独占欲は人一倍です
深夜の皆本のマンション。
すやすやと眠るなまえ達を起こさないよう、台所から小さくガチャガチャと音がする。
皆本は棚からコップを取り出すと、水道の蛇口を捻りコップに水をためる。
「ふーっ。」
ほんのりと顔の赤い皆本はコップの水を一気に飲み干し一息。
「お酒と香水くさっ!?」
「なにこのピンクの名刺?」
「えーと、「また来てねはーと」だって。」
「あ、口紅ついてる。」
「わあッ!!」
皆本は突然現れたなまえ達にびっくりして叫んだ。
葵は皆本を見て鼻をつまみ、薫は皆本の鞄から名刺をだし、それを横からなまえが読み、紫穂が口紅の着いたハンカチをもつ。
「ここんとこ毎晩じゃん!?どーゆーことなのよーッ!?」
皆本の胸倉を掴み、叫ぶ薫。
「皆本はんフケツ!!ウチもう実家に帰る!!」
頭を抱えて嘆く葵。
「ごはん冷めちゃった―――――」
ラップをかけた皿を持ち、小さく溜め息をつく紫穂。
「お腹の子はどうするのッ!?」
珍しく悪ノリするなまえ。
「奥さんか、お前らはーっ!!だいたいなまえまでなんなんだ!!仕事だ仕事!!君らの世話以外にもいろいろつきあいがあるんだよ!!好きで毎晩飲み歩いてるわけじゃない!」
「そうね。私は皆本さんを信じるわ」
なまえ達に叫ぶ皆本に紫穂はキラキラと綺麗に笑いかけた。
「(・・・と、油断させて―――――)・・・・・・・!?」
そーっと皆本の手を握り、透視る紫穂。
だが、次の瞬間にはその表情は驚きに包まれた。
「悪いな。透視プロテクターを使ってるのさ。体表面の電位を乱して、こっそり心を読めないようにしている。」
すっと皆本が服の中から出した機械を見た瞬間、紫穂の表情はぶすくれたものになる。
「・・・・・・・・・・・それはつまり・・・・・・」
「本気でかかってこいってことか!?」
「ぐわうーーーーー!!」
「了解」
「いてまえ、薫!紫穂!」
「きゃーあ、やめなよー。」
皆本を念動力で地面に押し付ける薫、薫の台詞に黒く笑う紫穂、紫穂と薫を応援する葵。
そしてそれを見るなまえ。
なまえは言葉こそ制止をかけていたが、声音はとてもそうとは感じられないものだった。
「電気的プロテクトごときで、「超度7」の透視を防げると思う?本気出せばこんなの・・・」
のしっと薫の念動力で床に倒された皆本の上に座り、手に意識を集中させる紫穂。
皆本は慌てて紫穂に叫んだ。
「やっ、やめろーーーー!!職務上の機密がらみだ!この件に関して透視すると服務規定違反で重罪だぞ!?」
「「「!」」」
「・・・というわけだから!!おやすみっ!!」
ばたんっ!!とリビングの扉を強く閉めてでていく皆本。
「あっ、逃げた!」
「せっこーい!」
「・・・どない思う?ホンマやろか?」
「おねーちゃんのいる店に行くのがなんで機密なのさ!?あたしたちというものがありながらッ!!浮気者ッ!!あたしもホステスさんにちょっかい出したり王様ゲームで無茶言ったりしてえーッ!!つれてけええーッ!!」
泣きながらぷるぷる震える薫に、葵となまえはあきれながらツッコむ。
「王様ゲームで無茶言うたらあかんやろ!!」
「てか、話違くない?」
「どこで何やってるのか知りたいけど・・・本気で透視したら相手にもわかっちゃう。もし本当に仕事だったら罰金くらいじゃすまないかも・・・」
「でもウソやったら?皆本はんよからぬ遊びにハマってるってことやで?」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
考え込む3人。
「要するに、直接超能力を使わなければいいのね?」
「なめんなよ皆本〜〜〜〜〜!!」
「子供やなんて思っとったら大間違いやで〜〜〜〜?」
「頑張ってー。(・・・・まぁほどほどに止めようかなー)」
メラメラと意気込む薫たちをなまえは静かに眺めていた。
バベルの医療研究課。
「どうですか?先生!」
女性は服を胸までたくし上げ、そこに手の甲を当てて透視た医師に不安そうげに尋ねる。
「ふーむ。ただの風邪ですね。インフルエンザウイルスには感染していないようです。薬を出しておきましょう。」
超度6 接触感応能力者
賢木 修二(22)
「ただ・・・透視して少し気になることが・・・あ、いや、でもま、今の段階なら気にするほどのことでも・・・・・・・・」
うーんと腕を組み、考え込む賢木。
それに焦る女性。
「な、なんですか!?まさか悪い病気の早期発見!?」
「・・・いや、それは。そうだ、それについては今度ゆっくり個人的に話しましょう!!二人っきりで食事でも――――――」
ビシッ!!と賢木の後頭部に皆本のチョップが入る。
「・・・気にしなくていいですよ。こーやって女性を口説くのが彼のクセなんで。」
突如、自分の背後に現れた皆本に慌てる賢木。
「みっ皆本!?お、俺はマジで医師としてだなっ・・・!!」
「じゃあなぜ服を脱がせる!?君の超度なら手を握るだけで十分だったろ!?」
狼狽する賢木に自分の腰に手を置き、叫ぶ皆本。
女性は皆本の叫びに表情を変えた。
「・・・・・・・!!サイッテー!!」
強く扉を閉めて出ていく女性。
