潜められた罠
「!」
「ただいまーっ。」
車の中で新聞を読んでいた皆本の上に、葵と紫穂が瞬間移動してくる。
「テレポート通学は禁止!!」
「今日だけ・・・・・」
「ここ数日あんま寝てへんから・・・・・・もう限界!」
怒鳴る皆本に、紫穂は困ったように葵は欠伸をしながらかえす。
「薫となまえは?」
「あのコ達は元気だから、友達と歩いて帰るって――――――」
目を擦りながらそう言うと、紫穂は葵と隣で眠りだした。
「・・・・・・・・みんな・・・・がんばってくれたんだな。ありがとう。」
「なーんてのんきに惚気てる場合じゃないよ。」
「わぁッ!なまえ!!」
「いい加減なれてよ・・・・。」
いつの間にか後部座席に瞬間移動していたなまえに、皆本は声を上げた。
なまえは皆本を見て呆れている。
「い、意外と慣れないもんだぞこれ・・・・!」
「・・・・あっそ。あれ、見てごらんよ。」
放っておいていいの?となまえが指したのは歩道橋。
皆本はなまえの指の先を見て、一瞬にして顔色を変えた。
「良くないだろう!!なまえ、瞬間移動を頼む!」
「りょ〜かい〜」
なまえの間延びした声が消えると共に、二人の姿も消えた。
「そいつの言うことに耳を貸すな、薫!!」
「!!皆本・・・・となまえ!!」
「やっほ。あんまり遅いから呼んできた。」
兵部に向かって銃を構える皆本と対照的に、なまえは笑顔で薫に手を振った。
「やあ、元気そうだね?皆本クン。」
「黙れ!!両手を地面につけ!!今すぐだ!!」
「フフ・・・・・・・・丁度いい、君にはこれを渡そうと思ってたんだ。受け取ってくれ。」
「!!」
血管が切れそうな程怒鳴る皆本に、兵部は余裕の表情で一枚の写真を投げた。
「あ、」
「!!皆本・・・・・!?」
皆本の顔に写真が当たるのを確認して、兵部は瞬間移動で上空に移る。
『正直言って、君はもっと早くギブアップすると思っていたよ。予想の10倍もしつこくプログラムを繰り返して粘るとはね。』
「・・・・・・・・・・」
「・・・・うわぁ。」
兵部に投げつけられた写真を見て、皆本となまえの表情が変わる。
『バカはあきらめさせるのも大変だ。未来を変えるのは君じゃなく、僕なんだよ・・・!!ただし・・・・それは君の望むものとは少し違うがね・・・・・・・・!!』
「この変態がああーーーーーーッ!!」
「バッカ皆本ちっげーよ!妬くことないってば!!」
上空(兵部)に向けて銃を乱射する皆本に、薫は嬉しそうな表情で後ろから飛び付いた。
「うるさいッ!!」
「・・・・さすがにこれはないなぁ。」
キスをするように唇をとがせた皆本を写真を眺めながらなまえは呟いた。
「君は――――あくまでも「チルドレン」は安全だと、そう主張するのかね?」
壊れた国会議事堂の映像を背景に、偉い政治家達を前に局長は立っていた。
「・・・・・はい。あのコたちはまだ子供で、ちょっとワンパクなだけとゆーか・・・・・・・」
汗をだらだらと垂らし歯切れ悪く話す局長。
部屋の中で1番偉そうな初老の男性は言う。
「今現在の話ではない。将来のことを政府は危惧しているのだよ。」
――ヴン!!
