不安が現実に
「超度7の複合能力者にしては遅い目覚めじゃないか。」
「・・・・・・夢見が悪かったの。だいたい、僕は君を助けに来た訳じゃないよ。」
ニヤニヤと笑う兵部に、不機嫌そうになまえは返した。
その目は不二子を見たままだ。
「・・・・・どういうことなまえ?」
「・・・・二人の喧嘩を止めに来ただけ。それ以下でもそれ以上でもない。」
鋭い目で不二子はなまえを見据える。
淡泊ななまえの表情。
「罰なら後で受けるよ。・・・・それで済めばだけど。」
「ふざ!!」
反論しようとした不二子の口を、黒い物体が覆う。
同じように首に巻き付いた物体に両手も拘束され、そしてそのままビルへとつけられる。
「きゃーーーーーーっ!?」
「困りますね、少佐。」
「あんたオレらのボスなんだからさーーーーーーーー」
「少しは立場を考えて自重なさって?」
兵部となまえの前に現れた2人の男と1人の女。
最初に口を開いたのは長い黒髪の渋い20代の男である。
男の長い髪の先は硬質化している。
どうやら不二子を攻撃したのはこの男らしい。
次に喋ったのは10代の青年だ。
茶色の天パが特徴的である。
念動能力者なのか、彼の横には体を九の字に曲げて痛みを堪えているマッスルが浮いている。
最後に話し出したのは20代くらいの若い女。
色素の薄い髪を優雅になびかせている。
その目にはサングラスを掛けて、スレンダーな体を惜し気もなく強調する服を着ている。
「・・・・・お前らにも言っておくぞ超能力支援研究局(バベル)!少佐はもう10年前とは違う。手を出せば我々が黙っていない。」
「兵部の仲間か・・・・!!」
叩きつけられたビルから悔しそうに不二子は男を睨む。
「別に大丈夫だったんだけどなあ。なまえが助けにきてくれたし。」
「・・・・だから、違うって言ってる。」
口では悪態をついても、なまえは兵部の両頬に手を添えて治癒能力を使う。
兵部は嬉しそうに笑った。
「血の花嫁。」
「その名で僕を呼ばないでくれる?・・・潰すよ。」
「落ち着けよ、なまえ。」
黒髪の男の呼びかけに、なまえは盛大な殺気で答えた。
男は殺気に圧されたのか顔を青くして口を閉ざす。
「あっ!なにこの動物!?」
雰囲気を読めないのか、天パの青年が声をあげる。
その人差し指の先には兵部の頭に乗る桃太郎がいる。
「また拾ってきちまったんすか!?ったく、子供だの動物だの・・・・」
「たいして戦力にならないのにいっつも・・・・!!」
呆れたように続いて叱る女。
なまえは治療が終わったのか兵部から手を離す。
「ならないってこたないさ。君らだって拾ったときは小さかったぜ?」
男の方を向いて、兵部は3人と出会った時の身長だろうか、自分の腰ぐらいと男の頭の高さで手を置いた。
「・・・・そういう話はあとにしてください!」
男は恥ずかしそうに少しだけ顔を赤くした。
女が、青年と男を連れて瞬間移動していく。
「じゃーね、タレ乳のオバサン」
「ぬわ・・・!!」
女の語尾にハートのつきそうな厭味に不二子がキレる。
兵部はなまえへと向き直り、その頬へ唇を寄せた。
「きょ、」
「ひょーぶぅー!!」
「・・・またな、なまえ。・・・・悪いね、不二子さん!」
兵部の唇に触れられた部分を押さえて顔を赤く染めて。
そんななまえへと小さく囁いてから、兵部は不二子へと顔を向け笑顔で瞬間移動した。
「くそっ・・・・・・・!!あいつら、顔は覚えたわよ!」
不二子は男の黒い物質を薙ぎ払い、ビルの床から立ち上がる。
そして兵部の台詞を思い出して顔を歪ませた。
「皆本クンなら必ず応えてくれるわ・・・!!女のカンはまちがいないんだからっ!!」
拳を握りしめて不二子は夜空へと叫んだ。
宙に浮いていたなまえはゆっくりと不二子の元へ降りてくる。
「・・・・どういうつもりなの、なまえ!!」
「・・・・罰なら受けるよ。」
「貴女、自分の立場がわかってないの!?」
声を荒げる不二子。
なまえの表情が苦しげなものに変わる。
「わかってるつもりだよ。・・・僕の身元は政府極秘の超能力者。本来なら"表"の仕事にだって許されない身分。勿論、"命令に従わない"なんて論外だし。」
「なら、何故!?」
「・・・・・政府がダメなら、京介のところへ行けばいいんだもん。」
なまえは、微かに笑った。
不二子がみるみると青ざめてゆく。
「ま、今回のことは反省してるよ。京介を逃がしたし。あと、皆本たち埋めたの僕だし。」
「あんたね〜〜〜〜〜〜っ!!」
逃亡者
(僕らは似た者同士だ)(幸せになれよ桃太郎)