変わったはずのそれ



「・・・・・片づけもしないで!!ったく!!あっ、紫穂め、野菜全部残しやがって・・・・・!!って局長、なまえはどこに?夕食も食べてませんでしたけど・・・・・」



ぐっすりと寝ているチルドレンの夕食の片付けをしながら、皆本は愚痴を零し、姿の見えないなまえを心配する。



「なまえクンなら、心配しなくてもいい。寝かせてやりたまえ、皆本。このコたちだけが頼りなんだからネ。」

「それに、伊号中尉の予知はこれまでに三千件以上――――あらゆる努力にもかかわらず、その全てが実現してしまっているのだ。今回だけは成功するなどと、ムシのいいことは考えんほうがいい。今夜だけでもいい夢心地を――――」

「局長・・・・・・!!僕は信じてますよ。このコたちが、未来を変える力を・・・!!」



煙草を吸いながら疲れたように言う局長に、チルドレンをみながら皆本は静かに力強く言った。



『誰カガ――――ソウ言ッテクレルノヲ待ッテイタ。君ニナラ託セルダロウ・・・・・・』

「!中尉・・・・!?」

『私ノ死ナド、実ハドウデモイイノダ。本当ハ・・・・モウヒトツ重大ナ予知ガアル。デキレバソレハ防ギタイ。』

「!?なんのことです!?」

『見タマエ!!』

「!!えっ・・・・・!?」



伊号がそう言った後に、皆本の頭にはある一つの映像が飛び込んできた。










―――




――


















破壊された多くの建物によって上がる煙。

そんな中、一人の男と女が対峙している。

男は多くの傷を負いながらも、女の背中に向けて銃を向けながら叫ぶ。



      クイーン・オブ・カタストロフィー
「動くなッ、“破壊の女王”!!いや・・・・・薫ッ!!」



男の警告に女――――薫は男のほうを向いた。


ブースター
「熱線銃でこの距離なら・・・確実に殺れるね。撃てよ、皆本!でも――――あたしがいなくなっても何も変わらない。他の大勢のエスパーたちは、戦いをやめないよ。」



