女の子だったら思うよね

「「「「メチャクチャ流行りのっ!オ・ン・ナのっ・・・子ーーーーン!」」」」

「「「「見つめちゃいやーん。チュルチュルしちゃーう!」」」」



メアリーと共に某名曲を熱唱する薫と紫穂と葵。

四人とも上機嫌だ。



「L・O・V・Eチルドレーン!!」

「あ、このケーキ美味しい。」

「ヘイ、スンマセーン!!ビールとウーロン茶追加ネー!!」



ステージで歌う四人を写真に撮る局長。

ただ呆然と四人をソファーから見る皆本。

追加の注文をするケン。

グリシャム大佐にカラオケを教える柏木。

大佐の隣でケーキを食べるなまえ。



「もっと飲むネーミナモトー!!今日は合衆国のオゴリデース!!「カラオーケ」「セッターイ」ドモアリガトーーーー!!」

「そりゃどーも。しかし・・・・・・・・・・なんでまた?」



上機嫌に迫って来たケンに苦笑いする皆本。

皆本の言葉に反応したのは大佐だった。



「・・・・・!?私の無許可離隊をモミ消してくれたのは君らではないのかね?」

「え・・・!?」

「失踪したのは反エスパー団体の誘拐だったと、報告書の提出が・・・・・あなた方バベルの工作ではないのですか?」

「!!」

「存じませんわ。そんな工作をすれば、私や局長の耳に入らないはずが・・・・・」

「では誰が・・・・?米軍相手にここまでやれるのは君たちだろうと思っていたが・・・・・・」

「(これにはきちんとした組織と複数の高超度超能力が必要だったはず―――――・・・・・・・・!!まさか・・・薫やなまえのためにあいつが・・・?いや、しかし、それだけでこんなことをするか・・・・?)」



