いわゆる密室
「と・・・閉じた!?」
「おい、警備室!?開けたまえ!聞こえんのかね!?」
『ク・・・ククク・・・・・・・!!聞こえてますわ』
聞こえてきたのは女の声だ。
部屋に木霊する不気味な笑い声に全員が天井を見上げた。
銀行員が慌てて声を荒げる。
「!!その声は窓口の中村くん!?」
『「我々はどこにでもいる」こう言えばおわかりになるかしら?』
その言葉にいち早く感づいたのは皆本だ。
「!!反エスパーテロ組織・・・!!「普通の人々」かーーーー!!」
『そう。』
『我々はたまたまこの銀行のメンバーで普通に働いていたメンバー。』
『組織からの指令があれば動き出すってわけ。』
銀行員は現状を受け入れられないのだろう。
みるみる青ざめていく。
「ま・・・・まさか・・・!!君は来月私の仲人で同僚と結婚する予定・・・」
「うわ、なんてフツー。」
あまりの平凡さに紫穂がつぶやく。
窓口の中村は気分がいいのか饒舌だ。
『高超度エスパーをまとめて6匹も始末するチャンス・・・みすみす放っておくテはないのよ。』
『人類のため、多少の犠牲はやむをえない。』
これには唖然としていた薫と澪が騒ぎだす。
「ちょ・・・何勝手なことほざいてんだ!?」
「てめえ!開けろーーーーー!!」
『じゃあね!』
嫌味ったらしい言葉を最後に、スピーカーからはなにも聞こえなくなってしまう。
「あ・・・ちょ、ちょっと!?コラー!!」
銀行員の声にもう返事は返ってこなかった。
全員の顔が段々と青ざめていく。
「と・・・閉じこめ・・・られた・・・!!」
「外部への通信手段は!?」
「全てカットされています!」
皆本の声に応じて警備員がむせんを取り出すが、暫くして震える声で答えた。
「私たちがここに居ることは本部が知ってるわ。」
「誰かきづいて来てくれるやろ?」
「だといいが・・・奴らが手を打ってあると考えた方がいいかもーーーーー」
冷静ながらも焦る皆本たち。
会話の内容に銀行員は堪らないとばかりに叫び出した。
「冗談じゃないぞ!これから週末なんだ!!月曜日まで金庫は開かんしーーーーーーー私らを始末する気なら、ここにはさまざまな装置がーーーーーー」
不意に低く、空気が唸りをあげた。
薫は突然の耳鳴りに眉をひそめる。
気圧が変化した時に起こるあれである。
なまえは換気装置を眺めながら静かに口を開く。
「換気装置が作動したんだよ。あいつら、部屋の空気を抜くつもりだ。」
「!!」
「皆本さん・・・!!」
「ここでウチら超能力使われへんのにーーーーーーーーー!!」
汗を流し、抱きついてきた紫穂と葵を皆本はそっと抱き返した。
銀行員はおもむろに方向転換するとなまえの肩を思いっきり掴んだ。
「君!?さっきECMの元でも超能力が使えると・・・!!「無理だよ。」
「何故・・・!?」
「僕の念動能力の超度は最大瞬間で超度7、加えて壁には日本最高超度の薫でも「単独」で破るのは難しい厚さ2メートルの特殊電磁素材。・・・他の方法を探したほうが賢明だ。」
「ぐ、ぅう、」
銀行員はなまえの言葉に打ちのめされてうな垂れた。
その場の雰囲気を壊すように訝しげに眉を寄せていた澪が口を開いた。
「ねえ、空気がなくなったら何が困るの?」
「えーと・・・息できないじゃん!」
「うん。」
薫の返事からたっぷり一拍明けてから目を見開き飛び上がった。
「あっ!!死んじゃう!?」
「遅っ!?アタマ悪っ!!」
「お前が言うな!!他の誰かが言うならともかくお前は言うなーーーーーーーーーっ!!」
「なにをーーーーっ!!バカのくせに人をバカみたいに言うなーーーーーーっ!!」
「そこ!アタマ悪そーなケンカしない!」
殴る蹴るの小競り合いに突入した二人にマッスルは声をツッコむ。
一息つき、表情を一転して真面目なものへと変えて、マッスルは皆本へ向き直った。
「一時休戦して協力しない?・・・この調子じゃ酸欠になるまであまり時間がないわよ?」
