狩るか、狩られるか

「宿木明・15歳。」

「犬神初音・14歳。」



バベルと胸に小さくプリントされたジャケットを羽織ったシンプルな服装の少年――――宿木 明。

長くふさふさな髪をサイドで二つに結んだ女の子――――犬神初音。



「二人とも訓練では好成績を収めた実力者。今日のテストで正式に特務エスパーに採用するかどうかを決定します。チーム名は「ザ・ハウンド」。そしてこちらが、今回「ザ・ハウンド」の指揮をとる――――――」



迷彩服をき、ボードを手にした柏木は二人に皆本を紹介する。



「皆本です。よろしく。」

「ちっス。」

「よろしく。」



皆本にぺこっと小さく頭を下げる明と初音。



「君らの任務は、このエリアのどこかに潜む、三人の凶悪なエスパーを捕らえることだ!」

「凶悪・・・!?これって実戦前の最終訓練じゃ・・・?」

「相手は先輩の特務エスパーでしょ?」



不思議そうにする明と初音に皆本は歯をぎりぎりと噛み締める。



「かなり危険な連中なんだ。訓練とは思わない方がいい!!僕の指揮であいつらをコテンパンに負かして欲しい!これは君たちの訓練であると同時に、あいつらに指揮官に従うことの重要性を学ばせるチャンスなんだ!!」



