似た者同士?
「ガウッ!!」
「うわっ待ち伏せ!?」
バッと凄い勢いで飛び掛かってくる初音に、流石の薫達も顔を青く染める。
「上だ!!上空へ一時退避ッ!!初音クンは空まで追って来れない!!」
「よしっ!!ここで態勢を立て直して――――――――!!」
念動力で一気に空に上がった薫達は後ろを振り返り、驚愕する。
「ギィイイーーッ」
「と、鳥ッ!?は、話が違うじゃん!!」
「皆本か・・・!!」
憎々しげに呟く局長。
皆本は少し得意げに、言う。
「要はイメージ化すればいいんだ!狼の姿は超能力を引き出すための方便に過ぎない。短時間なら他の動物になることは可能だし・・・」
「・・・・・皆本、調子のってると催眠かけるからね。」
「・・・・・・・」
なまえの冷たい視線に、皆本は汗をだらだらと流した。
「く・・・!!局長を連れてる状態じゃ、テレポートしても先読みで追いつける!」
「!!」
「(いけるわ・・・!!「ザ・チルドレン」を追いつめてる・・・!!皆本って人すごい。いいなーアレ 欲しい!!)」
初音は心の中でひっそり考えていた。
じれた薫は葵たちから離れ、初音を攻撃し始める。
「逃げられないなら、こったから・・・!!」
「薫!?待て、分散するのは・・・」
「このッ!!」
初音は薫の攻撃から逃れ、木の林立する中へ人型で飛び込む。
「待て―――――よッ!?」
木の間を飛んでいた薫は勢いよく顔からネットへ飛び込む。
そして、ぼてッと地面に転がされる。
「だあッ!!く、くそ!?皆本のワナか!!」
薫の後ろから静かに手が延びてくる。
薫はそのまま手――――明に顔をわしづかみにされる。
「!うわっ!!」
「俺の能力は人間にも有効なんだ。ただし―――――」
「く・・・念動―――――!?あれ!?」
薫は明から離れ、攻撃しようとするが、何故か念動力が使えない。
そこに皆本が口元に笑みをえがきながら現れる。
「ムダだよ。超能力は使えないはずだ。なぜなら――――」
「!皆本!!」
「それもうお前の身体じゃないから!」
「!!!え・・・!!あれっ!?」
薫は自分の身体を見て声をあげた。
自分の身体が、いつの間にか明と代わっていたからだ。
「相手が人間の場合は、こっちに身体を明け渡す必要があるんだ。」
「あ、あたし!?」
「つまり意識が入れ替わったわけ。」
薫(身体は明)は明(身体は薫)を見て叫び、明(体は以下略)を指さす。
「そんな――――マジ?」
「捕獲成功だな!!君には僕の相手はまだ早いってことさ!」
「・・・・・・・・・!!」
片目をつむり嬉しそうに言う皆本に薫(体は以下略)は涙をぐっと堪えた。
「じゃ、作戦通りに。」
「ああ。距離が離れすぎないよう注意しとくよ。」
「(急がねーと―――――馴れない力の使い方は消耗も激しい。初音はもう限界のはずだ。)」
皆本の肩に乗っかり皆本の髪やら耳を力いっぱい薫は引っ張る。
「てめーあたしたちの指揮官だろ!?ワザと負けるくらいの優しさはないのか!?」
「勝手なワガママ言うな!!」
「!!」
「・・・・・・・・・・・エ・・・・獲物・・・・・・!!」
あきらかに目が普通でない初音が二人の前に現れる。
「こ・・・これは、暴走状態・・・!?」
「ガウッ」
「わーーーーーーーーーーーーーーーッ!?」
初音は狼に変形し、皆本のそでに噛み付き薫を皆本から引き離す。
「み、皆本!?」
「おお、薫・・・!!無事だったかネ!?」
「薫!!」
「よおし、それじゃあ反撃を開始するとしよう!!私の指揮で君たちを必ずかたせてみせるヨ!!新入りなんかに!!可愛い「チルドレン」をやらせるわけにはいかんッ!!」
局長の表情はまさに汚い大人の表情だった。
「・・・・・・・ひでーっすよそれ。エコヒイキじゃないすか。」
「え!?」
――ガチャ
「二人目ゲット!!」
「か・・・薫!?」
「ま・・・まさか!!宿木クンか!?」
葵に手錠がかけられたのをみて、局長は叫ぶ。
薫―――――明は、紫穂に向かって走りだす。
「へへ・・・・・・・・!!残り一人!!この勝負いただき!!」
「・・・・・・・・!!」
「そうはいかんッ!!この私のコブシでッ・・・・・・・」
