蓋をしたのは私
「・・・・超能力は魔法じゃないからね。ちょっと痛むよ。」
「・・・・・っ!!」
「折れた骨はつながったはずだ。もう大丈夫。炎症が引くにはもう少しかかるけどね。もっとも・・・・なまえが治療していたなら、その心配もないだろうけど。」
「・・・・・・、」
明の胸元から手を離し、兵部はゆっくり立ち上がった。
傍にいたなまえは兵部を追って顔をあげた。
その顔に、少しだけ安堵を滲ませて。
「きっ・・・・・・貴様っ!!何しに――――――」
「ごあいさつだな―――――――動けない君たちを見かねて、助けに来てやったんじゃないか。なまえは動く気はないみたいだしね。」
兵部はなまえを見て、にっこりと笑う。
「ほら、君。これで―――――――」
兵部は瞬間移動能力で手元に農作業用の鍬を取り出した。
差し出された方の明は冷や汗で顔を青くした。
「・・・・・・いや、これで。2人を掘り出してやりな。」
鍬を一端引っ込めた兵部は、次に金槌をだして明に差し出した。
「誰だ、あんた!?」
「あとでこいつに聞くといい。」
皆本の顔の近くで笑う兵部。
「でも急いだ方がいいぜ。モタモタしてると、君が女王にしてやれないことを僕がするのを見損なうからね。」
「!待って京介!!」
高笑いと共に瞬間移動してゆく兵部。
なまえは慌てて立ち上がると、兵部を追うようにして瞬間移動した。
「追ってきたのかい?いけない子だね。」
「行かないで京介!!薫の代わりに自分が犠牲になる気なんだろう!?」
兵部の腕を掴み引きとめるなまえ。
空中で立ち止まった兵部になまえは詰め寄る。
先程とは打って変わり、焦りで一杯になって。
「・・・・君もあのモモンガに自分を重ねているんだろう?」
「!!」
「君の境遇を知っていればその位想像できるさ。」
兵部は、なまえの頭にそっと自分の手を乗せた。
愛しそうに、微笑みながら。
「心配しなくたって平気さ。僕は死ぬつもりなんてない。」
「でもっ!!」
なまえは食い下がった。
その表情には様々な感情が渦巻いている。
本当はなまえいつもこうやって感情を出したいのかもしれない。
兵部は切なげに眉を下げて、微笑む。
「・・・・・・暫く眠っているといい。大丈夫、全部僕に任せろ。」
「、!あ・・・・・」
兵部の瞳から目の逸らせないなまえ。
それが催眠能力だと気づく頃には、もうなまえは目を閉じていた。
なまえは体から力が抜けて、兵部へと倒れこむ。
「きょ・・・・うす・・・け」
「ガードが甘いよ、なまえ・・・・、」
しっかりと、兵部はなまえを抱きしめた。
「いっ・・・ちゃ、いや・・・・・」
それはぽつりと、兵部の肩を濡らした。
『許すことはできないよな。全部ぶつけるまではさ。』
『・・・・・・僕も、はじめは自分を人間だと思ってたよ。』
『だからみんなのために、本土で待つなまえのために戦って・・・・・国や仲間を信じていたから―――――――』
『それが間違いだってわかった日のことを、僕は忘れない。』
『君と同じようにね。』
『そして――――――「女王」。』
『いずれ君にも同じことが起こる。』
『僕らをこんなに傷つける連中を――――――』
『僕は心の底から憎んでいるんだ。』
・・・・なまえ、なのかい?
そうで・・そうだよ。・・・髪、切ってみたんだ。
もったいないって不二子は言ったのよ!?でも切るって言ってきかないから――――――
どうして―――――!それに、その口調!?
あとね、わた・・僕、衛生兵としてだけど・・・・・陸軍特務超能部隊に正式に入隊したんだ。
!なんで・・・・!?
それは私も聞いてないわよ!?
・・・・待ってるだけじゃ、嫌なんだ。
なまえ・・・・!!
僕だって、お国や・・・・不二子お姉さまや、京介のお役に立ちたい。
伊号のおじいちゃん、
ナンダイ?
最近、予知ができるみたいなんだ、
・・・・・・!!
部隊の皆が、敵地で戦っていて――――――でも、戦況が悪化してゆく。・・・・軍部は「神風特攻隊」を結成するよね?
・・・・・・アア。
・・・・それでも、さらに僕らは追い詰められてゆく。
・・・・・・・・。
この島も、もうすぐおしまいだ。・・・・・おじいちゃんも、おじいちゃんの仲間も、予知えているんだろ?
なまえ。
怖いんだ、僕じゃ、超感覚者の僕じゃ、なにもできない・・・・・・・
・・・・・蓋ヲシタマエ、方法ハ・・・・ソレシカナイ
隊長、お話が・・・・・
なんだいなまえくん。
・・・・・僕、伊号のおじいちゃんたちのような、予知ができるようになって、
とうとう開花したのか!?
この頃になってですが・・・。
よくやったな。
、はい。
ではなまえくん。君には――――――――通常任務から離れて、この先は研究所で過ごしてもらうよ。
たい、ちょう・・・・?
君には、この国の命運を背負って貰おう。最近ドクイツ帝国と合同の超能力研究所をつくってね。ちょうど超能力者の協力を必要としていたんだ。これは光栄なことなんだよ、なまえくん。
・・・・・隊長、!・・・・それって僕に実験体になれってことですか!?
国や・・・蕾見くん、そして――――京介くんの助けになりたいんだろう?
!!、・・・・・そう、ですけど・・・
君一人が頑張ってくれれば、陸軍特務超能力部隊の皆の負担が減るんだよ。
僕が、頑張れば・・・・・
そうだ。君の予知さえあれば、戦況を覆すことなんて簡単なんだ。・・・・・行ってくれるね?
・・・・・・はい、
いい子だ、なまえくん―――――――
・・・・・京介!
なんだい姉さん、そんなに慌てて
なまえが、隊長のもとに嫁ぐことになったって、お父様が・・・・!!
なまえが、?
お国からの命令で、!!もう、隊長のお屋敷の外へはでれないって!!
なんで、・・・・・・・なまえが!
花嫁は捧げられ
その身を赤へと染める
何が正しいのか――――
何が正しくないのか――――
花嫁は問う
僕らは正しい、
そうでなければ、僕らはなんだというのか―――
所詮、正しさなど誰も解りはしないのだ