帽子を被り直しながら、背後に炎を燃やす皆本。

しかし、そんな彼に冷静な突っ込みが入る。



「・・・・・・・またそんなこと言って――――薫達に言い付けちゃうよ?」

「なまえ!?ちょ、お前はあっちのチームだろ!?」



呆れたように皆本のすぐ傍に瞬間移動してきたなまえ。

なまえは宙に浮いたまま腰を折り、皆本へと顔を一段と近づけて皆本に言い放つ。



「そんなこと言っていいの?僕があっちにいったら訓練どこじゃなくなるよ?」

「それは・・・・・そうだけど。」



皆本がいつもよりも、言葉弱く発するとなまえは得意げに鼻をならした。



「てことで、僕は適当に高見の見物を決めこんだから。」



なまえの視線が、明と初音に映る。

なまえの顔から、表情が落ちる。

明と初音は、なまえの視線を受けて少しだけ身じろぎした。
無表情ではあったが、どこか悲しげなその表情に───、とても年下とは思えないなまえに、二人は圧倒された。

なまえの瞳は、自分たちを通して・・・誰かを見ている。と明と初音はすぐに気がついた。



「・・・せいぜい頑張ってね、皆本。(宿木くんと、犬神さんもね・・・。)」



また皆本へと視線を戻したなまえは、言うなり瞬間移動して姿を消す。

声をかける間も無く移動していったなまえに、皆本は呆れ返る。



「あ、待てったら!・・・・ったく。」

「・・・・今のは?」

「「ザ・チルドレン」のメンバーの一人。みょうじ なまえ。彼女は複合能力者なんだ。あと、超度7の予知能力者。」

「・・・・・へぇ、あの娘が噂の。」































「・・・ってコトはさー、あたしたちが皆本に勝ったら、好き勝手していいってコトだな。」

「墓穴を掘ったわね、皆本さん。」

「超度7のウチらが新入りに負けるわけないやん!」



森の木の上で。薫達は意地の悪そうにわらっている。



「言質はちゃーんととっといたしな。」



葵は携帯を取り出し、あるムービーを再生し始める。

画面には、皆本が写りそこから彼の強気な声が聞こえてくる。



『じゃあ賭けよう!今度の模擬戦で君らが勝ったら、なんでも言うこときいてやる!そのかわり僕が勝ったら――――』

「あ、ここは消しとかな。」



あとでバックれられるよーに、とか葵は言ってムービーの続きを削除。



「何をやらせようかな〜〜〜〜〜」



葵の隣でうしゃしゃしゃっといやらしく笑う薫。



「相手は二人とも雑多な能力を持つ複合能力者。ただし、なまえちゃんと違ってどの能力も超度2〜4・・・楽勝ね。」

「油断してると危ないよー。」

「!!」



やぁと、なまえは片手を上げて薫達に微笑む。



「なまえ!やっぱ、ウチらを手伝って・・・・!」

「それとこれとは別ー。」



パァアと表情を明るくした薫に、にっこりと笑うなまえ。

がっくりと肩を落とした薫達の元へ布を頭からすっぽり被り、杖を持ったいかにも怪しげな人物が現れる。



「・・・油断してはいかんヨお若いの。ワシの勘によると、あんたたちの戦う相手は「合成能力者」じゃ!」

「こんにちは―――――」

「局長!」

「なにやってんの?」

「柏木さんに怒られるよー?」



木から降りてきて男――――局長に口々に話し掛けるチルドレン。

その反応に局長はぎくぅっ!!と身を縮める。



「ワ、ワシは局長などではないっ!!通りすがりの謎の老賢者じゃ!!えこひいきして味方したなどとバレたら、柏木クンが怒るから変装しているのでもないぞ!?」

「やっぱり柏木さんじゃん。」

「で、その合成能力ってなに、局長?」

「うむ、まー、ひとことで言うと、いくつかの能力を組み合わせて連係させ――――あたかも全く新しいひとつの能力のように発動させるエスパーのことじゃ!!」

「!」




























「ウ・・ウウッガウウッ・・!!」



初音が苦しげに唸る。



「!!」

「ガ・・アウウッ!!」



初音が唸るのを止めたかと思うと、そこには一匹の狼がいた。

それを遠くから見ていた薫達はあんぐりと口を開ける。



「へ・・・変身したッ!!」

「うっそ!!マジ!?」



双眼鏡を手に叫ぶ薫に葵は反応する。



「グルルルル・・・・・・・!!」

「これは・・・どう見ても本物の・・・!!しかしあり得ない!!話には聞いていたけど――――――」

「念力で身体を覆って周囲の物質で体毛状の鎧をまとってます。近くにいると催眠能力も影響して狼そのものにしか見えません。」



驚く皆本に柏木は冷静に説明している。

明は柏木に続いて説明する。



「初音の家は代々この能力を使う家系なんスよ。昔は人狼の末裔と言われてたけど、今は超能力の組み合わせだと解っています。」

「動物の形をイメージ化することで、無意識レベルまで高度なコントロールを可能にしてるのか・・・!!すごいな・・・!!」

「最近はこういうスタイルのエスパーが主流になりつつあります。「チルドレン」のような純粋種の高超度エスパーは本当に希少ですから。」























「!!獲物・・・近い・・・!!」



クンクンと鼻を動かし、何かを感じとる初音。



「嗅覚・・・のはずないな。遠隔透視能力の認識変換か・・・!!」

「ええ。予知能力と念動能力で、身体能力も狼そのものです。」

「よし、俺が突き止めてやる!!」



明は眉間に人差し指をあて、意識を集中させる。

明の視線の先にいる一羽の鳥。



「!!」

「アクセス完了・・・!!」

「!!」



その鳥はビクッと突然動くのをやめると、明の重い通りに動く。



