真面目な人は怒ると怖いのです

「だーかーらー!!このさいはっきりさせなさいよーーーー!!」



不二子は高笑いをしながら叫ぶ。

完全に酔っているようだ。



「コメリカ時代にさあっ、いたんでしょ、オンナ!!吐きなさいよおーーーーーーーーっ。」

「ちょっ・・・酔うの早ッ!カンベンしてくださいよーっ!!」



背中から不二子にしがみつかれて、床でもがく皆本。

必死に不二子から逃れようとするが酔っ払いにしては強い力でしがみついているので離せない。



「とめんでええの?」



側に居た葵は呆れながら口を開く。



「うーんでも・・・・」

「もーちょいききたくね?」

「ま、こーなるだろうーと思ってはいたが・・・・・・・」



薫や紫穂はどうやら助ける気がないようである。

局長はこっそりため息をついた。



「柏木さんたすけてーーーー」

「・・・・・・」



困り果てた皆本の視線は柏木に向けられた。



「・・・・で、どうなの?どんな彼女が?あたしもききたーい!!」



皆本へと振り返った柏木の顔は顔が赤くなり目も焦点が定まっていない。

完全にできあがっていた。

そしてそのまま立ち上がると皆本の胸倉を掴みあげた。



「吐けーっ!!」



笑いながら皆本を揺する柏木に局長は驚きを隠せないようだった。



「か・・・・柏木クン!?キミまでが・・・・!!」

「あーーーー俺ちょっと知ってますよ。」



惨事を見かねたのか、賢木が突然話し出す。



「!!お・・・おい!?」

「何!?教えてっ!!」



興味津々と言った様子でみな、賢木の元へと近づいていく。



「いや、大学の研究室に、すんげーきれいなコがいたんですけど――――――――」



不二子と柏木から解放された皆本が突然立ち上がり、テーブルへと目を凝らした。

そして視線がビール瓶へと止まりおもむろにそれを掴んだ。



「ある日こいつと・・・・んがッ!!」



掴んだビール瓶で、皆本は渾身の力と共に賢木の後頭部を殴った。

凄まじい音と同時に飛び散る破片とビール。



「・・・・飲みすぎは良くないっスよね。」

「そ・・・・そうねっ!?」

「そうかもっ!!」



静かに怒る皆本の般若のような表情に一同は気圧される。

冷や汗が止まらないようだ。



「・・・・まだ飲む気ですか?」

「う・・・・ううんっ!」

「おフロ行こっか、おフロ!」

「ね!!」

「じゃ、僕らはもう寝ます。」



それだけ言うと皆本は気絶した賢木の足を掴み、そのまま引きずりながら無言で部屋を出ていった。



「お・・・・おフロはこっちでーす。」

「わ・・・・わーい、入浴シーンだネっ!?」

「・・・・」



なんとか場の雰囲気を和ませようと不二子と薫は声を出す。

その傍で、紫穂は静かに皆本を見つめていた。







































『なまえくんが風邪引いたって本当かい!?』


『だだ大丈夫か!?』


『志賀さん、芥さん、・・・・・病人が居るんで静かに入りましょうね。』


『ドアを勢いよく開けるなんて非常識だわ!』


『『すみませんでした。』』


『そ、それでなまえくんは・・・・・』


『今のところは・・・・・』


『なまえが風邪ってホントか!?』


『こ、こらハジメ!病人が居るんだから静かにしろ!』


『宿木さんの言う通りです。犬神さん。静かにしましょうね。』


『宇津見さんの笑顔が怖い・・・・。』


『なんでうちの隊ってこんな人ばかりなのかしら・・・・。』


『なまえはんが風邪って・・・・!』


『いい加減にしなさい!!』


『不二子さん、やり過ぎだよ!菊池さん壁に埋まってる!!』


『不二子はんは、厳しいでごわす・・・・。』


『なんや、結局みんな揃ってるやないか。』


『あ、ナツミさん。』


『結局みんななまえくんが心配なんだね。』


『なまえくんなら今、薬を飲んだので呼吸は落ち着いていますよ。』


『・・・・きょー、すけ、くん、』


『あ、なまえ。』


『皆さんが五月蝿いから起きてしまったじゃない!!』


『『『『『すみません。』』』』』


『あれ・・・、みなさん、どーしたんですか、?』


『なまえが心配で見舞い来たんや。』


『ナツミさん、』


『起こしてしまって悪かった。』


『志賀さん、』


『むむ無理はしないほ方がい、良い。』


『芥さん、』


『肉食べるか?』


『ハジメさん、』


『肉は違うと思うぞハジメ。・・・ゆっくり寝なよ。』


『宿木さん、』


『熱は大分下がったみたいだけど、もう少し休んだ方が良いよ。』


『宇津見さん、』


『皆なら私が追い出しておくわ!』


『不二子お姉さま、』


『行くわよ!!』


『『『『『『『あ、はい。』』』』』』』


『みなさん、ありがとう、ございました』


『なまえ・・・』


『あと・・・ありがとう、きょーすけくん』


『え、?』


『ずっと、居てくれましたよね、』


『!!』


『きょーすけくんの手、きもちいいです・・・』


『なまえ?』


『ちょっとだけ、』


『・・・・手くらい、いつでもかしてあげるよ、』


『わたし、すごく・・・・しあわせです・・・・・・ずっと、京介くんと・・・・居たいです、』






















「・・・・・・」



明かりの消えた部屋で、一人の少女が起き上がった。



「・・・・きょーすけ、くん?不二子お姉様・・・、」

2018.01.22

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