そう寂しそうな顔で男・・・・皆本に言う薫。

皆本は必死に薫を説得しようとする。



「・・・・・・・・!!なら・・・みんなをとめてくれ!!頼む!!「エスパー」だ、「普通」だって―――――こんな戦いが何を生むっていうんだ!?」

『薫!?どこや!?敵が核兵器を使う気や!!』

「!」

『この街はもうあかん!!早く・・・・・あッ・・・・!!』



薫に葵から無線で連絡がはいるが、それも途切れてしまう。



「もう・・・・無理だよ。」



弱々しく言った薫の背後で爆発が起きる。

そして薫は目に涙を光らせながら、皆本に手を翳しながら言った。



「知ってる?皆本・・・・・あたしさ―――――」

「やめろ・・・・・・・!!薫ーーーーーー!!」

「大好きだったよ。愛してる。」



辺りに響く銃声と供に、薫の体からは力が抜けていった。
















――



―――













「・・・・・未来は、変わらない。それが・・・・運命ならば。」



島の上空から、皆本を見ながらなまえは小さく呟いた。

なまえの瞳はただ無機質で、彼女の顔に浮かぶのは諦めに似たものだった。



    ・・・
「そう、あの時のように―――――(超度7の予知は絶対に外れない。だから、僕には何も――――出来ないんだ)」



ぎゅっと膝を抱え、目に涙を浮かべるなまえ。


























『君・・・・リー・・・・・せか・・い・を・・・・』



 銃――――



『じょ・・・だ・・・・ね・・・・・隊長』





 銃声―――――狂気――――









血まみれの――――――――




















『ぼ・・・く・・ら・は―――――化け物なのか・・・・・・!!』
















「っ!?や・・・・めて・・・・・・お願い、僕は・・・・・・僕はっ!!」



とめどなく溢れるなまえの涙。

なまえは頭を抱えて、苦渋の表情を浮かべた。



「そんなに泣かないで欲しいな、」

「だ・・・・・れ」



突如後ろから聞こえた声。

なまえは、ゆっくりと振り返った。

そこにいたのは白髪の、学生服―――所謂学ランを着た青年と少年の境目ぐらいの男、だった。



「誰って言われてもなー。君がよく知っているんじゃないかい?」

「僕・・・・・が?」

      ブライド・オブ・ブラット
「そうだよ、 血の花嫁 ―――――僕のなまえ、」

「血の――――はな、よめ?」



疑問を含んだなまえの言葉に、青年はニコーと笑った。

そして、青年は口を開いた。



「僕はね、君のことはよく知っている。でも・・・・・君は宣言通り、自分に強い催眠を掛けたみたいだね。」

「宣言・・・・?強い催眠・・・・・?」



複雑そうな表情でいう青年になまえは首を傾げるばかりだった。



「今は、わからなくてもいい。そのうち――――嫌でもわかる時がくるから、それじゃまたね、僕らのブライド――――――」



青年はなまえの顎を上げ、そっと頬に唇を寄せて――消えた。



「・・・テレポート・・・・・・彼も複合能力者、」



なまえは暫く青年の消えた後を見つめていた。



「・・・・?コレは・・・・・・」



なまえは、自分の胸元で、光ってる何かを見付けた。

古い、ロケットだった。


「まさか、さっきの彼が・・・・・・、」



手にとってみるが、ロケットは、けっして開かなかった。

開かないそれに、何時かと同じように、なまえの脳裏に誰が映っては――――消えた。



































ガァッ!!という派手な音をたて、ヘリが爆発する。



「よしッ!!ヘリは破壊した!!もう逃げられんぞ・・・・・!!エスパーびいきの桐壷ッ!!」




超能力排斥団体
「普通の人々」テロ実行部隊




「このチャンスを逃すなッ!!訓練通り殺れッ!!」



そう口々に叫びながら島へ侵入してくる人々は、何故かラーメン屋でよく見るような割烹着姿だった。



「「普通の人々」が――――私の暗殺を計画!?」

『ヘリの整備員が彼らのスパイでした!局長を狙う目的で、発信機をとりつけたと・・・・・・!!』



柏木の連絡に驚く局長に対し、チルドレン達はやる気マンマンだ。



「アホなテロリストや!ウチらがおるのも知らんと・・・・」

「ああ!!返り討ちにしてやるぜ!!」

「いかん!!君らは中尉と沖へ行くんだ!!」

「しかし、局長・・・・・・!!」

「私の死は予知されておらん!危ないのは中尉の方だヨ!!彼の予知をくつがえすことを他の全てに最優先させたまえ!」

「・・・・・・・・!!」



局長の言葉に反応する皆本。

それで皆本の顔つきが変わる。



「沖にはじーちゃんだけ行ってもらやーいーじゃん!」

「水中に潜れば撃たれる心配ないんじゃない?」



不満そうなチルドレンに皆本は命令する。



「・・・・・・イルカの潜水時間は長くても10分程度だ。撃たれる可能性をゼロにするには、君たちの護衛が必要だ。行け!!命令だ!!何があっても予知をくいとめろ!!それが絶対に可能だと証明するんだ!!」

「・・・・・・・・・!?」



余裕のない皆本の言葉に訝しげにする薫と葵。

そして、紫穂だけは何かに気付いようだった。

「大丈夫!我々にも武器はある!スタン・グレネードと麻酔銃だがネ。」

「後、僕ね。」

「「「「なまえッ!!」」」」



皆本達の元に突然テレポートしたなまえ。

そんななまえに皆本と薫は声を掛ける。



「今まで何処に・・・・!!」

「心配したんだぜ?」

「・・・・・心配かけたなら、ごめん。ここには・・・・・・・辛い思い出が多いんだ。」



なまえは、目をそっと伏せ寂しそうに笑った。








―――



――











「・・・・・何か変じゃね?皆本の奴。なまえもだけどさ。」

「局長はともかく、皆本はん、優等生タイプやし戦えんかいな。」

「・・・・・・・・ねぇ、伊号のおじーちゃん。皆本さんと何、話したの?」



じとりと紫穂に睨まれびくつく伊号。



『!?ナンノコトカネ?』

「皆本さんにさわって透視たら――――記憶と思考の一部にプロテクトがかかって読めなくなっていたわ。あれ、人間のできることじゃないわ。率直でやさしい皆本さんにはなおさらよ。」



