噂のあの子

「ついにっ!!朧さんが来てくれるーーーーーーーー!!エロコメ展開の予感ーーーー!!」



住宅街に響く薫の嬉しそうな声。



「ひゃっほーーーーい!!」




はしゃぐ薫より少し後ろから歩いてくる葵と紫穂。




「皆本はんは一週間くらいって言うてたなー。なんの任務か透視しとけへんかったん、紫穂?」

「なんでもかんでも透視んでちゃ嫌われちゃうでしょ。」




片目を閉じ、紫穂は自慢げに話す。




「皆本さんと私はね、信頼っていう赤い糸で結ばれてるの」

「・・・勝手に言うとき。」




語尾にハートが付きそうな紫穂の口調に、葵は付き合いきれないとばかりに舌を出した。




「わっぷ!!」




葵と話に夢中になっていた紫穂は、立ち止まった薫のランドセルに顔をぶつけた。

赤くなった鼻を押さえ、紫穂は薫に向かい不満を零す。




「何よ、薫ちゃん!?急にとまらないで!」

「どないした?」

「これ・・・何だろう?」



薫は自分の足元を指した。

三人の目はぐったりと地面に俯せに倒れている小動物が写った。

小動物は薫の足位のサイズで、一見するとネズミのようである。



「ネズミにしちゃ変じゃね?」

「つぶれたリスとちゃう?シッポでかいやん?ちょっと透視して?」

「イヤよ!ネズミの死体なんか触りたくないわ!なまえちゃんにお願いしてよ!」

「なまえは今家やろ。」



小動物を覗き込んでいた顔を上げて紫穂に頼む葵。

しかし紫穂は余程嫌なのか、眉間にシワを寄せて一本下がる。



「まだ生きてるよ?それにホラ、何この皮!?ムササビとかモモンガとか、そっち系?」



薫ね念動力で小動物が目線くらいまで持ち上がる。

猫の様なシッポが垂れ下がり、片手が持ち上がると広がるのは布のような皮膚。



「かわいい・・・・・・!!透視せて透視せて!!」

「ネズミとおなじよーなもんやけどな。」



先程と打って変わり、生き生きと人差し指を小動物の額に当てる紫穂。

葵は呆れたようにツッコむ。



「・・・?変ね、よく透視めない。でも、おなかすいてるみたい。何か食べさせなきゃ。」

「よしっ、ウチに連れてこーぜ!!なまえが好きそーだし!」

「そうね。」

「せやな!あいつ小動物好きやもんな!」








































「高出力熱線銃―――――銃の効かない危険なエスパーを殺すために開発された・・・・別名、「エスパー・ハンター」。10年後に皆本が薫を撃つ運命の銃・・・・・か。苦しんでるんだろーな皆本。」



なまえは顔の上に開いていたファイルを閉じた。
瞬間移動能力でそれを寝室まで飛ばす。



「(そろそろ薫たちが学校から帰ってくる。・・・「桃太郎」を連れて。)」



寝転がっていたソファーから起き上がるとなまえは適当な箱を探しだす。

薫たちの連れてくる小動物を置くためだ。



「・・・・・今回は、本当に何もしない。(皆が悩む事に意味があるんだから――――――)」

「ただいまーーっ!!」

「!(流れは止まらないね、)」



小さくため息をつき、少し疲れたようになまえは笑った。



「お帰り。」

「あ!帰ってたんやな!」

「ただいま、なまえちゃん。で、―――――――どこに行ってたの?」

「え、あ?」



先陣を切ってリビングに入ってくる薫。

なまえを見つけるなり、嬉しそうに笑う葵。

静かに笑う紫穂はじりじりとなまえに近寄った。
気のせいではなく紫穂の笑顔が黒い。



「え、とー。」

「皆本さん居ないからって朝から学校サボってどこ行っていたのかしら?」

「・・・・(言えない。予知で京介が心配になって行ってたなんて絶対言えない。)」



ダラダラと汗を流して、段々と顔が青くなりながら紫穂から視線を逸らして地面へと向けるなまえ。



「・・・・・モモンガの餌買ってくる!」

「・・・ちっ、」

「・・・えっと、紫穂?」

「・・・何もそこまでせぇへんでも――――――」



瞬間移動能力でリビングから姿を消したなまえに紫穂は静かに舌打ちをした。

それに呆れたような薫と葵。



「馬鹿ねぇ、なまえちゃんに男ができたのかもしれないのよ!?」

「「なまえに男ぉ!?」」

「っどどどこの馬の骨やソイツ!?」

「あたしのなまえにあんなことやそんなことしてるってゆーのか!?」



ぎゃーぎゃーと騒ぎ立てる葵と薫。

紫穂は黙って推量する。



「(・・・・まぁ、なまえちゃんの性格とかからいって、絶対小学生じゃないと思うのよねぇ。・・・・だいたい蕾見管理官と同じ位の年齢って言ってたし。そーなると、兵部少佐しか思い付かないんだけど。)」

2018.01.22

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