あけない闇はない

「・・・・・・・・・?なまえ!!」



国会議事堂の上で膝を抱えた薫は目の前を浮いていたなまえを見つけ、暗い表情を一変させ立ち上がった。



「薫・・・・・・・」

「どうしたんだ?葵たちと病室に居たんじゃ―――――」



空に浮く二人。

心配そうに話しかける薫。

なまえは俯いて、薫から顔を反らした。



「・・・・・別に、ちょっと散歩してただけ。・・・・薫こそ、病室に戻りなよ。二人が心配してた。」

「でも、」

「僕はいいから。」

「、わかった・・・・・・。」



ちらりとなまえを見てから、立ち去っていく薫。

しかし進むのをやめ、なまえに向かって叫んだ。



「なんかあったら、すぐ呼べよっ!!」

「っ・・・・・うん、!」



なまえは酷く悲しそうに薫の背中を眺めた。



「・・・・・元気だして。花嫁。」

「!!」

「そんな顔されたら僕はどうしていいかわからなくなってしまうよ。皆本は僕の敵だ。いろんな意味でね。だが、悲しむ君の顔は見たくない。」

「京介・・・、これも君の仕業だろ・・・・?」



力無く背後の兵部を見るなまえ。



「・・・・・・そうだと言ったら?」

「・・・・・・、」



きゅっと眉を寄せ、口を開いては閉じて何かを言おうとするなまえ。

力強く目を閉じてから、震える唇で言葉にした。



「・・・・・・・・・」

「お願いだよ・・・・京介、皆本の目を覚まして・・・・・!!」

「・・・・・・・・」

「僕じゃ何もできないんだ・・・!!今も、この先も・・・!!でも、それじゃ嫌なんだよ・・・・!!」



絶え間無く流れるなまえの涙。



「いつだってわかってはいるんだ・・・!だけど・・・・僕は・・・なにも・・・・!!」

「・・・・・・バベルを離れて僕の所へおいで、花嫁。女王と共に。」

「!!」



なまえの顎を上げる兵部。



「夢の中でも現実でも―――出口はそれひとつしかない・・・!!それに言ったろ、・・・君に普通の居場所はないって。」



ビクリと震えるなまえ。

瞳が、揺れる。



「・・・・・・・なぜ君がここに?桐壷クン。」

「こんの・・・・・・・ジジイ!!」



しっかりと兵部の手を掴み、怒りに震える局長。

なまえは葵の瞬間移動で、薫の腕の中に居た。



「あ・・・葵!!紫穂!!薫!!」

「あなたが黒幕なのね・・・・・!!兵部少佐!!」

「兵部さん・・・・・!!」



葵と紫穂はきつく睨み、薫は複雑な表情で兵部を見つめた。



「皆本を人質になまえや薫を引き込もうと――――――!?許さんぞッ、卑劣漢ッ!!」



勢いよく兵部に殴りかかる局長。



「チッ。」

「!!」



しかしあっさりと流され、建物から落ちる。



「わああああーーーーーーッ!!ふんッ!!」



普通に着地する局長。

足は痺れているらしいが、必死に堪える。



「こんな・・・・ことで・・・・やらせるかァアアーーーーッ!!やらせはせんッ!!やらせはせんーーーーーーッ!!」



局長は銃を取り出し構えるが駆け付けた警備員に取り押さえられる。



「何やってんだお前ーーーッ!!」

「テロリストめーーーッ!!」

「ジャマをするなああーーーッ!!」



局長を軽く無視すると、兵部は優しくなまえと薫に笑いかけた。



「花嫁、また今度ゆっくり・・・・女王もね―――――!」

「ウチらをナメんなっ!!逃がさへんでーーーっ!!」

「!!」



瞬間移動で、兵部を壁に埋め込む葵。



「・・・・・・やるね。さすが光速の女神」。」

「何ゴチャゴチャ言うてんねん!?皆本はんを元に戻せッ!!」



高級車を兵部の上に落とす葵。



「さ、さすがに・・・・や・・・・やりすぎじゃ――――――」

「あんたも手伝え、薫!!これくらいでくたばるタマやない――――!!」



冷や汗をかく薫の言葉に目を吊り上げる葵。



「その通りだ、女神。」

「!!」



一瞬で葵の背後に周った兵部。

葵は兵部によって背中に衝撃をくらう。



「今のキミじゃ、まだ――――――僕は倒せない。」

「っ京介!!」

「葵ちゃん!!」

「う・・・・・・」

「葵!!」



不敵に笑う兵部に、咎めるように叫ぶなまえ。

薫と紫穂は、地面に倒れた葵を見て顔を青くしている。



「バベルを離れて僕の所へおいで女王、花嫁。・・・君はこんな所にいるべきじゃない・・・・・―――――!!」








――ドン!!