青ざめる紫穂を見て、局長は明に殴りかかろうとするが何せ見た目は薫。
「卑怯者ーーーーッ!!これでは戦うことができんーーーーーッ!!」
「局長、もうええから帰って!」
寄声を発しながら自分の顔をおおう局長に、葵は冷たくツッコミを入れた。
「!?あ・・・あれ・・・!?身体が・・・動かなく―――――」
「ど・・・・・どないした!?」
「念波が不安定になってる。本体が遠くへ離れたんだわ。」
いきなり動きを止めた明を、葵は不思議そうに見る。
紫穂は恐る恐る近づき、薫(中身は明)の頭に触れて透視る。
「人格を本当に交換してるんじゃなくて、テレパシーで身体感覚を送受信してるだけだから――――彼のテレパシー有効範囲から離れちゃうと・・・・・」
「!!こ、ここは!?」
「元の薫ちゃんに戻るってわけ。」
「薫!?」
「!!こーしちゃいらんない!皆本が・・・・・・・!!」
「!?薫ちゃん!?」
意識が戻ったかと思えば、薫は酷く狼狽した様子でどこかへと飛んでいった。
「あははっ!大変だなぁ皆本も。」
皆本をくわえた初音が走っているところから遥か上空。
なまえは腹を抱えて楽しそうに笑っていた。
「あ、かわいそーに明くん。顔痛いだろうけど、これからさらに痛い思いするんだもんなぁ。」
クスクスと、おかしそーに笑うなまえ。
「んじゃ、僕は皆本を助けにでも・・・・・・・・?」
『――が―――――だっ!!皆本は――――――皆本は・・・・・・・あたしのもんだーーーーッ!!』
「・・・・・・すっごい声だなぁ。薫。」
「そこまでだ!!初音!!」
初音の前に立ち塞がる明。
「!」
「これでも食らえッ!!(さあ食らえ初音!!この俺を!!)」
ビュバッと明の足元から、野兎が初音目掛けて跳ぶ。
初音は一瞬だけ目を見開き、次の瞬間には「ゴハン!!」と兎の首に噛み付いていた。
兎(明)から「はうっ!!」となんとも可哀相な声がもれる。
「(こ・・・これで、食われるのは何度目だ!?あのバカが暴走するたび、獲物として食われる痛みを――――――)・・・・・あれ?」
痛みに堪えようと目を閉じていた明だったが、いつまでたってもこない衝撃にそろそろと目を開けて、こけた。
初音は捕まえた兎を薫の前に置いてしゃがんでいた。
「オマエボス。先食エ姐サン。」
「ナマで?」
流石の薫も呆れた表情だ。
「・・・どーやら薫の殺気に気圧されて、自分より上位と認めたようなんだ。」
「!!皆本さん!?」
「初音くんはここを宝物の埋め場所に決めたらしい。・・・出して!!」
地面から顔だけ出た情けない状態で皆本は言った。
「いーよ。」
「・・・・・なまえか。なんでもいいから早くだして!?」
疲れたように言う皆本に、なまえは「驚かないんだ・・・・つまんない。」と呟く。
「ん、まった記念に写真撮ってから・・・・・「いいから本当に早くして!?」
「合格!?勝てなかったのにいーんすか!?」
テントの近くで、コックの帽子を被り明は初音の為にひたすら料理を作っていた。
因みに初音は「おかわり!!」と無数の皿を積んだ机に座りながら言う。
「勝敗は重要ではないのだヨ。実戦で起こりうる不測の事態への対処テストなのだ。だから私はあえてあのよーなマネを・・・ネ、柏木クン!?」
「・・・・・・・・欠点は重大だけど、局長が全面的に責任を持って支援するそうですよ。」
何故か歯の一部が欠けた局長が柏木をびくびくと見ながら言う。
柏木は冷たい笑顔だ。
「とにかくおめでとう!同じ立場の者として、応援してるからな。」
「同じ?だって皆本さんは・・・・・・」
不思議そうな明に皆本は答えた。
「いや、ケダモノの世話係同士ってことで!」
「誰がケダモノだ!!」
「ウチもおなかすいたーーーー!!」
「つまんない〜〜〜〜〜もう帰ろう〜〜〜〜〜〜」
皆本にそれぞれくっつくチルドレン。
薫に至っては皆本の頭にかじりついている。
「これもおかわり!」
「(よかった、これでとりあえず、初音の食費はバベルに負担してもらえる!?)」
それぞれが好き勝手にやってる中で、なまえだけは静かに眠っていた。
美しき獲物たち
(前よりもずっとずっとなにかが楽になった)