過ぎればこんなにも違う

「見つけたヨ・・・!!あそこに潜んでマスねー!!ボクの透視からは逃げられまセーン。」



ダムの側にある建物を透視しながらケンは叫んだ。



「アーユーレディ、カオル!?」

「おー!!行こうぜ!カウガール!!」

「・・・・・・・・・」



気合い十分な二人を心配そうに皆本は眺める。

それに気付いた薫は皆本に声をかけた。



「どうしたの、皆本?」

「え、あ、いや。充分気をつけて行けよ。「ザ・チルドレン」明石薫―――――解禁!!」

「おっしゃーーーー!!」



皆本が叫ぶと同時に飛び立つ薫。



「!!」



建物へと向かう二人を邪魔するように立ち阻む水の壁。



「ワタシの能力、大佐に使われてマス!!気づかれていた・・・!!」

「超度7のサイコキノ、カオル・アカシ。同じく、超度は6だが流体コントロールの天才、メアリー・フォード。ジャマ者なしに君たちが来るのを待っていた。私の能力が加われば、サイコキネシスのパワーはさらに倍になる・・・!!」

「ジジイ・・・・・・・・!!」

「な・・・!?なんの話デスか、大佐!?」



突如、水の壁の前に現れたグリシャム大佐に驚く二人。

メアリーは大佐に話掛けるが、大佐がメアリーの言葉に耳をかすことはなく、二人に向けて水の塊で攻撃する。



「クク・・・・・・!!君はただ、私と戦ってくれればそれでいい!!」

「く・・・・!!ウォーター・プルーフ・バリア!!」



慌ててメアリーは同じ水の壁で攻撃を防ぐ。



「!!」

「サイキックううーーーーーー!!超カカト落としッ!!」



次の瞬間に上空へ飛んだ薫は自由落下に念力で力を上乗せして大佐に迫るが、それも難無く足を掴まれる。



「な・・・!?」

「二人を相手に――――――互角デスか!?」

「ダメだ!!援護なしでは―――――」



皆本が手助けしようと銃を構えた。



「FREEZE!動くな!!」

「!?」

「手出し無用デス!」

「ケン・・・・・・・!!なんのマネだ!?」



皆本の頭に銃を押し当てるケン。



「落ち着きなよ、皆本。ケンの言う通りにして。」

「だけど、なまえッ!」

「いざとなれば、僕が動くから。」



ダムの柵に寄り掛かり、薫を眺めながらなまえきっぱりと言った。



「もう忘れたのかね?エスパーの実力は気合いで変化するんだろう?こういう時にどうするか――――」

「「!!」」

「えーと・・・マッチ売りの少女は―――――!!」

「かわいそう!!」

「かわいそうなのは君らだ。」



力いっぱい叫んだ二人に、大佐は呆れた表情で言った。



「こんな話を知っているかね!?あるところにメアリーという女の子がいました!!」

「うっ、ま・・・また・・・・・・!!」

「メアリー?ワタシと同じ名前デスか?」





『メアリーは胸が小さいのが悲しかったので、』


『NASAのメディカルスタッフに頼んで改造手術をしてもらいました――――――』


『その結果・・・・・・・・・』


『今では、巨乳エスパーとして働いているのです。』
























「マジかああーーーーーーッ!!だまされたーーーー!!」

「デタラメでーす!!そしてセクシャルハラスメントーーーーーー!!」

ブッ、殺ーす!!

KILL YOU!!



涙を流し鬼のように目を吊り上げた二人は、我を忘れて怒る。

二人の怒りに反応するように、背後には大きく水が上がっていた。



「(なんだ!?ワザとテンションを上げた!?)」

「・・・・・そろそろ、かな」

「え、おい!なまえ!?」



不思議そうな皆本をよそに、なまえは三人の元へと飛んで行った。



「(二人ともバカだが・・・すばらしい。これならいける。)」

「ばーか、」





――バシィイッ





「君は、」



薫達の攻撃から大佐を守るように立ち塞がるなまえ。

大佐は驚きに目を見開いた。



「どけよ!なまえッ!!」

「ストップ!!薫ちゃん!!」



そのままなまえごと攻撃しようとした薫へ皆本達の元に現れた紫穂は叫んだ。



「ばーちゃん、見えるか!?」



葵は呼吸機を着けた年老いた女性に話し掛ける。



「お・・・おお・・・・・・・・・!!沈んでいた村が・・・・・!!」

「誰?」

「大佐の家を調べに行ったら、思念波のメッセージがあったの。この人を病院から連れてきてほしいって・・・」



皆本に抱き着く紫穂と葵。

ケンは静かに口を開いた。



「大佐の恩人なのだそうデス。ゴメンナサイ、ワタシ知ってて協力してマシタ。」

「ど・・・どういうこと!?」



驚きに目を開く薫。

なまえに庇われたまま、大佐はゆっくりと話し始めた。



「彼女は・・・病気で、もう、長くないのだ。最後に、ダムの底に沈んだ故郷を見たいというのでな。」

「それをかなえるために僕たちが巻き込まれたわけだよ。」



沈んでいた村を見て感動する女性を横目で見るなまえ。



『ありがとうグリシャムさん・・・・!!なんてなつかしいの・・・・』



「戦時中、爆撃機の乗員だった私は、この近くに墜落した。負傷していた私をかくまって看病してくれたのが彼女だったのだ。彼女の国を焼き払った敵兵なのに・・・・・私はその恩に報いたかった。」

「な・・・なんで・・・・・・・」

「打ち明けてくれなかったデスかー!?」



ぷるぷると震え、泣き出す薫とメアリー。

なまえはそれにそっとため息をついた。



「それは・・・・・・この話をすると・・・・・・・・君らのパワーが下がるからだ。」



薫とメアリーの支えを失い勢いよく流れてきた水を、一人だけ瞬間移動で避けたなまえは上空で悲しそうな目で女性を見つめていた。












(過ぎ行く時は無情ねと)(誰かが呟く)

2018.01.22

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