「・・・・・・仲間になんか、ならない!!皆本や・・・葵や、なまえ達をいじめるなら――――――!!」



兵部を念力を込めたパンチで壁に殴り飛ばした薫。



「だろうね。僕のミスだ。僕としたことが、あせりすぎたようだ。」



服の汚れを払いながら立ち上がる兵部。



「いいパンチだったよ。ゆっくりだか、君は育っているんだね。」

「・・・・・・京介、」



念力で浮かび上がる兵部。

複雑な表情で名前を呼ぶなまえに兵部は微笑んだ。



「怒らせてしまったおわびに、これをあげよう。キミなら彼の夢の中に入れるかもしれない。」

「!?」



薫は兵部が投げた写真を念力で受け取る。



「写真・・・!!皆本さんに送られたのと同じ―――――!?」

『早く大きくおなり、女王・・・・・・!!』

「・・・・・・・!!」



瞬間移動した兵部を薫はじっと見つめていた。






























「黒巻節子(19)。元・特務エスパー訓練生。合成能力者。状況に該当する能力者を洗っていてヒットした。」



皆本の居る病室で、局長は皆に一人の女性の画像を見せながら説明をする。



「今回の件は彼女の仕業と考えていいだろう。コードネームは「ドリーム・メーカー」。その名の通り、夢を操る能力なのだが・・・彼女の場合、夢というより・・・精神内部にひとつの世界を構築する・・・と言った方がいいかもしれん。」

「世界を構築・・・・?」



賢木が険しい表情で問う。



「人間の脳には意識から離れた膨大な計算能力がある。それを使ってある種の仮想現実を作り上げるのだ。」

「要するに、他人の脳の中に擬似装置を植えつける。一度仕掛ければあとは相手が自分でそれを動かすから、テレパシーを送り続ける必要はない・・・・・ってことでしょ?」



なまえが局長の話を簡潔にまとめる。

局長は肯定するように頷いた。



「そうだ。まさか、その後、兵部とつるんでいたとは・・・!!」

「で、この写真は?」



憎々しいげに言う局長を余所に、賢木は写真を指でさはむ。



「画像の意味は不明ですが、念写で作ったものと思われます。ある種のプロテクトがかけられてて、ESP探査を受け付けないけど―――――これは少佐か、彼の仲間の誰かが、物体に特性を与えられることを示唆しています。つまり――――」

「この写真を通じて、奴らの作った夢が皆本に送り込まれたんだな?」



柏木の説明に、賢木は続けた。

紫穂と葵は不思議そうに口を開いた。



「でも、どうして皆本さんだけ?」

「ウチらも同じもん見てるのに・・・」

「(兵部さんは――――あたしなら夢の中に入れるかもって・・・・・・・・どういう意味だろ?)」



薫は険しい表情で、兵部に渡された写真を眺めている。



「!?」

「頑張って、薫。」

「!!この写真に写ってるのは―――――」

「かお――――薫!?」



急に写真が光ったと思ったら、床に倒れている薫。

皆、驚愕の表情で薫を見つめている。



「心配いらないよ。」

「何か知っているのかね!?」

「僕は予知能力者だ。夢の内容とかは教えてあげられないけど、薫なら皆本を助けにいったんだよ。」

「助けにいった・・・・?」



皆の視線を集めながら、なまえは至極怠そうに口を開いた。


「とりあえず、薫をベットに寝かせたら黒巻節子を捜したほうがいいんじゃないのかな?」

「・・・・・わかった。柏木くん、「ザ・ハウンド」と「Aチーム」に連絡してくれ。」

「了解しました。」



なまえの言葉に、局長は素早く柏木に指示を出す。

そこに、すかさず葵と紫穂が声をあげた。



「うちらも行く!」

「薫ちゃんと皆本さんの仇をとらなきゃ・・・・!」

「いや、死んでないし。」

「いいだろう。」

「それじゃ、僕は賢木先生と皆本と薫を見てるよ。」



そう言ってなまえはひらひらと手を振った。

皆が病室を出ていく中、紫穂と葵はなまえの方へとゆっくり歩いて行った。



「あ、あのなまえ、」

「何?どうかした?」

「私たち、あなたに言いたいことがあるの。」



なまえの側に立つと二人はちらりとなまえを見てから勢いよく頭を下げた。



「「ごめんなさいっ!」」

「え?」

「兵部少佐に会う前に、私たちなまえちゃんにひどいこと言ったわ。」

「謝るタイミング逃してしまわへんように、いま言うたんやけど・・・・・」



悲しげに俯く二人に、なまえは不思議そうに瞬きしてからゆっくりと笑った。



「僕なら大丈夫、君たちがそんな子だなんて思ってないから。ありがとう、わざわざ謝ってくれて。」

「当然やろ!!」

「私、友達じゃない!!」



鼻息荒くまくし立てる二人に、「友、達・・・」と小さくなまえは呟いてからはにかんだ。


「そう、だね。うん、わかった。いってらっしゃい、」

「すぐ黒巻の奴捕まえてくるからなまえは此処で待っとき!」

「いってきます、なまえちゃん!」

「うん、頑張ってね!葵、紫穂。」



























「結局、黒巻からはなんの情報も得られない・・・・か。」

「なまえ!」

「あ、起きた?皆本。」



ゆっくりと窓から病室に入って来たなまえに、皆本は目を見開く。

なまえはのんびりと念力で浮かびながら皆本に近づく。



「あぁ、おそらく薫が居なかったら多分僕はあのままだった・・・・・。」

「そうだね。・・・・・どう?何度も予知を見た感想は?」

「やっぱり、君も知っていたのか・・・・・・。」

「僕は予知能力者だよ。」



疲れたような皆本の言葉に、なまえはうんざりとばかりに答えた。



「・・・・・そうだな。僕は信じてるよ。「ザ・チルドレン」・・・・そして、なまえ、君をね。君達は負けない。」



じっと真剣な表情でなまえを見つめる皆本。

なまえは皆本の視線がいたいのか、もぞもぞと居心地を悪そうにしていた。



「・・・・・・僕も、できれば、そう、だと、思いたい、」



もごもごと恥ずかしそうななまえに、一瞬驚いた表情をしてから、皆本は嬉しそうに笑った。













(居場所が何処かなんて、)(関係なかったんだ)

2018.01.22

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