先程まで国会議事堂が写っていたパネルに、「ザ・チルドレン」の未来を予想した確率変動予想値がでる
「この数字の変化を見て、君は何も思わんのかね?」
「う、そのデータは隠しておいたはず・・・・・!!」
焦る局長を追い詰めるように男性は続ける。
「それに――――この写真!!」
再びパネルの画像が変わり、皆本が目を覚まさない原因となった写真が写される。
「データ解析の結果は、92%の確率で、明石薫の10年後の姿だそうだが!?この背景の煙はなんだ?そしてなぜこれを兵部京介が持っていた!?」
「不明です。わからんことを憶測しても始まらんでしょう。」
「・・・・みょうじなまえ、入りたまえ。」
男性の言葉の後、部屋の扉からノックの音がして扉からなまえが現れる。
「失礼します。」
「なまえッ!?何故ここに・・・・!!」
驚愕の局長を横目に、なまえはゆっくりと男性に並ぶ。
男性はなまえが隣に立つと、勝ち誇ったように微笑んだ。
「私が呼んだんだよ。彼女は超度7の予知能力者だろう。君も、彼女の口から言われれば信じるだろうと思ってね。」
「・・・・・ッ、」
「今現在、僕のみえる範囲内で誤差はありません。・・・・・・このままだと「ザ・チルドレン」はこの国――――いえ、世界にとって恐ろしい存在へと成長を遂げます。」
「・・・・だそうだが?」
一切の感情を切り落としたかのような無表情でなまえは淡々と言った。
「しかしッ!誰がなんと言おうと、「ザ・チルドレン」はわが国の宝です。それとも――――――超度7のエスパーが不要だとでも?それが4人も存在するという事実だけでも、どれほどの国益になるか―――――」
「ならばそれを証明したまえ。彼らがただ強力というだけではなく、今も、将来も、国の役に立つということをだ!!今後はあのコ達を特別扱いして任務を選ぶことは許さん!!」
「・・・・・・・・・!!」
「能力に見合った働きをしてもらおう。」
何か言いたいのを必死に抑える局長を、なまえは濁った瞳で見ていた。
「・・・・・・・皆本おぉ〜〜〜〜〜〜〜!?ここ、スーパー銭湯じゃん?あたしはさあ、打ち上げにパーッと温泉に行きたいって・・・・・・」
「「部屋つき露天風呂」とかがよかったなー。」
「それでも親方日の丸かいな!?」
「僕はなんでもいー。」
ほくほくとお風呂上がりで顔の赤い浴衣姿のチルドレン達は口々に文句を言う。
なまえを除いて。
「子供がゼータク言うなッ!!(ったく、こいつらは・・・可愛いんだか可愛くないんだか・・・!!)」
「女のコに温泉誘われて、その態度はねーだろ!?それでも男か!?」
皆本の頭に腕を乗せ、浴衣をはだけて誘惑する薫。
皆本は顔を赤くして焦る。
「お、女のコってお前な・・・!!」
「!わ、あのひと胸おっきい!」
紫穂の言葉に過剰に反応する薫。
皆本は薫によって頭を押される。
「どれ!?うっわ。でけーーーーーーっ!!」
興奮する薫を皆本は呆れたように見ていた。
「何処の国の人やろ。今からおフロ入るみたいね。」
葵は紫穂の言った女性を見ながら言った。
女性はスタイルのいい体を浴衣で包み、緩くうねった銀髪を靡かせながら歩いていく。
「ついてってもっかい入ろ!」
「あ、ウチも!」
「私も」
「じゃ、僕も。」
そろそろと女性のうしろについていくチルドレン。
皆本はそんなチルドレンに「失礼のないよーにしろよ!?」と声をかけた。
「・・・・・・・・・・」
その時に誰も女性がほくそ笑んでいたなど知らなかった。
『ターゲットはそっちへ行ったぞ、メアリー!』
女湯に入ると、先程の女性―――――メアリーは念動力で蛇口を開けて水を出す。
「《わかってるわ。日本の「超度7」はほんのガキだ。我々、合衆国エスパーチームの敵じゃないね・・・!!》」
浴衣を脱ぎ、身軽な服装になったメアリーは水を手に不適に笑った。
