完全なものなんてない
「と、このように―――――超能力といってもその強さはいろいろです。本当に強力なエスパーは、とっても貴重なんですね。」
B.A.B.E.L.と胸のあたりに大きくロゴがプリントされているTシャツを着た女性は言った。
学校の教室、黒板を背にして立つ女性はおそらく先生であろう。
「今後、エスパーは増えていくといわれています。この力を才能のひとつと考えて、仲良くできますね、みなさん!」
どうやら授業中のようで、内容はエスパーについてのようだ。
「えーーーっ!!やだよ、そんなの!エスパーって、心読んだり遠くから物を動かしたりすんだぜ!?」
静かに授業を受けていたクラスのうち、男子の一人がそう声を上げた。
赤毛の女の子が、即座に苛立ちを表すかのように体を硬くした。
「マジキモいじゃん!そんなのと一緒に遊んだりできな―――――ガッガガガ・・・・・ッ、ガ!!ガガーーーーーーーッ!!」
「エスパーで・・・・・・悪かったなあーーーーー!!」
「わあああーーーーーッ!!あのバカッ!!」
『終了ッ!!シュミレーション終了ーーーーーーッ!!』
エスパーの悪口を言った男の子はそれ聞いて怒った赤毛の子―――薫によって破壊される。
どうやらロボットだったようだ。
「薫ーーーーーっ!!「クラスメート」を殺すなと、何回言わせる気だああっ!!」
「・・・・だって、腹立つんだもん!」
「腹が立ったら殺していいのか!?え!?お前はなんだ!?野生のトラか何かか!?」
「本当にやったわけじゃないんだからいーじゃん。」
「本当にやられてたまるかああーーーーーーッ!!」
泣きなんがら叫ぶ皆本に対して薫はごきゅごきゅと例の怪しいドリンクを飲んでいた。
「頼むよ・・・・・・!!君たちを普通の学校へ通わせるには、政府や教育機関を納得させないと・・・・・・そのためのシュミレーションなのに、こんなデータが外にもれたらおしまいだぞ!?」
「君だって学校へは行きたいって言ってたじゃないか!紫穂と葵となまえはもうクリアしてんだぞ!?」
「わかってるけど・・・・・あーいう時つい思っちゃうんだよね。あたしは・・・・他のエスパーの分まで怒るべきじゃないかなって。紫穂や葵とちがって、あたしには直接戦う力があるんだもん・・・・!!」
「・・・・!!バカ言うな、暴力では何も―――――」
「薫−−−!」
「あ、なまえーー!!」
「えっとねー僕、予知したことが・・・・・あ。」
「!?」
――バチン!!
――ブッ
薫たちのもとになまえが現れたと思うと、突如部屋に停電が起こった。
「?停電・・・・?」
「どうしたんです?」
「わかりません、皆本主任!メインコンピュータが急にダウンして――」
「テロだよ。」
「え?」
――ヴン!!
メインの画面に○並と無数に表示される。
『超能力支援研究局の諸君に告ぐ!!我々は、超能力解析団体「普通の人々」であるッ!!』
「!!ウイルス・・・・・!?サイバーテロですッ!!」
「「普通の人々」・・・・・!!エスパーを毛嫌いしてる、過激派か!!」
『我が国にエスパーは不要であるッ!!安易にまじわり力を利用することは人類文明の破滅を生むのだ!!エスパーを追放せよッ!!』
先程、薫のシュミレーションで使用していたロボットが動きだす。
『エスパー追放ッ!!』と言いながらわらわらとなまえ達の方へ向ってくる。
「じょ・・・・上等だ、この野郎ッ!!てめーらまとめてーーーーーーー」
「待てーーーーーっ!!やめろ、このロボットが全部でいくらすると思う!?カッとなったら奴らの思う坪だぞ!ノセられて被害を増やすよーなマネは・・・・・・」
「大丈夫、どうせ壊れるから。」
「え?なまえ、そんな不吉なこと言わないでくれ!!君の言うことは説得力があるんだから!」
必死に薫を引き留める皆本になまえはぼそっと言う。
「!」
「黙れ、差別主義者どもォーーーーーーーーーーッ!!ウチの可愛いエスパーに!!国の宝になんてことをーーーー!!死ねオラッ!!死ねオラッ!!」
なまえ達の元に突然現れた局長は、ロボットを素手で壊し、涙を流し叫びながら銃で破壊していく。
「ね?」
「すげぇ、なまえの言う通りだな。」
「局長・・・・・」
呆れ返る皆本へ柏木が走ってくる。
「皆本さんこれを・・・・・!!」
「柏木一尉!!」
「ワクチンプログラムです!急がせたんですがまにあわなくて―――――すみません!」
「え・・・・?前もってしってたんですか!?ならこうなる前に―――」
「・・・・・そう簡単には、いかんのだ、皆本!予知能力とはそういうものでネ・・・・・!!「チルドレン」を緊急招集したまえッ!!」
「・・・・?そういえばなまえは超度7の予知能力者じゃないのか?」
局長の言葉に疑問を抱いたのか、薫はそう口にした。
疑問に答えようと皆本は口を開く。
「いや、ちゃんとなまえも予知能力者だよ。超度7のね。ただ・・・・」
