静かに奏でる不協和音
「今日はカレーだね?」
ひょっこりと、なまえは皆本の居るリビングに顔を出す。
「そうだよ。・・・・予知能力で?」
「いちいち夕飯の為に超能力は使わないから。」
笑って茶化す皆本に、なまえは膨れっ面になる。
なまえは皆本の側に立つとぽつりと呟いた。
「九具津、脱獄したね。」
「・・・・嗚呼。多分、君に依頼がくると思う・・・・。」
暗くなる二人の表情。
暗くなった雰囲気を気遣ってか、なまえは話題を変えた。
「・・・・もうすぐお腹の空いた薫たちがこっちに来るよ。」
「・・なら、手伝いでも頼むか・・・・・。」
「カレー粉と粉チーズとラッキョないでしょ?葵に頼べば?」
メモも何も見ずに皆本に言うなまえ。
「そういえば・・・・ってなまえが行けばいいじゃないか。」
「・・・・僕はダメなの。疲れたし。」
「何にだよ。」
おやすみ、とリビングを出ていきながらなまえは皆本に手を振る。
「・・・そうだ、皆本。手紙には注意してね・・・・・・。」
足を止めて振り返らずにそれだけ言って瞬間移動したなまえ。
「手紙だなんて、また意味不明なことをアイツは・・・・・・。」
呆れたようにため息をついてから、皆本は財布を探しに寝室へと向かった。
「手でやれ、手で!!」
ジャガ芋の皮を剥きながら皆本は、念力で包丁を操る薫に怒鳴る。
「ヤダ!タマネギは目にしみるから!」
「これブロイラーじゃない〜〜〜〜〜〜!!もっといいお肉にしてよ〜〜〜〜〜!!」
「ゼータク言うなっ!!」
お肉を透視して頬を膨らます紫穂に、皆本は叫ぶ。
「ただいまーーーー!!」
葵が瞬間移動で帰ってきた。
「カレー粉と粉チーズとラッキョ買ってきたで!あと、ついでに郵便物も持ってきた!」
葵はドサッと荷物を机に置いた。
紫穂は置かれた郵便物に手を伸ばし、次々と透視していく。
「給与明細・・・・・・・けっこうもらってるのね。こっちは請求書――――――」
「勝手に透視るなよ!!」
「!?」
透視していた紫穂の手が止まる。
「皆本さんこれ・・・!!」
「?どうかしたか?」
紫穂から封筒を受け取り、怪訝そうにそれを眺める皆本。
「何か変な手紙。中身は写真が一枚だけ。それもよく透視えないし他に何も感じられないのよ。」
「差出人もなし・・・?機械的に出したダイレクトメールで透視しづらいだけじゃ・・・?」
「でも何か嫌な感じはするの。なのに何も透視えないって・・・変よ。」
「・・・・・・!!(拘置所は超能力で調べてもなんの痕跡もなかった。そんなマネができる奴は―――――――――)」
皆本は封筒をテーブルの上に置くと、表情を険しくした。
「これ以上触らない方がいいな。葵、中身だけ抜いてみてくれ。」
「了解!」
葵はテーブルの上の封筒を真剣に見た。
封筒から出たのは一枚の写真だった。
「――――――!?」
「なにこのピンボケ写真?」
「・・・・・・・・・なんだ・・・?どこかで見たような―――――――!!」
眩しくなる写真。
光がおさまると皆本は力無く地面に倒れていた。
「皆本はん!!皆本はん!?」
「意識がないわ・・・!!すぐに本部のラボに連絡を―――――――!!」
顔を青ざめる三人。
「み・・・皆本・・・!?」
「う・・・・ううう・・・・ッ!!」
深夜、皆本のベットの横には一つの人影があった。
「皆本の、バーカ・・・・馬鹿過ぎるよ・・・・・忠告、したのに・・・・・!」
「・・・・なまえちゃん?」
隣のベットにいた賢木が、カーテンの隙間から顔を出す。
「賢木、せんせー・・・・」
「こんな時間にどうしたんだ?」
いつもの芯のある声に似ても似つかない弱々しい声に賢木は眉を潜めた。
「別に・・・・明日で一週間経つなって・・・・・・。」
「・・・・・そうだな。」
夜に呑まれる病室。
「・・・・・・なぁ、なまえちゃん。本当は・・・・・いや、なんでもない。」
「・・・・・そう。また、明日。」
迷って口を開くが、結局言えなくて口を濁す賢木。
自然と賢木が言えなかったを感じとったのか、そう残してなまえは瞬間移動した。
「レム催眠に入ると、最初はいつもこうだ。A-10神経が刺激されて―――――ま、要するに幸福な夢を見てるらしい。」
病室で、幸せそうな皆本を見ながら賢木はチルドレンに説明する。
「それが10分もすると決まって―――――」
「う・・・・!!うっ!!うう・・・・!!」
「悪夢になるらしい。毎回この繰り返しだ。」
唸りながら暴れる皆本を呆れた目で見る賢木。
「で、どんな夢なんだよ?」
「・・・・・・それがわからないの。中に入ろうとしても壁があるのよ。」
焦った薫に急かされ、紫穂は皆本を透視る。
「・・・・・ところどころスキはあるだろ?紫穂ちゃんなら入れるんじゃないのか?」
「ダメ、中にも防壁が――――――――」
「多分伊号おじーちゃんのプロテクトでしょ?」
皆から少し離れて壁に寄り掛かっていたなまえが口を開く。
紫穂はそれに頷き、話を続ける。
「それを囲む形で心が閉じてるって・・・不自然だわ。誰かが皆本さんの深層心理を利用して、外から入り込めない構造物を作ってる。」
「精神感応能力者が?だが、外部からの念波は認められないぜ?いったい――――こいつの中で何が起きてるんだ・・・・・・・・!?」
「皆本・・・・・!!」
心配そうな顔で皆本を見つめる薫。
なまえはそれを厳しい表情で見ていた。
「また悪夢か。だんだんサイクルが短くなるな。」
皆本の隣のベットでくつろぐ賢木。
「TVでラブシーン見てたら、ええとこで臨時ニュースになった時の薫みたいやな。」
「的確だけどまわりくどい例えね。だからどうだっていうのよ?もうちょっと役に立ちそうなこと考えたら?」
「し、紫穂!!」
皆本を見て苦い顔をする葵に紫穂は冷たい言い方をする。
それに慌てるなまえ。
「・・・・・・・!!なんやその言い方!?そっちこそ接触感応能力者のクセになんの役にも立たんで―――――」
「私のせいだって言うの!?」
勢いよく立ち上がり口論を始める葵と紫穂。
「や、やめなよ!二人とも・・・・!!」
「あんたは黙っとき!!」
「そうよ!予知能力者のくせに!!」
「あんたはいっつもそうや!!すました顔して後から・・・・!!」
「おい・・・!?」
止めに入ったなまえを巻き込む二人。
賢木が慌てて仲裁に入るが、なまえは目を大きく開き傷ついた表情をしてから無言で俯いた。
「そんなこと言っちゃダメだろ!?心配なのはみんな同じだ・・・・・!!焦っても仕方ないだろ?」
「・・・・・・!!」
二人の肩に手を置く賢木。
「局長たちがデータベースから似たケースを探してくれてる。誰がなんのためにこんなことを仕掛けたのかはわからんが・・・まだしばらくは命に別状ない。手がかりが見つかるまで待つんだ!」
「・・・・ごめん。」
「ウチの方こそ・・・」
「さ、なまえちゃんにも・・・って、」
病室にはなまえの姿は見当たらなかった。
「いないし・・・・・・・そーいや、薫ちゃんはどうした?」