自分の手を見ながら冷たい声を出す紫穂に戸惑うが。



『・・・・・・・・・・!!ア、とびうおハッケン!!』

「はぐらかした!?」

「いや、ただケモノなだけかも?」






海面に上がった獲物に飛びつく伊号に三人は冷めた目線を送った。
























「パイロットは捕らえたが・・・・かんじんの桐壷はどこだ!?なぜテントにいない!?」



サングラスを掛けたおばちゃんの割烹着の左胸に“辛楽”と刺繍してある。

苛々と愚痴るおばちゃんに弱々しくおじさんは正論を言った。

ちなみにそのおじさんの左胸にも(以下略)。



「え・・・そりゃ、爆発を見て隠れたんだと・・・・・・ひょっとして考えなしに撃っちゃったんですか!?」

「・・・・・・お義母さんはいつもそう!」

「あ・・・・あたしたちゃ、「普通の人々」なんだよっ!?うっかり愉快な間違いをすることもあるんだよっ!!」



そんなテロリスト達の足元になにかが飛んでくる。

そして、次の瞬間辺りは煙に包まれた。



「テロリストが「普通」とか言うなーーーーーーッ!!」

「きっ、桐壷だッ!!殺せえぇーーーっ!!」

「ぎゃふッ!!うっ撃つなあっ!!サチコさん、あたしを殺す気かいっ!?」



局長が煙に紛れてテロリストに近付き、殴って倒した一人を盾にする。



「・・・いい防弾チョッキを着けているネ。だが・・・・弾丸は はじいても、ナイフは貫通するって知ってるかナ?」

「こ・・・こいつ普通じゃねえーーーっ!!」

「僕も普通じゃないよー」

「内務省をナメるなーーーーっ!!」



なまえはテレポートで集団の中に紛れこみ、局長と共にテロリスト達と戦いはじめる。

そんな局長を遠くから狙い撃とうとしているテロリストがいた。



「桐壷・・・・・・・・!!くたばれ!!エスパーびいきめ!!」

「銃を捨てろッ!!」



テロリストの後方から飛び出してきた皆本。

テロリストも皆本に気付くが、それよりも早く皆本はテロリストに麻酔を命中させる。



「うッ!?」

「店長!?」

「!!」

「貴様もバベルの犬かあッ!!」

「く・・・・・・?あれ?」



皆本に向け、安全+第一というヘルメットを被った工事現場のおじさんは銃を乱射する。

皆本も当たるのを覚悟して、目をつぶるが何も起こらないのを不思議に思って目を開けた。



「!!かっ薫!?」

「やっぱあたしたちいないとダメじゃん!」



皆本の目に飛び込んできたのは目の前でとまっている弾丸と、上空にいる薫だった。



「サイコ――――えーと、ホラあの・・・なんだっけ!?グルグル回ってバターになるやつっ!!」

「そっ、それはちび・・・・・・・ぎゃーーーっ!?」



薫のサイコキネシスによって木の周りをグルグル振り回されるテロリスト。





「とりゃっ!!」



葵のテレポートによって局長やなまえと戦っていたテロリストはかなり上に移される。



「きゃーーーーッ!?」



そしてそのまま地面スレスレまで落下させられる。



「テレポーテーション奥義!寸止めフリーフォール!!これで失神せん奴はおらん!」

「き・・・・君たち!?中尉はどうしたッ!?」

「沖にいるよ!」

「大丈夫よ。数キロ四方に人なんかいなかったわ。」

「な・・・なんてことを・・!!戻れッ!!早く!!」



呆気からんと言ったチルドレンの言葉に皆本は叫ぶ。



「あれ?おじーちゃん!こっちに来るわ?」

「え!?」

『マダカナリ距離ガアルガ―――――船が接近中ダ、桐壷クン!軍艦ノヨウダガ・・・・・・・』

「軍艦・・・・・・?」

「まさか奴らでは・・・」

「その心配はないよ。」



伊号の言葉に表情を曇らせる面々だったが、なまえだけは違った。

なまえが言った途端に、局長の携帯が鳴る。



『ご無事ですか、局長!?』

「!柏木クンか!?」

『独断で申しわけありませんが――――護衛艦に協力を要請しました!そちらに接近してもよろしいですか!?』

『そりゃ丁度よかったヨ・・・・・!!テロリストのために栄倉を借りたいと頼んでくれたまえ!』

「未来・・・・変わったかな?」

「ああ・・・・・!!これでもう襲撃はないだろうからな・・・・!!」



軍艦を目にした薫達の表情は明るかった。

皆本の表情からも緊張の色が消える。

しかし、なまえの表情だけは・・・堅いままだった。

2018.01.17

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