ひび割れた運命

「・・・・ここって、薫たちの通う学校じゃないですか!?」

「ここの、屋上が予知の現場よ。・・・・ただ、気掛かりなことがひとつだけ、」



暗闇を照明によって照らす。
黒一色のグランドに光が差し込んできた。

明るくなったのを確認してから、不二子はノートパソコンを取り出し起動させる。



「今回のね、予知イメージに・・・・・「ザ・チルドレン」らしき姿があるのよ、」



再生していた映像を止め、ここ、と不二子は小さな3人の人影を指した。

皆本は不二子の指へと視線をずらして、首を傾げる。



「あの、もし3人の人影が薫たちだとしたら、こっちの・・・・髪の長い女性は誰なんです?」



皆本が画面上で指したのは3人と対立するように立つ1人の女性だった。

不二子はそれに、浮かべていた笑みを引っ込めた。

鋭い瞳に、皆本は僅かに動揺する。



「これはね、なまえよ。」

「なまえって、彼女は兵部と居るはずでは・・・・・!?」

「そのはずね、でも今日のお昼過ぎに・・・何者かがチルドレンに接触したらしいの。」



次に画面に現れたのは、昼間の4人の会話の場面だった。



「会話の内容は聞き取れなかったわ。おそらく、精神感応能力を使ったんでしょう。」

「なまえに、精神感応能力はなかったはずですが・・・!?」

「・・・・・・姿と共に、能力や超度も上がったんでしょうね。」



目を閉じる不二子に皆本は口を閉じた。


































「・・・・私ね、ザ・チルドレンを、辞める。」

「「「なっ!?」」」

「だから今日はね、3人にはさようならを言いに来たの、」

「どうしてっ!!」



悲しそうに笑うなまえに、同じくらい悲しそうな薫が叫ぶ。



「・・・・不二子ちゃんの元に居てはダメなんだよ。それじゃ、京介とは、居られない。」

「兵部少佐は犯罪者なのよっ!?」

「それに、変態でロリコンやて!!」

「・・・・変態とロリコンなのは昔からだけど、・・・・・京介が犯罪者になった原因は僕にもあるんだよ。」



紫穂と葵の声にも、なまえはより悲壮な表情を見せるだけだった。

ただ、意志を変える気がないことは、読み取れる。



「どうしても、行く気なんやな?」

「もう、離れたくない。これは・・・・またとない機会なの!!今を逃したら絶対また離れなきゃいけなくなる!!」

「なら・・・・私たちだって、なまえちゃんを兵部少佐には渡したくないわっ!」



臨戦体制になる二人。

しかし薫だけは未だに構えていない。



「なまえ・・・・!!」

「・・・・・後には戻れない。変態でもロリコンでも犯罪者でも、僕にとっては・・・・・大切な人だから。」

「・・・・なまえがそー言うやったらしゃーないな。」

「でも、そう簡単には行かせてあげられないわ。」



切なげに眉を寄せるなまえに、葵と紫穂は静かに走り出す。



「葵!紫穂!」

「手加減なんて、・・・・する余裕ないからね。」



なまえは念動能力で加速しながら葵と紫穂へと向かった。

2018.01.22

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