君は、ここにいていいんだ。」

「っ!!」



なまえに走る衝撃。

彼女の脳裏で皆本の言葉と、深く、深く封じた記憶が重なる。





























――今日からここが、君の居場所だよ、君はいていいんだよ――
















――僕が、君を守るから、だから、――
















――  なまえ  ――







































「京介、きょうすけ―――――」



ゆっくりと頬を伝う、温もり。

熱を発するロケット。



「なまえ?」

「みな・・・・もと、僕、僕は―――――――――――」

「だめだよ、なまえ」

「!!兵部!!」

「な、んで、京介が――――」



二人の背後に現れた兵部。

驚愕に目を見張る皆本となまえ。

兵部は、ほんの一瞬だけなまえを驚いた瞳でうつした。



「・・・・・・駄目だよなまえ、君は"僕のもの"だから。」

「なにを言ってっ!!」

「それと、気付いてないようだけど・・・・・・なまえ、そうとう辛そうだぜ?」



兵部に言われ皆本はなまえを見た。



「大丈夫・・・・・だ、よ?」

「・・・・・なまえ?」

「嘘は良くないよ。本当は、今にも倒れそうなほど辛いんだろう?」



妖しく笑う兵部。



「・・・・・・・そんなこと、あっ、」

「なまえ!?」



途端にガクッと体から力の抜けるなまえ。



「ほら、」

「兵部!お前の仕業か!?」

「違うよ・・・・本来、なまえは超感覚者だ。そんな彼女が、水圧に逆らうためにずっとエネルギーを放出していたんだ。・・・・・・どうなるかわかるだろう?」

「・・・・・きょーすけ―――――みなもと、」

「・・・・・なまえッ!!」



息も切れ切れななまえを見て唇を噛み締める皆本。



「そこまで悪化した以上ここにいては危険だ。今すぐ上に行こう。来たまえ、二人とも連れて行ってあげるよ。」



すっと手を差し出す兵部。



「く・・・・!!」

「(そうだ、皆本クン!罪悪感と敗北感・・・!!そして無力感とともに僕に屈しろ。そうすれば君にはどんな催眠もかけることが可能になる。催眠能力というのは――――――)」

「催眠能力は・・・相手の望まない暗示やイメージを与えようとすると、強力な念力が必要な上短時間しか効果が持続しない。」

「なに・・・・・・・・!?」

「お前の狙いは僕を操り人形にすることだったんだ・・・!!そうだな!?」



驚く兵部に皆本は強く言い返す。



「僕もESP研究者の端くれだぜ!?一時的な催眠でからかうように見せかけてたが・・・僕に半永久的な暗示をかけ、「チルドレン」を思い通りにできる道具にするのが目的か!!そうはいかない!!」



携帯を片手に、皆本は兵部を睨み据える。



「!!お前、何をする気だ!?」

「なまえのESPを制限する!!なまえ専用に改良したから、例えなまえでも効果はあるはずだ!!」



皆本が携帯のボタンを押した途端に、溢れだしてくる海水。



「水圧を防ぐ力がなくなったぞ!?お前、なまえを僕に預けて死ぬ気か!?」

「いや、お言葉に甘えて一緒に連れて行ってもらうさ。ただし―――――」








――ガシャン!!







「お前の念波に合わせて作った改良型だ!脱出に必要な能力以外は封じる!!」

「!!」

「妙なマネをしたら一緒に溺れてもらうからそのつもりでいろよ!?」



ピーと、皆本と兵部を繋ぐ手錠から音がしロックがかかる。

皆本は兵部に顔を近づけた。



「これは・・・取引だ!!あんたに屈したりはしない!!」

「(それで僕に読み勝ったつもりか、坊や・・・!!フフ・・・)・・・・・・・・・・」



視線で人を殺せそうなぐらい兵部は皆本を睨み返すが、浅く呼吸を繰り返すなまえを静かに見た。




























「ホラ!!急いで!!」

「貞操・・・じゃなくて人命がかかってる―――――!!」

「だっ!!」



人がすっかり居なくなった潜水艦に、なまえを抱えた皆本が突然現れた。

操縦席付近にいた葵と薫は慌てて皆本に近付く。



「な・・・なんや!?どーやってここまでテレポートを・・・!?まさかなまえが!?」

「え?でも、この距離じゃ自分だけで精一杯だってさっき・・・・・。」

「・・・違うよ。すぐ近くまで浮上してきたんだ。やったのは兵部だ・・・!!」



皆本はなまえに毛布を包ませる。

そして手首に引っ掛かっている、半分になった手錠を見つめた。



「あいつ・・・・・・・・!!改良型のロックも効果なかったのか・・・!?じゃあなぜ―――――――」

『想像より楽しいオモチャだな。今日はそれがわかっただけで収穫だ。予知の実現までゆっくり遊ばせてもらうよ・・・!!(それに、なまえも大分思い出してきたみたいだしな)』



海に一人佇む兵部を潜水艦から見た紫穂は驚きに声をあげる。



「ひょ・・・兵部さん!?」

「いったい何が・・・」

「・・・心配いらない。たいしたことはなにもなかったからな・・・・・・・・・・・!!」

「「「「!!」」」」



フッと何か悟ったように言った皆本に、なまえと皆本を除いた全員が顔を青くした。























「オトナの姿のあたしが頼んでも、抱いてくれなかった皆本が!?」

「うん、なまえちゃんの魅力にもなびかなかった皆本さんが。兵部さんとは何かあったらしいのよ。」

「女じゃダメなのか、皆本は・・・!!ショック!!」

「皆本はんフケツ!!」



ひそひそとソファーに座り落ち込む薫に言う紫穂。

葵はソファーに座り、皆本に背を向けている。

ちなみになまえはポーッとしていた。



「なんの話だーーーーーーーッ!!」



バベル内に皆本の叫び声が響き渡った。




















(だんだんと、僕が僕でなくなってゆく)

2018.01.22

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