「おい!いくら元同僚でも診察中に入ってくるのは問題だぞ?」
頬に赤い手形をつけた賢木。
皆本は軽く呆れた顔をする
「終わるのを待ってるつもりだったけど・・・セクハラは見逃せないだろ!?」
「特務課に行ってもそのクソマジメは変わんねーなあ!!同期入局の若き天才同士、もちょっと仲良くしてくれてもよさそーなものを!」
ニッと笑う賢木。
そんな二人を余所に、窓の外をカメラがふよふよ浮いていた。
「仕事はマジメにやらなきゃいかんだろ!?」
「やってんじゃん!!俺の診断は絶対だし、どんな小さな異常も見逃さないぜ!!」
建物の屋上で薫は驚いた声をあげる。
「賢木センセイ・・・!?」
「こいつが皆本はんを悪の道に!?」
「女たらしで有名なESPドクターね。」
「・・・・・なるほどねー。」
薫の操作するカメラの映像を見ながら冷たく言う四人。
『で、何よ?明日のことで何か?』
『いや、それが・・・ちょっとマズいことに―――――「ザ・チルドレン」が僕の行動に興味を持ったみたいなんだ。ヘタするとあとをつけてくる可能性がある!』
皆本の言葉にぎくっと反応するチルドレン。
「たしかか?」
「あいつらのやりそーなことだからな。ダメと言われておとなしく引き下がるようなら苦労してない。」
疲れたような皆本。
「だからって中止はできない。明日はこれまでとはわけが違うぞ。何せ相手は超本命の強敵・・・!!」
「!?」
真剣な表情の賢木に自然とチルドレン達は、画面を食い入るように見つめる。
「我がバベルの看板娘、デートの約束は半年待ち!美人エスパー受付嬢チームとの合コンなんだからなッ!!」
鼻息が荒く力説する賢木。
「しかも、向こうは二人に気がある可能性が高い!!」
「僕に!?」
「おーよ!!お前の名前をだしたら一発オーケーだった!」
がしっと皆本の肩を組み、皆本の頬をぐりぐりする賢木。
「こんなチャンス二度とねーぞ!?ガキに遠慮してフイにする気か!?」
「・・・・・・・・・・・・・」
満更でもなさそうな皆本の表情に、屋上には何かが壊れる音と身も凍り付くような殺気がながれていた。
「嘘が下手だね。二人揃って。」
「「 ぎょぅわぁ!!!! 」」
背後に突然現れたなまえに皆本と賢木は、情けない声と共に飛び上がった。
「・・・・・・・傷つくよ?」
「あ、いや・・・・・ごめん。」
「・・・・まぁいいや。」
疲れたようにどかりと椅子に座るなまえ。
横で賢木が「あ!俺の椅子なのに!」とか言ってるのをなまえは無視している。
「小さい男は嫌われるよ?賢木せんせっ。」
「・・・クソガキめ。」
可愛いらしく笑ったなまえに、溜め息をつく賢木。
「あ、あは・・・・。ところでどうしたんだなまえ?」
「どうって?・・・・あぁ、薫達なら"噂"の受付嬢を偵察しに行ったよ。」
皆本に質問され、少し考えるような仕草を見せてから嫌味っぽくなまえは笑う。
「そうじゃなくて・・・・・・・・。て、ちょっと待って!!もしかしてさっきの会話・・・・!?」
「もちろん聞いてた。チルドレン全員で。」
「・・・・気付いてなかったのかよ、」
しまったとばかりに顔を青くする皆本に、賢木は肩を下げた。
なまえはそんな二人に言う。
「いいの?これで。」
ぽつりと賢木と皆本を見ずに一言零すなまえ。
感情の読みとれないなまえの横顔を見つめ、ふっと困ったように笑いながら口を開く皆本。
「・・・君に嘘は通じないだろうから正直に言うけど・・・・。僕は、君達に汚いものを見せたくないんだ。」
「・・・・・そう。まぁ無駄だと言っとく。」
そんな皆本からふいっと視線を反らすなまえ。
「ま、なまえちゃんがこう言ってるんだ。覚悟しといたらどうだ?」
「うん・・・・・まぁ努力はするよ。君たちはまだ、子供なんだから。」
眉を下げて笑う皆本をちらりと横目で見た。
「・・・・・僕、子供じゃ、ないし、それ、薫に言ったらぶっ飛ばされるよ、」
「確かになー。」
「あー、うん。・・・・なまえ、」
「・・・・・何?」
またちらりと横目で皆本を見るなまえ。
なまえの表情は珍しく眉を下げた弱気なもので。
それを見て皆本は笑顔を深めた。
「君は否定してるけど、君だって子供だよ。」
「でも、僕は―――」
「甘えていいんだよ、なまえ。重要なのは今なんだから。」
「・・・・・・・・・、」
ほんの少し嬉しそうに見えるなまえの表情。
「・・・・・・おい、俺を差し置いていちゃついてんじゃねーよ。」
心なしかピンクな雰囲気になった部屋の空気をぶち壊すように口を開く賢木。
完全に賢木を忘れてたらしい二人は、はっと顔を赤く染める。
「ち、違ーうッ!!」
「べべべ別に、い、いちゃついてなんか・・・・!」
そんな二人に肩を上げる賢木。
「あーはいはい。熱いこって。」
からかうような賢木の態度。
それにさらに顔を赤くするなまえ。
ばっと椅子から立ち上がったなまえはスカートの端を握りしめて奇声をあげはじめる。
「あ、あぅぅ!!賢木のぉ――――馬鹿ぁぁあ!!」
――ドーンッ!!
大きな音の後にあったのは、部屋にめりこんでいる男二人だけだった。
「(皆本の馬鹿ッ!賢木の阿呆ッ!何も・・・知らないのにッ!)」