G I F T
「!タケシ・・・・・!!」
タケシの父親は橋の下で頑張るタケシを見つけた。
紫穂はタケシの父親へと話しかける。
「彼が橋を支えてくれてるおかげで、薫ちゃんも葵ちゃんも救助活動に専念できたの。でなきゃもっと大変なことになってたわ。」
「あいつが・・・・」
タケシの父親は純粋に驚いているようだった。
「て、あれなまえちゃんじゃない?」
「本当や。何してんやろ?」
「・・・・・・(気のせいか?今、一瞬だけタケシくんの周りだけ光っていたような、)」
「?皆本さん?」
皆本はいぶかしげにタケシの肩に手を置いているなまえを見つめる。
紫穂は不思議そうに皆本を見上げた。
「よし!がんばったね!代わるよ!」
トラックの処理を終えた薫がタケシへと声をかけた。
薫の念動力によりタケシの体が橋より高く浮かぶ。
タケシは体の力を抜いて一息ついた。
「よかった・・・!!もう限界だっ―――――た!?」
ふと橋へと目を向けたタケシは橋の上に自分の父親が居るのを見つけた。
「!!と、父さん・・・・・!!」
「「・・・・・・・」」
タケシは汗を垂らしながら父親を見つめ、父親も戸惑いの眼差しでタケシを見つめた。
「そーいやなんで現場になまえ居たんだ?確か今日一日は本部で任務じゃなかったっけ。」
「早く終わったんだ、大半が予知課の仕事だったから。」
首を傾げる薫になまえは笑いながら言う。
薫はふーんと呟き、ソファーへと体を沈めた。
なまえはちらりとそちらを見てから、何故だか嬉しそうに笑う。
同じようになまえの横で笑っていた紫穂が、不意になまえの袖を軽く引っ張った。
「?紫穂?」
ちょいちょいと手招きをされてなまえは紫穂に耳を寄せる。
「なまえちゃん、・・・・皆本さんと喧嘩でもしたの?」
「あー、・・・なんていうか―――――、それは・・・・・」
なまえは困ったように頬をかく。
紫穂は眉を下げて口元を緩めて、仕方ないないとでも言いたげにひとつ息を吐いた。
「詳しくは聞かないけど・・・・・、皆本さん思い詰めてたみたいだし、話だけでもしてあげたら?」
「・・・・・ありがとう、紫穂。」
「もっと頼りなさいよ?私たちのこと。前にも言ったけど、葵ちゃんも薫ちゃんも貴女のこと心配してるんだから。」
涙を抑えてなまえは紫穂へと笑顔を向けた。
堪らなく嬉しかったのだ。
「うん、」
「(まだ何か隠してそうだけど・・・・・無理に聞き出すよりもなまえちゃんから言ってくれるのを待ったほうがよさそうね。)」
「なにこそこそしてん?」
薫と共になまえたちと向かいのソファーに座る葵が身を乗り出した。
「なんでもないわよ。」
「なんや怪しいな〜。あんたら揃うと恐ろしゅうて嫌やわ。」
「・・・・どういう意味よそれ。」
じとっと半目になる葵の額を紫穂は軽く弾いた。
「いたっ!」
「はは!・・・・悪口とかじゃないから大丈夫だよ葵。」
「せやなくて、最近なまえなんや怒ってるみたいやったから・・・・・紫穂と組んでなんかやるんやないかと。」
もじもじと俯きながら口を開く葵。
なまえは嬉しさに頬を緩めた。
紫穂だけは不機嫌だったが。
「葵ちゃんは私を何だと思ってるのよ。」
なまえは葵が心の中で「腹黒い女」と呟いたのを精神感応能力で聞き取ったが黙っていることにした。
「(・・・・なんで今日こんなに仲悪いんだろ。)」
『こうなってしまったら、話は別だ!!』
『え?』
『今後はエスパーの立場から警鐘を鳴らし、普通人どもから家族を守るッ!』
『と・・・・父さん・・・・・・!!』
『日本一のエスパーになれっ!!タケシ!!』
精一杯の力でタケシを引き寄せて叫ぶタケシの父親。
モニターでタケシ達の様子を見守っていた薫達は思わず叫んだ。
「「「「「ただの親バカだったーっ!!」」」」」
モニターのタケシが幸せそうに笑う顔に、薫はこっそりと涙を浮かべた。
「(・・・でも、よかった・・・)」
「よかったね、薫。」
「なまえ、」
「心配してたんでしょ?」
「・・・・うん、」
こっそりとなまえは薫に囁いた。
「ごめんね皆本、」
「え、?」
皆本は突然のことに唖然とした。
なまえは本当に申し訳なさそうに俯く。
「この間さ、叩きつけちゃっただろ?・・・・ほとんど八つ当たりだったからさ、」
「・・・・いや、僕も悪かったよ。」
「え?」
「賢木に怒られたんだ。・・・・薫たちには後で渡そうと思ってたんだけど、」
皆本は懐から、両手で包めるくらいのプレゼントボックスを取り出した。
「なにこれ、」
「僕が改良を加えた新しいリミッターだよ。開けてごらん。」
皆本からボックスを受けると、なまえはゆっくりと丁寧に開けはじめた。
その表情は戸惑いに包まれている。
ボックスの中には星と月のネックレスが入っていた。
「一応君の念波特性を解析して以前よりも改良を重ねたから、パワーは出しやすくなってるはずだ。」
「・・・・あり、がとう、」
なまえはそっと大事そうにネックレスを握った。
「一つ、聞いてもいいかい?」
「・・・この前言った政府を許せないって話のこと?」
「、そうだ。」
ゆっくりと頷く皆本。
なまえは、真っ直ぐに皆本を見上げる。
薄暗い瞳と皆本は対面した。
「僕が・・・「僕ら」が終戦直前に裏切りにあったのは知ってるよね?」
「ああ。」
「・・・・僕らを「処理した」のは仲間のはずだった、同じ隊の普通人だ。」
「!」
なまえは脳裏をよぎる記憶から目を逸らす。
震える体を自分で抱きしめた。
「僕らを「化け物」なんて、一度も呼んでなかったのに・・・・。政府が言ったんだ。みんな指令通りに・・・!」
「・・・・なまえ、」
「・・・・政府はいつだって信用できない。」
ゆっくりと顔を上げて皆本と向き合うなまえ。
「僕は、僕らは、いつだって政府に利用されてきた。・・・・見方を変えれば、「国の役に立っている」んだろうけど。」
なまえは口元を歪めた。
「超能力なんて、欲しくなかったよ。」
なまえの本音だった。
あまりにも哀しいそれに、皆本は暫く口を開けられなかった。
「・・・・ごめん、忘れて。」
「・・・・僕は、超能力を「ギフト」だと考えてる。」
「え、(隊長の、・・・・・)」
なまえの目が揺れた。
「神から授けられた能力を生かさなくちゃ罰が当たると思わないかい?」
「・・・・・・・・」
「君は、そのままでいいんだよ。」
なまえは涙が止まらなかった。
苦しいのも、悲しいのも、全部全部、ずっと押し込めてきたのだ。
なまえは皆本の足にしがみつく。
皆本は少し躊躇ってから、屈んでなまえの背中に手を回した。
ギフト・オブ・チルドレン
(少しだけ、救われたような気がしたんだ)(ありがとう、)