「あのね、薫。予知は言えばいいってものでもないんだよ。言わない方がいいものもあるし、誰かに伝えてしまうことで予知が変わって大変なことになる場合があるんだよ。」
「・・・・・・よくわかんねぇ。」
「それにね、予知は催眠とかと違ってすごく疲れるからあまり使わないんだ、」
なまえの言葉が理解できなかったのか、首をかしげる薫になまえは少し寂しそうに笑った。
沖縄県某所――――
政府所有 無人島
「うわーーーーーっ!!」
「きれーー」
「ひゃっほーーーー!!」
「わーすごい。」
スクール水着を着たチルドレン達は物凄くテンションが上がっていた、なまえをのぞいて。
何故かなまえだけ台詞が棒読みだった。
「えいっ!」
「わっ!?なんで僕まで・・・・・わーーーっ!!」
葵のテレポートで一気に上空まで上がったなまえ達と皆本は地球の法則に従い、海へと真っ逆さまに落ちる。
「薫ちゃん、アレやって、アレ!!」
「おーしっ!!サイコ・・・・水切り低空飛行ーーーーーッ!!」
「まっ待て、ゴフルアァーーーッ!!うしろッ!!うしろひきずって・・・・・ブゴゴガブッ!!」
薫のサイコキネシスによって水面ぎりぎりを飛ぶチルドレン。
だが、皆本はお尻から引きずられる形でズボンもパンツも脱げかけだった。
「え・・・・・!?この島に―――――超度7の予知能力者が!?」
「そうだ!彼の予知は百発百中!だが、それが問題でネ。・・・・・予知したことを防げないのだ!!今回のテロのようにネ・・・・!」
ぼろぼろの皆本はタオルで顔を拭きながら、局長の言葉に驚いた。
そんな皆本に局長は煙草をふかしながら答える。
「ちょ・・・・・ちょっと待ってください!!日本の「超度7」はあのコたち四人だけのはずじゃ―――――」
「その通り。彼は人間ではない。」
「皆本ーーーーッ!!見て見てーーーーっ!!」
「イルカやでっ!!イルカーーー!!」
ザバッと音をたてて、イルカとチルドレンは海から跳び上がった。
「紹介しょう!太平洋戦争中の実験で生まれたただ一頭のエスパー・ドルフィン!伊―九号中尉だ!!」
「・・・・・(いーじいちゃんだったのか)」
『階級ハ無用ダ、桐壷クン!戦争ハモウ終ワッタノダ!ヨロシク、諸君!』
「!!テレパシー・・・・・!!これじゃ食えない!?」
「食う気やったんかい!?」
『伊号ト呼ンデクレタマエ!』
「彼の予知した悲劇を未然にくいとめる――――それが今回の任務だ!」
「悲劇―――――?どんな予知なんですか?」
皆本は伊号に尋ねるが、伊号は何故か黙ったままだった。
「ホラ、皆本クン!お話していただきたいなら魚をさしあげて!」
「・・・・・・・」
局長に言われて呆れながらも、皆本は伊号に魚を投げた。
『ソレハ―――――私自身ノ死ダ!コレガ・・・・・ソノいめーじダヨ。』
皆本達の頭に伊号が銃で撃たれる映像が流れる。
「・・・・・・!!銃で撃たれる・・・・・!?そういう予知のようですね・・・・・?」
「それでこんな無人島に・・・・?」
「うむ。チルドレンが警備をすれば銃は不要。我々がここにいることは極秘。銃撃などありえんはずだ。」
「ヘリのパイロットは大丈夫やろな?」
「出発前に透視したわ。心配いらない。」
「離陸するまで目的地は知らせなかったからネ。ここを知っているのは柏木クンだけだヨ。」
「どーです、中尉!!今度こそ未来は変えられますっ!!」
『運命二対シテ万全ナドアリアンヨ、桐壷クン。ソレニ、私ハモウ十分二長ク生キタ・・・・・・・・散ッテ行ッタ戦友タチノ元ヘ行クノモ悪クナイ。』
可愛らしいビニールプールの中に移った伊号は、戦友であるシロイルカやネズミイルカ、マダライルカ、カマイルカ、ニン〇ンギョラ〇などを思い浮かべる。
みんなから少し離れた場所で膝を抱えていたなまえは伊号の言葉にびくっと肩を震わせた。
『EPS動物実験制限条約ノタメ、モハヤ任務ニモツケズ――――野性ノいるかノ群レニモナジメズ、私ニハ居場所モナイノダ。』
「・・・・・!!」
「・・・・・(いーじーちゃん、)」
なまえは諦めたような伊号の台詞に一人で、膝を抱え自分をぎゅっと抱きしめ何かにじっと堪えていた。
「あきらめんなっ!!じじい!!」
薫は伊号に西瓜をサイコキネシスで投げ付けた。
西瓜は伊号に当たり、ばかっと当たって砕ける。
「それじゃなんのための超能力か、わかんねーじゃんかよっ!!あたしは戦うからな!!」
「せや!局長も言うてたで!超能力は人を幸せにするためにあるて・・・・・・・!!」
「寿命で死ぬならともかく、殺されるなんて許すわけにはいかないわ。」
力強く言い放った薫、葵、紫穂になまえは抱えていた膝に埋めていた顔をゆるゆると上げる。
「その通りだ!!皆本、ESPリミッター解除!!ここからはフルパワーだ!!」
「了解!!「ザ・チルドレン」・・・・解禁!!」
「運命なんか変わるに決まってんだろ!?あたしたちがいるんだから!!」
『・・・・・』
仁王立ちするチルドレンを伊号となまえは静かに眺めていた。