伸ばしては戻す手

「なまえ!!!また居なくなるなんて・・・許さないわよ!!」



力を暴走させるなまえへと、近づこうとする不二子。

しかし、なまえは自分の体を抱き耳を塞いで不二子を拒絶する。
防ぎ切れなかったなまえの念動力が不二子を傷つけてゆく。



「管理官!!」

「!ばーちゃん!!」



その背中を、薫は強く押した。

不二子に、笑みが浮かぶ。



「なまえ!あなたを想う人は沢山いるわっ!以前とは、・・・・あの時とは、違うのよ!!」

「力を抑えるんだ!なまえ!」

「戻ってきーやなまえ!」

「お願いよなまえちゃん!」

「あたしたち、仲間だろ!!なまえー!!」



皆の叫びが響く。

叫びは、なまえに届いた。



「・・・・あ、あああああ゙ああ゙!!」



急速になまえが光を放ち出す。

不二子たちは片手で顔を庇い、あまりの眩しさに目を細めた。



「「「「「なまえ!!」」」」」



光が、夜を照らした。










































「皆、ごめんね。」



清潔なベッドに横たわりながらなまえは心底申し訳なさそうな声を出した。

なまえのいるベッドを囲むようにして、賢木 皆本 薫 紫穂 葵 不二子は立っている。



「・・・戻って来たからいいけど、あれは立派な離反行為よ?わかってたでしょう、なまえ」

「・・・・・そうだね、」



眉を下げて力無く笑うなまえ。



「まぁいいじゃんか、ばーちゃん。」

「そうよ!」

「うちらは此処になまえがおればそれでえーもん!」



薫が上からなまえの首に抱き着くと、紫穂と葵も同じようになまえの腕に抱き着いていく。

なまえは一瞬だけ驚いた表情を見せてから、緩く笑った。



「こら、おまえら!なまえは病人だぜ?丁寧に扱え!」

「短期間にあれだけ伸びたり縮んだんだ・・・・・。身体も痛くなるだろ。」



笑う賢木と皆本に、不二子の表情からも力が抜けた。



「てかもったいねーよな!あんなに胸あったのに・・・。まぁ今のなまえも好きだけどな!」

「・・・・薫のポイントはそこなの?」



病室の雰囲気は穏やかだ。

皆本は、スーツの袖をめくり腕時計を見た。



「・・・そろそろ行くか。定期検診の時間だしな。」

「「「えー!?!?」」」

「なまえは病人なんだぞ!?休ませてやらないと!」

「皆本の言う通りだ。ほら!出てく出てく!」

「「「やだー!!」」」



皆本に引っ張られて部屋の外へと薫たちは消えてゆく。

と、思ったら病室のドアから顔だけだして薫は笑った。



「なまえー!また後でなっ!」

「うちら待ってるで!」

「何かあったらすぐ無線で呼ぶのよ。」

「うん、」



なまえは口元に微笑みを置いた。



「じゃあ、俺も仕事あるし戻るわ。大人しくしてろよ?」

「あのね、・・・・・・・ありがとう、賢木先生。」

「・・・・・・ガキは大人しく甘えときゃーいいんだよ。」



なまえの頭に置いた手で、静かに撫でて賢木は照れ臭そうに笑った。

名残惜しそうになまえの頭を軽く叩いて賢木もまた、病室を去って行った。



「・・・・・。」



病室には、静寂が訪れた。



「・・・不二子も、そろそろ行くわね、」

「あ、う、ん。あの・・・・・ごめんね、色々と、」

「・・・・・いいわ。だって、戻って来てくれたんだもの、」



きゅ、となまえを抱きしめた不二子。

なまえは首に回った腕にそっと手をそえた。



「不二子ちゃん・・・・」

「何か困ったら、すぐに不二子に言うのよ?」

「?大丈夫だよ、皆優しいから・・・・」



小さく首を傾げたなまえに不二子も少し微笑んで、部屋をあとにした。



「・・・・・京介、」

「・・・なんだい?」



不二子の去った方向を見ながらのなまえの呼びかけに兵部は返事をかけた。

若干、機嫌は悪そうだが。



「わざわざ外に隠れてまでどうしたの?」

「・・・・・君って本当馬鹿だよな、」

「は、!?」



至近距離で兵部に睨まれてなまえは口を閉じた。
お互いに吐息がかかりそうな距離。



「・・・・もう少しくらい、僕のところに居たって、よかったじゃないか、」

「京介・・・・、」



零れた兵部の本音に、なまえは嬉しそうに笑った。

兵部の頬に伸ばされるなまえの手。
愛しそうに、その手は兵部に触れる。



「僕ね、気付いたの。・・・・・京介と、居たい。」

「なまえ、」

「でも、同じくらい・・・・薫、紫穂、葵たちと、一緒に居たいんだ。」



兵部はなまえの言葉に嬉しそうに笑うが、続けられた言葉に再び目を細めた。



「・・・・それに、京介は呼べば会えるだろう?」



はにかむなまえに兵部もつられて笑った。



「(「一緒に居たい」って言われたのは嬉しいけど、やっぱりまだ1番じゃないのか・・・・・)」



病室の壁に寄り掛かり、そっとため息をつく兵部を見て、なまえは子供みたいに無邪気に笑った。



「(まだ行けないよ。どうせ僕がバベルに居られる間は限られてるんだもの。それに―――――)」

「なまえ?」

「僕の居場所は、君の隣だから――――」

「・・・・・・・・。(敵わないな、全く。)」

2018.01.22

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