兵部を脳裏に浮かべ、思考に埋もれて行く皆本。



「皆本、」

「なんだいなまえ?」

「後は頑張ってね。」

「は?」



酷く同情したようななまえの目に、皆本は戸惑う。

しかし、皆本が引き止める前になまえは瞬間移動してしまっていた。

皆本は知らない、大佐の歌によりこの部屋が涙に埋もれることを。


































「京介も酔狂なことをしたね。」

「そうかい?僕だって少しくらいは過去を懐かしむさ。」



別に京介に言ったわけじゃないのに、と心で呟くなまえ。

振り返れば、にこやかに手をふる兵部が居た。

こうして彼は皆本や薫達の目を避けてなまえに会いにくるのだ。
しかも突然。
もう急に背後に現れても驚きもしない。



「嘘吐き。」

「なんとでも。」

「不二子ちゃんが起きないからって。」

「・・・・・・姉さ―――不二子さんは関係ないだろ。」



不二子、という名前が出た途端に苦々しい表情になる兵部。

片足を立て、そこに自分の顎をのせなまえはポツリと呟いた。



「もうすぐだからね。不二子ちゃんが起きるの。」

「・・・・・・言っていいのかい?」



自分に有利な情報を零したのを驚いているのか兵部は思わず尋ね返した。



「別に。ただ――――少し、昔を思い出しただけ。」



ただの独り言だよ、なまえはそう小さく言った。
































「おはよ。」

「はよー!!」



賑やかな朝の小学校。

下駄箱を開けた薫は一枚の封筒を取り出した。



「!!」

「お。ラブレターやん?」

「ふーん。可愛い子じゃない」

「本当だ。」



薫の下駄箱に有ったラブレターを透視した紫穂。

横から触って透視るなまえ。



「あたしんとこ来るの、女子ばっか・・・・・・!!」

「ええやん、あんたオッサン趣味やんか?」

「趣味はオッサンでもれっきとした女子なんだよ!!レズっ気もロリっ気もねーよ!!このさじ加減わかんねーかな!!」

「?ようわからん。」



朗らかに言う葵に薫は怒鳴った。



「小学生じゃ男子はまだ発情期前だしな〜〜〜〜〜あー、つまら・・・・・・」

「6年生と5年生。こっちは新顔やな。」

「も〜〜〜クツが入らないじゃない〜!!」



葵の下駄箱にどさっと詰まれたラブレターが。

紫穂にいたっては下駄箱に入り切らない量のラブレターが入っていた。



「こ・・・・・こいつら歩く成長ホルモン!!」

「まぁまぁ薫。ここに何もない人物が居るんだし気にしない方がいいよ。」

「なまえ・・・・・・・お前は無くて当然だ。」



悲しげに笑ったなまえの肩を軽く叩く薫。



「な、なんで!?」

「なんでって・・・・それはあたし達が――――――」

「「「頑張ってるから。」」」

「・・・・訳わかんない。」



なまえは肩を下ろした。
































「ふーん。でもなんか、わかるなそれ。」

「明石さんたち、四人ともちょっと他と雰囲気が違うもんね。大人っぽいってゆーか・・・・・・・・」

「!あたしも!?」



どこと無く嬉しそうな表情をする薫。



「うん!明石さんカッコイイ」

「男らしくて・・・・・!!」

「お願い、少しは女子として見て!?悪いとこは直すから!!」

「(・・・・薫には暫く無理な気がする。)」



きゃーきゃーと黄色い悲鳴をあげる、ちさと達に薫は困り顔だ。



「私たち、今まで周りが大人ばっかりだったから・・・・それだけよ。」

「それだけちゃうやろ。ウチはあんたほど人の心の闇に通じてへんもん。」

「あら?超度2じゃ他人の心なんか雰囲気しか読めないのよ。ね、ちさとちゃん。」



ガッと右手で葵の顔面をわしづかみながら、紫穂は微笑んだ。



「(なんだろう?何かどす黒いものを感じる?)でも・・・・・・今は誰ともつきあう気ないんでしょう?」

「そりゃそーよ。野上さんや三宮さんから見たら、小学生の男子なんか―――――」

「おおッ!!レアカード!!「道楽コレクション」最強の「花咲ガニ」!!すっげー!!」



甲殻王者 カニキングと大きくプリントされたカードを見て喜ぶ東野。



「あたしたちが見てもガキなんだもん。」

「そう?」

「(僕は京介とかの方がよっぽど餓鬼だと思うけどな)」



ちさとが小さく呟いてから、紫穂と葵は口を開いた。



「あら、別にそんなことないわよ。」

「うん。可愛いくて趣味が合うたらつきあうで。」

「きゃー、マジ!?」

「・・・・・・・・」



色めき立つちさと達を薫は呆然と眺めていた。






























「いや、しかし、実際は・・・・こいつらの基準、高そうだからな。」

「なんの話?」

「朝のラブレターじゃない?」

「薫、見つかるから手ェで持って!」



給食のワゴンを念動力で押しながら薫は言った。



「あ。」

「!!」

「男友達ができて・・・なんてまだまだ――――ぶっ!?」

「だ、大丈夫、薫!?」



ワゴンに突撃した薫をなまえは心配そうに見た。



「えっと・・・・・・三宮さん。」

「手紙、読んでもらえましたか、野上さん。」



緊張した面持ちで現れた二人の男の子。

葵に話しかけた少年は黒髪の眼鏡で如何にも真面目と言った雰囲気だ。

一方、紫穂に話しかけた少年は色素が薄いのか髪は茶色くハキハキとしてスポーツが得意そうだ。



「うん。」

「読んだけど?」

「それじゃ・・・日曜日、試合観に来てくれる!?」

「別にいいよ。」



紫穂と葵、それぞれ満更でもなさそうに話している。



「あの・・・一緒にプラネタリウムに―――――――」

「わーーー連れてってくれるのん?」



良い雰囲気な四人。



「あれ!?(男友達、いきなり発生!?)」

「・・・・・ドンマイ、薫。」



いきなり外野になってしまった薫に、なまえは静かに肩に手を置いた。




























「あれっ!?皆本、今日出勤なの?」

「日曜なのに珍しいじゃん。」

「ああ、まーな。」



スーツの上着を着ながら答える皆本。



「ダメーーーッ!!行っちゃヤダーーーー!!」



軽い返事の皆本に、薫は決死の表情で叫んだ。



「あたし一人で二人組のデートは監視できねーじゃん!?」

「あ、僕は人数に入ってないんだ。」

「監視なんかせんでいい!!」



がっと皆本に抱き着く薫。



「なんでよ!?未成年が保護者なしでデートよ!?条例違反じゃんよーーーー!!」

「そんな条例はない!!」

「でもでもっ。チーム存亡の危機・・・・・・!!」

「・・・・・・・・」



ついにはテーブルに突っ伏して泣く薫に皆本は呆れ顔だ。



「あのな―――――キミらがそんなことでダメになるわけないだろ?」



ぽんと優しく薫の頭に置かれる皆本の手。

そして皆本はぶつぶつと文句を言いながらマンションを後にした。



「ねぇ薫。僕、皆本の言うことも正しいと思うよ?」

「なまえ、わかってる・・・・・。でもッ、あたしたちずっと三人で・・・・特別でッ!!」

「うん。」

「・・・・・・こんなのつまんないッ!!つまんないのーーッ!!」




うっすらと涙を滲ませながら、リビングを出て行った薫。




「・・・・・・僕も馬鹿だなぁ、寂しいなら寂しいって言えばいいのに。(あの三人の中に入りたい、だなんてさ)」



ひっそりと溜息をついたなまえを知るのは誰一人として居なかった。

2018.01.22

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