お金は大事だもんね
某都市銀行本店の地下。
3メートルはゆうにありそうな金庫の扉。
丸型のそれは見るからに重量がありそうで、ドアノブもハンドルの形をしていて回すのにも苦労しそうである。
銀行員の男性は扉の横にあるパネルにいくつか数字を入力する。
ピーっとパネルから音が鳴ったのを確認した警備員はハンドルを回し、数人がかりで扉を開ける。
扉の先にはまた扉があり、銀行員はまたパネルに数字を入力して扉を開けた。
「ここが・・・・――――――――――当行の地下金庫室でございます。」
扉の先には一面の金や宝石や札束。
どこもかしこもぎらぎらと光っている。
銀行員に続いて中に入った薫と葵の表情が目に見えて明るくなる。
紫穂となまえも二人ほどではないが辺りを珍しそうに見ている。
「たっ・・・・宝の山やん!?」
「これだけあれば人間の心も買える!?」
「あさましいテンションの上げ方すんなっ!!仕事できたんだぞ!?本部の予知によれば、30分以内にここをエスパー犯罪者が襲う可能性がある。君も予知えたんだろう
、なまえ?」
「そうそうー。」
「だから遊んでるヒマはないぞ!!」
しかしチルドレンはまったくと言っていいほど聞いていなかった。
「2、3枚ガメてもわからへんかも・・・?」とお札を瞬間移動で袋から抜き出す葵。
「金塊ジャグリングーーーーーーーっ!!」と言いながら金塊を念動力でくるくる回す薫。
「これ・・・・持ち主が次々死んでるわ。」と宝石で煌びやかに装飾された王冠を透視する紫穂。
「わーしかも碌な死にかたしてないや。」と紫穂が手に持つ王冠に触れていうなまえ。
「って・・・・遊ぶなーーーーーー!!」
「・・・・・来られてかえって危険な気がしますな。」
「いや、こう見えてこいつら仕事だけはきちんと――――――――」
冷めた目でチルドレンを見る銀行員に皆本は慌てて弁解を始める。
「いや、そうではありません。」
冷や汗をかく皆本に冷静に銀行員は否定をするとポケットからリモコンなようなものを取り出し素早く番号を入力する。
すると天井の一部が開き、ECMが発動。
「だっ!?」
「あれ!?」
「?」
「あ。」
念動力が使えなくなり、薫の頭には金塊が落下。
葵は瞬間移動でお札が出せなくなり、紫穂は読み取れない王冠に首をかしげ、なまえは天井を見上げて嫌そうな顔をした。
4人の様子を見た銀行員が自慢げに口を開く。
「当行の警備は世界的にもトップクラスです。ESP対策も万全ですよ。」
「ECMですね。しかし、敵がECCMを持っている可能性も――――――」
「ムダですな。そもそも中に入れんのですから。この地下金庫はすべての壁面が特殊電磁素材でおおわれています。」
得意げに鼻をならす銀行員。
「その厚さは2メートル。世界最強のエスパーでも、このシールドを突破することはできますまい。」
「それでも・・・予知では80%の確立で―――――超度7のなまえも予知してますし―――――――――」
「防ごうとして、逆に予知を実現してしまうこともあるんでしょう?放っておけば、エスパーなどここに近づけないのに・・・・・現に今、4人もエスパーがいますしね。」
銀行員がチルドレンを睨む。
「政府の指示ですから協力はしますが、万一の場合は責任をとっていただきますよ。」
「「「「むう・・・・!!」」」」
向けられた言葉にチルドレンの口がとがった。
「確かに超能力対策はすごいけど・・・・・・」
「向こうがチームで来たらわからへんで。」
「何?」
「何人かで協力すれば方法はあるかもしれないってこと。」
「ありえませんな。それには、よほどの高超度エスパーを集めた犯罪組織が必要――――――」
