私とわたし

「これでもくらえっ!」

「葵の得意技なんて、お見通しだよっ!!」



なまえを埋めようとした葵の瞬間移動能力は、なまえの瞬間移動能力によって中和される。



「葵ちゃんばかりじゃないわよっ!」

「甘いよっ!!」

「きゃっ!!」



紫穂が銃でなまえを狙うが、なまえの念動力によって起きた突風によって紫穂は飛ばされる。



「紫穂っ!このっ・・・・!!」

「諦めがっ!悪いよっ!」



大きな音と共に、地面へと叩きつけられる薫たち。



「きゃっ!?」

「いっ!?」

「紫穂と葵に何すんだ!なまえ!!」

「・・・・・たかが瞬間移動能力者と接触感応能力者が、複合能力者の僕に勝てる訳ないじゃないか。」



薫の念動能力でなんとか起き上がる3人を、なまえは至極冷めた目で見た。

薫は、ゆっくりと拳に力を込めていく。



「・・・・なまえ!!」

「僕の能力は、もうほとんどが超度7だよ。念動能力だって・・・・負けないんだから!!」



手の平をお互いに向けてかざし、純粋な力をぶつけ合う。

能力の発動によって光が放たれ、風が屋上を吹き荒れ、瓦礫が飛び交う。



「あたし達、仲間だろ!?なぁ、なまえ!!」

「・・・・・・特別は、僕にとって、特別は―――――京介だけなのっ!!」



ドクンと、なまえの中で何かが爆ぜた。






























「管理官、屋上が・・・・・!!」

「・・・・・薫ちゃんか、なまえかはわからないけれど。」

「超能力の、暴走。」



口にした皆本も信じられないと言った様子で屋上を眺めた。

半壊、7割くらい破壊されている屋上と、まばゆい光を放つ人影が1つ。


































「!危ないっ!!」

「きゃっ!!」

「大丈夫か!?葵、紫穂!!」



なまえの念動力によってとばされた紫穂と葵を引き寄せ、崩れかけた地面に着地する薫。



「ありがとう薫ちゃん。」

「ありがとう薫。」

「あぁ、でも、なまえが――――――」



薫の目線には、力を解放し続けるなまえ。

なまえはもはや意識もないまま、周りにある物を拒絶していた。



「薫、まだそんなこと・・・・!!」

「薫ちゃん、あの子は私たちと居ることよりも少佐と居ることを望んだのよ!?」

「・・・・最初の頃のあいつ、全然笑わなかったじゃん?」



声を荒げる二人とは反対に、薫は小さく話し始めた。



「一緒に居る内に笑うようになって、笑うなまえが当たり前になってたのに、・・・・最近また、笑わなくなったじゃん、」

「「・・・・・・」」

「もしなまえがさ、あたしたちに言えなくて苦しんでもがいてるなら、」



握っていた紫穂と葵の手を強く握る薫。

その瞳には、真っ直ぐになまえを見ていた。



「助けてあげたいんだ、」



































「・・・・・どうして泣いているの?」



10歳ほどの少女が尋ねる。



「・・・・苦しい、から。」



15歳ほどの女の子は答えた。



「お姉ちゃん、なんで元気ないの?」



少女は、体育座りで顔の見えない女の子を覗き込んだ。



「大事な物が、いっぱいになっちゃったの、・・・・・望んでは、いけなかったのに・・・・・っ!」



唇を噛み締めボロボロと涙を零す女の子に、少女はギュッと抱き着いた。

離れようとしていた心を集めるように。



「元気がないときは、こーするといいってきょーすけも、不二子おねーさまも言ってたよ。」

「・・・・・、」

「・・・・お姉ちゃんは、私なんでしょう?」



女の子は、伏せていた顔を上げて、ゆっくりと少女を目に映した。



「あの子たちとも一緒に居たいんだよね?」

「薫、紫穂、葵・・・・・」

「お姉ちゃん、あの子たちの気持ち、今ならわかるよね?」








『あたしたち、仲間だろ!戻って来いよ!』


『なまえ!』


『なまえちゃん!』








「ほら、呼んでるよ。」



にっこりと、笑って空を指す少女、なまえに。

吊られて女の子、なまえも笑った。



「(僕は、僕・・・・・超能力者だ。その気になれば、政府なんて関係ない!僕は、僕らは、どこへでも行けるし、なんにでもなれる!!)」

2018.01.22

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