低くたって可能性にはかわりない
「原因は――――これよ・・・・・・!!外から透視して気づかなかったのはうかつだったわ。この女の人――――おなかに赤ちゃんがいる・・・・・・!!」
「え・・・・・!?」
薫と葵は紫穂の台詞に驚く。
「しかも、この赤ちゃん、エスパーなの!たぶんこの子もテレポーターよ。まだ能力は使えないけど、外の異変に気づいてものすごい念派を出してる・・・・・・・!!」
「!!それが葵の能力に干渉しているのか・・・・・!!くそっ!!」
『救出には急いでも半日はかかる!それまで待てるか!?』
「私たちはともかく、赤ちゃんが・・・・・!!」
「こんな力を出し続けたら一時間ももたないだろうね―――!!」
「・・・・・・・・・!!」
紫穂となまえの分析に、薫は思わずぶるり、と体を震わせた。
通信機の先の皆本が、少しの間の後に静かに言葉を発する。
『・・・・・母体は?一時間もつか?』
「それは大丈夫だと―――――!!赤ちゃんを見捨てる気!?このコが死ねばテレポートできるようになるから・・・・・・!!」
「な!?」
「皆本はん!!」
『落ちつけ!!そうは言ってない!!何か手を考えるから、心配しないで待ってろ!!いいな・・・・・・!?』
「・・・・・・」
「薫、」
「心配すんな、なまえ!」
皆本の言葉が信用できないのか、険しい表情をする薫になまえは予知したのかそっと声を掛けた。
薫はそんななまえを見てニカッと笑い、真剣な顔でサイコキネシスを使って外のヘリを動かす。
――グワァッ
「!!薫か!?こんな距離でこの力・・・・・・!!」
「薫!!何をする気だっ!?」
「局長・・・・・!?皆本主任!?これはいったい・・・・・」
薫によってヘリが動きだし、それを見た局長と皆本は驚きに目を見開いた。
ヘリの操縦者は突然制御のきかなくなったヘリに戸惑うばかり。
そして薫はヘリに装備されているミサイルを使い、土砂の壁を壊そうとする。
「おい、まさか・・・・!!」
「さすがに岩がちょっと硬くて重いからさあ―――――ミサイルに手伝ってもらう!!撃ったら念力放すから、エンジンかけて!!」
「いかんっ!!やめせろ、皆本ーーーッ!!失敗したら土砂につぶされるぞッ!!あのコたちを万にひとつも失うわけには・・・・・・!!」
「ESPリミッターを使うとヘリが落ちる!!三人とも薫をとめろ!!命令だッ!!」
局長と皆本はなんとか薫をとめようと必死に叫んだ。
しかし薫、葵、紫穂、なまえは凛とした目で反論する。
「とめるなッ!!あたしを信じろ!!」
「アホ!この赤ちゃんはウチの後輩やで!ジャマなんかせーへん!」
「うん。全員助かるにはそれしかないもの。このお母さんも同じ気持ちよ。」
「大丈夫、降り注ぐ土砂は僕が防ぐから!やっちゃえ薫ッ!!」
「局長も皆本も――――あたしたちをガキ扱いすんなっ!!こーゆーちっちゃい命を守るのが、特務エスパーじゃないのかっ!?」
「!!」
「行けええーーーッ!!」
薫の力によってミサイルは土砂に向かってはなたれた。
なまえはサイコキネシスで、みんなを囲むようにバリアをはる。
「サイコ―――――ドリルクラッシャーーーーー!!」
薫はなまえ達と共に勢いよく土砂の中から飛び出す。
「薫・・・・!!応答しろ!!薫ッ!?」
「!!」
皆本達のいる地上から遥か上空になまえ達はいた。
「ひゅーーーっ!ちょっと危なかった・・・・・・・かな?」
「無事だったからいーんじゃない?まぁなまえちゃんのバリアのおかげもあるけどね。」
「えへへ〜!」
「もう大丈夫・・・・・・!!怖いものは何もないよ。あたしたち、もっともっと強くなって、みんなのこと守ってあげるから・・・・・・。だから・・・・・・安心して生まれておいで・・・・・!!」
