おやしき
「・・・・・・へ、」
「きゃ・・・・!!!」
「だ、誰だてめぇ!!」
突如現れた少女に呆然としたり驚いたり恐がる面々。
「あ、わ、私が見たのはこの子よ!」
紫穂が顔を青白くさせ、少女を指差す。
全員の目が少女へと向く。
「まさか、ゆ、幽霊!?」
「嘘やん!?」
少女は迫力に圧されたのか、何故か不二子の背後へと瞬間移動した。
「お、お姉様!」
「・・・えっと、もしかして、なまえなの?」
「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」
予想もしなかった不二子の一言に全員の声が重なった。
「ちょって待ってよばーちゃん!」
「なまえの髪は白髪やろ?」
「その子の髪は黒いし、なまえちゃんより随分長いじゃない!」
反論するチルドレン。
不二子はなまえと向かい合い、目線を合わせるためにしゃがむ。
そしてなまえの頬と、頭に触れて透視を始めた。
「やっぱり、なまえだわ!でも―――」
「!この子、なまえちゃんじゃない・・・?」
不二子の一言に、急いでなまえの背中に触れた紫穂は目を見開いた。
「え、なまえなのになまえじゃないってどーゆーこと!?」
「訳わからん!!」
頭を抱える薫と葵。
なまえを透視するため能力に意識を集中させていたほたるが目を開いた。
「なまえちゃん・・・、心が、一つじゃない、?」
「ひとつじゃない、?」
「それって、マンガとかにある多重人格ってこと?」
「せやかて、それと今の外見となんの関係があるん?」
「・・・・!記憶、ですか?」
考えるように黙っていた皆本が突然口を開いた。
不二子はそれにひとつ頷いた。
「心というよりは、記憶と言った方がいいかしらね。この子はおそらく、なまえが1番大事に思ってる時の記憶よ。」
「見た目が変化してるのは催眠能力のせいね。なまえちゃんのイメージが無意識に放出されているのよ。」
「まだなまえちゃん、意識がはっきりしていないようですし、」
「熱があったようなので能力が半ば暴走する感じでこうなったのだと思います。」
不二子、紫穂、ほたる、末摘によって明かされた真実に皆驚きが隠せないようだ。
「そもそもなんで、こんな姿に?前に風邪引いてた時はこんなことなかったけど。」
薫の質問に不二子は少し苦笑した。
「おそらく「別邸(ここ)」だからでしょうね。ここは、なまえにとって思い出が溢れているから。」
「・・・そこの男性が、お屋敷を粉々にしてしまうのをみたから、」
ずっと黙っていたなまえが口を開いた。
不二子の服を握りしめて、大きな目に涙を浮かべて懸命に皆本を睨んでいる。
「お屋敷がないと、「皆さん」が帰ってこないから、なのに!」
「!?」
ぼろぼろと泣き出すなまえに皆本が目に見えて狼狽える。
部屋中の空気が変わった。
「あーあ泣かしちゃった。」という感じに。
皆の視線が皆本へいく。
「なまえ泣かせるなよ!!」
「何しとんの皆本はん!」
「サイテー。」
「いや、まっ! 元はといえば君たちが・・・!」
「女の子なかしちゃダメよ〜皆本クン!それに・・・この別邸はなまえにとって「私達」が帰ってくるのを待ってた場所で、深い思い出がある場所なの。」
不二子はなまえを静かに抱き寄せた。
しゃがんだ不二子の肩になまえは顔をうずめる。
その背中は、年相応に小さかった。
皆本は数回口を開け閉めしてから、息を小さく吐いた。
「・・・悪かった、そんな大切な場所だなんて知らなくて、だから、」
「・・・貴方の気持ちは、聞こえたから、わかります。だから、いいです、もう。」
「・・・・なまえ?」
不二子から離れ皆本の正面に立ったなまえには、子供らしい表情はない。
「この場所は好きだけど、本当は壊してもらったほうが嬉しかったのだけど、ね」
ぐらり、なまえの体が揺れた。
「この場所が私を責めるから・・・・」
倒れたなまえの姿は、見慣れたいつものなまえの姿だった。
なまえはなぜ、好きだと、壊されたくないと言った場所を壊してほしかったと言ったのか。
それの答えを明確に理解するものはいなかった。
そして、帰る前に目覚めたなまえの催眠能力で皆が泣くことになるのはまた別の話。
スキャンダルの館
(この別邸は、僕の過去と)(罪の証だ)