「なんていうのは通じないよ。」
「なにを・・・ん!?」
なまえに反論しようとした銀行員は足元から聞こえる音に眉をひそめた。
聞こえてくるのはどうやら突き上げるような音と、男の声のようだ。
徐々に盛り上がる地面に皆、目を見張っている。
「床の材質が変わった!?これはーーーーーーーー」
「ビーッグ・・・マグナァアアーーーーーーーーーーーームッ!!」
「よいしょーーーーっ!!・・・・・・と、あれ!?」
「「パンドラ」の・・・マッスルと澪!?」
材質の変わったを床は破裂して、そこから飛び出したのはマッスル大鎌と澪。
お互いに相手が誰だかわかると表情が険しいものへと変化する。
「ヤダ、バベルじゃない!!」
「なんでこいつらがここにーーーー!!」
「予知されちゃってたみたい!!撤収よ!!撤収ーーーー!!ECCM全開っ!!」
マッスルは手に持っていたアタッシュケースの留め金を外した。
中にあったECCMは鈍い音をたてて起動する。
「逃がすな!!そいつをとりあげろ!」
「了解!!」
「あ・・・!!」
皆本の声に素早く反応した葵は瞬間移動能力でマッスルからアタッシュケースを奪う。
「返せっ、この、」
「むぐっ!」
澪は肘から先を瞬間移動させる。
片手で葵の口を塞ぎ、もう片方でアタッシュケースを奪い返した。
マッスルは澪がアタッシュケースを取り返したのを確認し、攻撃体制に入る。
「ビィィィーーーーーーーーーーッグーーーーーーーーーー」
「サイキックーーーーーーーーーーゴールドラッシュ!」
「金に金がぶつかり合う激痛ーーーーーーーーーッ!!」
技が放たれる前に薫によって飛ばされた金塊の数々によりマッスルは沈んだ。
そうとうな激痛のはずだ。
「私の弾はーーーーー当たるわ。」
「わっ!!」
小型銃を構えた紫穂は接触感応能力で澪のもつアタッシュケースへと弾を命中させた。
ECCMが効果を失い、ECMが作動し超能力が使えなくなる。
「はい、回収ー。」
念のためなまえが瞬間移動で澪からアタッシュケースを奪う。
澪が歯を食いしばった。
「しまった・・・!!でも超能力が使えなくなったのはそっちも同じ・・・!!まだ勝負はーーーーーーーーーーーーーーーーついてないわーーーーーーーっ!!」
ジタバタと暴れる澪の首根っこを皆本はつまみ上げた。
大人と子どもの身長差のため、手足を振り回すが届かない。
葵は思わず呆れたような声を出した。
「往生ぎわ悪っ。」
「薫ちゃん・・・・!?」
「・・・自分まで埋まってどーすんのさ。」
「にゃーーーーーーーーーっ!!?」
マッスルと共に金塊の山に頭から埋もれる薫。
なまえは呆れた表情で薫を救出した。
「サンキュー!ってそっか、なまえはECMがあっても関係ないのか。」
「そうそうー。まあ多少の負荷はあるけどね。・・・って何してるの。」
薫は嬉しそうな顔でブレザーとシャツのあいだにある胸の辺りの隙間に金塊を詰めている。
「あっ、偶然こんなところにお宝がっ!?」
「おおっ!一見ただの巨乳少女にしか見えへん!!」
「そお?」
「無理ありすぎ。」
「コラーーーーーーーーーーッ!!」
澪を説教していた皆本の意識がチルドレンへと向いた。
「お前らは税金で給料もらってるだろ!?僕より高級なクセに!!」
「だって欲しいんだもん!!」
「ウチらの手元にはこづかいしか回ってけぇへんのや!」
皆本は小さく息を吐くと、マッスルの腕を掴んだ。
「とにかく本部へ連行だ・・・!!」
「あン、強引ねッ」
皆本に腕を引かれて顔を赤らめるマッスルに全員がドン引きであった。
「!」
扉へと向かう皆本の目に、次々と閉まる扉が目に入った。
全員の耳に、扉が閉まる音がいやに響いた。