「さーて、任務、開始・・・・・・・!!ウォーター・オプティカル・カモフラージュ!!」
メアリーは水を飛び散らせたと思ったら、次の瞬間には姿は見えなくなっていた。
「・・・・あれ!?あのねーちゃんいないぞ!?あのでかい乳でどこに隠れた!?」
「いや、胸は関係ないでしょ。」
「トイレかなんかちゃうのん?」
「お風呂で待ってれば来るわよ。」
女湯に入って来たチルドレン。
四人が入ってくると、背後でカタカタとドライヤーが動く。
「!?」
「むぐっ・・・」
ドライヤーはそのまま紫穂と葵目掛けて動くと、コードで二人を拘束し、葵の首にあったタオルは二人の口を塞いだ。
「・・・・・・・・・!!」
「しっかしなんであんないい女が――――!?あれ?なまえ、二人はどこ行った?」
ロッカーに羽織りを入れて薫は紫穂と葵がいないことに気付く。
なまえは不思議そうに首を傾げた。
「あれ?さっきまで・・・・・・!!危ない!!」
「!!な・・・なんだ!?」
薫となまえ目掛けて飛んできた桶をよける二人。
「!!」
跳び上がったまま服を引っ張られお風呂の中に入っていく二人。
「サ・・・念動力!?」
「てか誰?」
「あたしとやる気か!?いー根性してんじゃん!!」
「本当だよね。」
念動力で、その場に止まる二人。
「ハイ!」
「!」
「お友達の援護はもうないデスよ。二人とも超能力をロックしまシタ。思った通り、ワタシの敵じゃないデスね。」
拘束された紫穂と葵をぶら下げた、メアリーが現れる。
「葵!紫穂!」
「・・・・・・・!!てめえ・・・・!!服着て風呂に入るとは・・・!!マナーを守れッバカ!!」
「そっちか!!」
憎々しげに言った薫の台詞に思わず葵はツッコんだ。
「ウーップス!これは失礼!でも―――」
「!危ない薫!!」
――ゴポゴポゴポッ
「そういうアナタも、キモノ着てお湯つかってマース!!」
「!!」
「薫ーーッ!!」
メアリーの念動力によって薫に襲い掛かるお湯。
薫は何も出来ずにお湯に飲み込まれる。
「・・・・・・!!」
「殺しはしまセン。安心してお休みなサーイ。」
「ふ、ふざけるなぁあああ!!」
「ッ!!」
怒り心頭のなまえはメアリーを睨み据え、念動力でどつく。
なまえの殺気に怖じけづいたのか、メアリーに隙ができた。
「ウチのエスパーに―――――何をするんだこの野郎ッ!!」
「!!」
メアリーに隙ができた途端に現れ、デッキブラシでメアリーの頭を殴る皆本。
「薫ッ!!」
すかさず拘束の解けた葵が瞬間移動で、薫を助ける。
「ぷはっ!!」
「大丈夫か、薫!?」
「ごめん、薫・・・・・。」
「ホワッ・・・・・・」
心配そうに薫に声をかける葵となまえを余所に、皆本はメアリーにESP錠をかけた。
「《米政府のエスパーがなんのマネだッ!?抗議だけではすまさんぞっ!!》」
「もうやめよう、メアリー。同盟国とこれ以上問題を起こすの良くナイね。」
「ケン!!」
黒いズボンとワイシャツにネクタイを締め、黒いロングコートを羽織った金髪のサングラスをかけた男―――――ケンにメアリーは驚いた顔をする。
「ミナモトー、友達ネー。君が戦っている間にボクは―――――」
―――
――
―
『ターゲットがそっちへ行ったぞ、メアリー!』
『「わかってるわ。日本の超度7」はほんのガキだ。」』
『ワオ!?《ソースが皿をすり抜けていくッ!?》』
『《それはソバの方をソースに一度つけてから食べるんだよ。》』
『オ・・・・オオ!?《デリシャス!!これが日本の心!!ワビサビですカー!?そして米国人が忘れている見知らぬ人への思いやり!!さらっと他人に親切ネー!》』
―
――
―――
「感動したネ。」
「それでワタシたちのこと全部教えたデスカー!!」
じーんと一人感動するケンにメアリーは怒鳴った。
「許してくだサイ。合同任務につく前に、「ザ・チルドレン」の実力試してみたかったヨ。」
「合同・・・」
「任務!?」