「(確かにそうだが・・・!!「パンドラ」を信用していいのか?)」
皆本は唇を噛みしめる。
相手は犯罪者であり信用できるか怪しいのだ。
だか、今はまた非常事態なのだ、皆本は迷っていた。
「何も迷うことなんかーーーー」
「・・・・・・・・・・・・・」
「ス・・・スキありッ!?」
「んぶ!!」
「「「ぎゃーーーっ!!」」」
マッスルは、皆本にキスをした。
部屋の空気げ凍りつく。
皆ドン引きである。
もちろんチルドレン達は黙ってなどいない。
「ーーーーーーーー!!」
「皆本はん、消毒!!早う消毒してーーーー!!」
「何やってんのよ!?」
「つい・・・・・!!」
「ついじゃねーよ。」
皆本は青ざめたまま口元を抑えてマッスルを足で蹴り飛ばす。
葵は泣き叫びながら皆本にしがみつく。
マッスルを澪の冷めた目が貫いた。
なまえはマッスルに汚い物をみるような目を向けている。
「殺せーーーっ!!」
涙を流しながらマッスルの首を締める薫。
紫穂は皆本の懐からブラスターを取り出しマッスルの脳天へと構えた。
「薫ちゃんどいて。始末するわ。」
「よし、やれっ!!」
「あっ、僕のブラスター!?」
「わーーーー!!待って!落ち着いて!!要するに問題はECMなのよ!!」
流石に普通の銃よりも強力なブラスター、しかも確実に引き金を引くのを躊躇わない紫穂に向けられマッスルは冷や汗を流す。
「あれさえ止められたら、超能力が使えるんじゃなくてっ!?」
「・・・・・!!そうか・・・・!!」
マッスルから天井のECMへと銃口をずらす紫穂。
銀行員は急に慌て始めた。
「あ・・・待て・・・!!」
ーーゴドン!!
眩いほどの光を放ち、ブラスターはECMに命中する。
しかし割れた破片の隙間からハズレと書かれた紙がでてくる。
「!?偽物!?」
「天井のECMは半分がダミーだ!!」
「じゃあ、全部撃てばいいじゃない!」
銀行員の忠告を不機嫌そうに返す紫穂。
銀行員は涙を流したながら食い下がる。
声は半ば悲鳴のようだった。
「ダメだ!!本物はいくつもあるし、ひとつでもそれを壊すとーーー金庫室全体が爆発して生き埋めになる!」
「な・・・、!」
紫穂が引き金を引く直前、なまえが紫穂の手を押し銃口を逸らす。
ブラスターはECMの僅か数センチズレた位置の天井を打った。
「あ、ありがとうなまえちゃん。」
「・・・ちゃんと人の話は聞こうね。」
なまえは額に滲んでいた汗を拭った。
「でも・・・これじや時間の問題やで!?」
「つまり、このままだとーーーーー(本当に死んじゃう・・・・!?)」
「(いや、何かーーーー何か手があるはずだ・・・・!!)」
不安がる葵と薫。
ませてはいるがまだまだ小学生なのだ、死に恐怖を感じるなど当たり前だった。
皆本も僅かにあせっていた。
なまえは周りを見渡してから、数秒壁を睨みつけてからため息をついた。
「どうしたの、なまえちゃん?」
「・・・・あるよ、脱出の方法。」
「な、!?」
なまえの言葉にいち早く反応したのは銀行員だった。
他のメンバーは驚きに目を見開いている。
「ECCM使えばいいんだよ。」
「でもさっき銃で撃っちゃったから使えないんじゃ・・・、」
簡単だと言わんばかりに言うなまえに全員が眉をひそめた。
薫の言う通り、壊れてるECCMではなんの役に立たない。
「・・・いや!!壊れてるのは燃料電池ユニットだけだ!」
「そう。あとは全員の携帯を使えばね。」
ECCMを調べていた皆本は嬉しそうに顔を上げた。
全員に希望が宿る。
「なまえの言う通り、全員の燃料電池をこいつにつなぐ!!5秒でも10秒でもECCMを中和できさえすればーーーーー」
「し・・・しかし・・・まにあうのか・・・!?」
「やるしかないんです!横になって酸欠から脳を守って!!」
不安げに携帯を差し出す銀行員に力強く皆本は叫んだ。
薫と澪はそんな皆本をぼうっと見つめていた。
通気口からは空気が抜けていく音がする。
もうあまり時間は残されていなかった。