薫はそっとお母さんのお腹に手を当てた。
なまえはお母さんを治療しながらふんわりと微笑んだ。
「よかった・・・・!!無事か・・・・・!!よくやっ――あ・・・・いや!」
「コラーーーーッ!!なぜ命令を無視したああーーーッ!!降りて来いっ!!今スグにだーーーっ!!」
「あちゃ〜〜〜」
「マジギレしてる・・・・・」
「やべ・・・そんなに怒るとは・・・・・・」
「はぁ、」
「よかった・・・・・・!!よく無事で――――!!」
「・・・・・・・・」
局長が紫穂と葵を抱きしめながら泣いているなか、皆本だけは険しい表情をして少し離れた場所からチルドレン達を眺めていた。
「な・・・・・なんだよ、皆本!?や、やる気かっ!?」
「薫っ!皆本っ!」
皆本と目のあった薫はサイコキネシスを使おうと右手を前にだす。
なまえはそんな薫を諌めようと薫の左腕に抱き着いた。
皆本はそんなチルドレンをギロッと睨み静かに言い放った。
「なぜ僕らを信頼しない。赤ン坊を救いたいのは、君たちだけだと思うのか!?ミサイルを使うにしても、着弾点はもっと慎重に調べて選ぶべきだ!!」
「う・・・・・・!!」
「君は自分勝手に他人の命を危険にさらしたんだぞ!!超能力は万能じゃないぞ!!力があるから一人前ってわけでもない!!大きな力を使うには、大きな責任をともなうんだ!!君たちはそれがまるでわかってない!!」
「ま・・・まーまー、皆本クン!ともかくみんな救ったんだから・・・・」
「局長は黙っててくださいッ!!僕は絶対認めない!!どんなパワーがあっても、君たちはただのガキだっ!!」
「・・・・・・・・!!」
皆本の叫びにチルドレンたちはぐっとつまった。
「大人扱いして欲しいなら・・・・・!?」
「うぐ・・・」
「ぐ・・・えぐ。」
チルドレンたちは皆本の説教がきいたのか、ぼろぼろと泣き始める。
葵は子供のように、薫は何かに耐えるように、紫穂は静かに、なまえは皆本を睨みつけながら泣いている。
それを見た皆本は先ほどの勢いをなくし、汗をだらだらとたらし始めた。
「あ、えーと・・・・・つまり反省を・・・・・」
「み・・・皆本の・・・・・・・バカーーーッ!!」
「アホーーーーッ!!」
「いやーーーーーーっ!!」
「死ねぇぇえええ!!」
「ああっ、単なる逆ギレ!?しまった、涙で油断を――――」
そこはやっぱりチルドレンで、泣いたと思ったら次の瞬間には殴ったり蹴ったりと全員で皆本を攻撃するのだった。
「・・・・子供たちは?」
「泣き寝入りしちゃったみたいです。やっぱり子供ですね。皆本さんが本気で怒ったのがだいぶこたえたみたい。」
「ううっ、かわいそーに・・・・・!!」
「またそうやって局長は・・・・・・!!」
ぐったりと、目元にほんの少し涙を光らせながら寝ているチルドレンを見ながらそう言った柏木。
局長はハンカチを取り出し涙を拭いてく、そんな局長にぼろぼろで包帯だらけの皆本は文句を言った。
「でも、ま・・・・朝、ガキなんて言ったのは失敗でした。あれがなければもう少し聞き分けがあったかもしれないですから・・・・・」
皆本の脳裏に薫の言葉が浮かぶ。
『こーゆーちっちゃい命を守るのが、特務エスパーじゃないのかっ!?』
「・・・・背のびしたい年頃なんですよ、皆本さん。急ぐ必要なんかないのにね。あとほんの5、6年で手足ものびきって――――子供でいられなくなるんだもの。」
柏木の一言で皆本は大きくなったチルドレンを想像した。
「・・・・・・!!へ・・変なこと言わないでくださいよ、柏木さんっ!!」
「?」
「何を怒っとるんだ皆本・・・・・・・?」
(僕らを泣かせた罪は重いんだからっ!)
2018.01.17