「意識を乗り移らせたのか!?精神感応の変形発動・・・!!」

「(いたぞ・・・!!見つけた!!)」

「!!」

「ガウッ!!」



明の乗り移った鳥は、真っ直ぐに木の上に居た薫達目掛けて飛んでくる。

初音も明に続いて走り出す。



「まずい!見つかった!!いったん逃げよう!!」

「緊急テレポート!!」

「あ、まってワシも!!」

「え、ちょっ僕は関係ないのに!!」



なまえ達は葵の瞬間移動で姿を消した。



「・・・・・・・・!!ダメ。逃げられたわ・・・!!」



初音は走るのを止め、身体を狼から元に戻す。



「いやいける・・・・・!!これなら・・・・・・!!(「チルドレン」は超度こそ高いが応用技術が未熟だ!そこを補う指揮官がいなければ攻略は十分に可能だ・・・!!)」

「たまにはお灸をすえてやらないとな!!超度の差が絶対でないことをおしえてやる!!」

「・・・・・・・・・・・」



わははははははッと力強く高笑いする皆本に、柏木も若干ひきぎみだ。





























「な・・・何が超度2〜4だよ!?」

「6か7相当の力にはなってる感じやな・・・」

「あんなのズルい〜〜!!」

「だから僕は言ったじゃんか・・・・・・・」



はぁと、ため息をつくなまえ。



「こりゃ本気で作戦を立てておく必要があるかも・・・・・・・」

「そうね、有利になるためには使えるものはなんでも使いましょ。」

「使えるもの・・・・・・・・・・・」



葵は紫穂に言われて顎に手を当てて考える。

と薫と葵と紫穂の視線が、なまえを捉える。



「・・・・・僕、参加してないもんねっ!」



言うがはやく、どこかに瞬間移動してしまう。

三人はチッと舌打ちをする。



「・・・・ったく真面目な奴だな。他に使えるもの・・・・・・・・・・」



と、三人が同時に局長を見る。

そして次の瞬間には可愛いらしく局長に飛び付く。



「局長!!」

「大好き」

「ワシも君たちが大好きだヨ!?それが打算だとわかっていても!!」





























「制限時間は12時間!行くぞ!狩りの開始だ!!」

「がんばってくださいね」



鼻息荒く、明と初音を連れて歩き出す皆本。

柏木は後ろから笑顔で手を振っている。



「(絶対勝って特務エスパーになってやる・・・!!だがそれには―――――――)初音!大丈夫だろうな?」

「ええ。でももうあまり時間がないわ。12時間もとてももたない・・・!!せいぜい3〜4時間―――――」

「(それ以上は危険ってことか・・・!!)」



既に息の上がっている初音を見て、明はゴクリと喉をならした。
































「・・・・・・・・・・・」

「! 来たわ!あの蛇!!」



地面に手をつき、透視た紫穂は叫ぶ。



「念動力うう!!固結びッ!!」



薫は素早くそれに反応し、念動力で蛇を結び固める。

葵と局長はひょいと木の影から現れた。



「ちょっとカワイソなことない?」

「じゃあほどいてやれよ!!」

「ぎゃーっやーーっ!!」



薫は意地悪く念動力で葵の目の前へ蛇を飛ばす。



「油断するナ!?宿木クンの能力は、相手の知能によって範囲が変わる!蛇のような爬虫類の場合―――――― 一度に多数の個体を操ることも可能だ!!」

「「「わーーーーー!!」」



局長が言うと共にぼとぼと大量の蛇が降ってくる。



「テっ、テレポート!!」





























「よし、かかった!蛇の群れを嫌って無意識に逆方向に飛んだ・・・!!皆本さんの狙い通りだ。」

「まだここからが勝負だ・・・!!」

「そーいや、どーゆーわけか局長も一緒にいるみたいっすよ。」

「な・・・あ、あのオッサン・・・!!」



皆本は明の思いがけない一言に、顔をしかめる。



「・・・・・・・・・」

「いや、かえって好都合かも・・・!!局長は君たちの能力のことは当然知ってる。「ザ・チルドレン」にアドバイスもしてるだろう。ってことは、こっちはその裏をかけばいいんだ!」



真剣な顔の皆本を見つめ、明は口をひらく。



「・・・すごいっすね皆本さんは・・・!!さすがだな。会ったばかりの俺たちを完全逃げられた使いこなすなんて――――――噂じゃバベルの誰も扱いきれなかった最悪の難チーム「ザ・チルドレン」を唯一まとめ上げることに成功した天才指揮官だって―――――」

「そ、そんな噂に!?」



明はキラキラと目を輝かせて、語る。

皆本はそれに困ったように目尻を下げる。



「でも、それはただの噂だよ。チルドレンは最悪のチームなんかじゃ―――――――」



否定しかけた皆本の脳裏にニヤリと笑う薫たちが浮かぶ。






『くっくっく・・・!!勝ったら何をさせてやろーかなー。』



『ウチ、ハワイとか行きたい!』



『一度でいいから、全力で皆本さんを透視してみたかったのよね・・・』







「確かに最悪かも・・・・負けるわけにはいかん!!」

「まーた、悪口言ってるー!!」

「うわぁ!?急に現れるななまえ!!」



皆本の目の前に瞬間移動してきたなまえに皆本は叫んだ。

ぷりぷりとなまえは可愛いらしく頬を膨らませている。



「「っ!!」」

「?何、二人とも?変な顔しちゃってさ。」

「「なんでもない・・・・・」」

加筆修正:2018.05.10

2018.01.22

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