彼女たちの任務

「なまえ、」

「・・・なに、皆本。」

「なんで急に、ヒントをくれたんだ?」


皆本は、ECCMへと視線を向けたままそう零した。

普段のなまえであれば、殆どと言っていいほど問題の解決策など教えてなどはくれない。

教える場合も、すぐには理解できないよう遠回しに言うのだ。



「・・・別に、ただーーーーー地下は、嫌いなんだ。」

「地下が?」

「特に、こういう狭くて閉ざされた部屋がさ、」

「・・・・、」



皆本は、チラリとだけなまえを見てまた視線を落とした。



「で?直せそう?」

「ああ、新しい燃料電池への接続ができれば・・・あともう少し・・・!!」



目へと垂れてきた汗を拭う皆本を見て、なまえは「そう」と零すと視線を薫達へと向けた。

なにやら澪がまた騒いでるようだ。



「急いでーーーっ!!マッスルが幻覚見始めたーーーーーーー!!」

「待ってくれ!今ーーーーーーーー!!」



コードとコードを、皆本がくっつける。

バチッという軽い音と共にECCMが、作動する。



「どうだ!?」

「いける・・・!!超能力戻ってる・・・!!」



体を宙に浮かばせた薫の表情が歓喜に染まる。

薫はそのまま右手をかざし、いくつかドアを吹き飛ばす。

しかし、壁だけがひび割れを起こすだけで一向に壊れる気配がない。



「く・・・!!なんだ、このカベ!?」

「電磁壁ね。素材が念力を吸収してる・・・!!」

「あんたらどうやってこれ抜けてきたん!?」

「一度にはムリだから、少しずつ金属にかえてじわじわっとーーーー」

「そんなヒマねーよ!どうする!?」



全員に緊迫した空気が流れ出す。

皆本は懐から携帯を取り出した。



「新しくつけたブースターを使う!!サイコキネシスの念波が一番単純なんだ!だからーーーー他の3人のパワーを電気的に上のせすることは、技術的に可能ーーーーーーーー!!」

「!!」

「・・・・!!」

「よっしゃ、薫!!ウチらのパワー受けとり!」

「ふ・・・わ!?力が・・・流れ込んでくる・・・!?」



4人のリミッターが光出す。

薫は痛いほどのパワーを感じた。



「「ザ・チルドレン」トリプルブースト!!完全解禁!!」



壁が唸りをあげている。

銀行員たちは、呆然と口を開けた。



「超能力を吸収するはずの電磁壁が・・・・!、す・・・すごい!これが「超度7」・・・!!」



壁のひび割れはどんどん広がっていく。



「ECCMの燃料が切れる前に破らないと・・・!!」

「あと、ちょっとーーーー!!」

「!!思いの外燃料の減りが早い・・・!!」



繋いだ燃料電池は、携帯電話のものだ。

使い古されていれば消費は早くなおかつ、全ての電池が満タンであった補償はない。

ここでもまた、時間との闘いであった。

1人冷静にECCMを見ていたなまえはひとつ息を吐き出した。



「(・・・やっぱり、影響はあるか、)・・・・澪、」

「なによ?」

「あげる、これ。」



特に表情を変えることもなくなまえが澪に差し出したのはリミッターだった。

全員の顔に驚愕の色がはしる。



「な、なにして・・・!?」

「僕は複合能力者だから、これを使えば澪の瞬間移動能力はブーストに加えられるはずだよ。」

「でも、あんたが抜けたら・・・!!」

「僕は、燃料をどうにかするから、」



強引に澪の首へネックレス型のリミッターをかける。

くるりと方向を変えると、ECCMへと向き合うなまえ。

ゆっくりと、その手をECCMへとかざす。



「燃料を長く保たせるなんてそんなことできるのか!?電気以外に保たせる方法なんて・・・・!」

「電気なら、あるーーーーーー」



バチバチと、電気が流れる音がした。



「局地迎撃超能力ーーーーーー「震電」」

「なっ!?」

「長くは、保たない、からーーーーー」



なまえが、苦しげに唇をかみしめた。

澪はチラリとなまえを見てから眉を寄せて葵の肩へと手を置いた。



「普通人の連中に、力を見せたエスパーのすごさ、見せてやんなっ!!」

「サイキックぅぅーーーーーー大脱出ーーーーー!!」



爆発するような音と共に地下の壁を突き破り、全員が地上へと飛び出す。



「やった・・・!!新鮮な空気ーーーーーー!!」

「こ・・・これが「超度7」・・・ウチの地下金庫がーーーーーー!!世界最高水準のセキュリティーがあああーーーー!!」



警備員が新鮮な空気に喜ぶ横で銀行員は涙を流した。

視線は黒い煙を吐き出し続ける地下金庫にある。



「なんということでしょう!?分厚く堅牢だっ外壁にはスッキリと穴があき・・・解放感あふれるクレーターに変身・・・・!!」

「いざきよく「壊れた」って言いなさいよ。」



某リホーム番組を彷彿とさせる銀行員の言葉にマッスルがツッコんだ。

見兼ねた皆本が慌ててフォローに入る。



「い、いや、しかし、こーしないと我々はあのまま・・・」

「わかっとる!!おかげで死なずにすんだんだからなッ!!まさかウチの行員にテロリストがいたとは・・・!!私も普通人だが、あの連中のしたことは許さん!!人の命をなんだと思ってんだ!!」



銀行員は未だに涙を流しながら歯をくいしばる。



「可愛いコたちじゃないか、君のエスパーは・・・!!たしかに、おそるべきパワーではあるが・・・私はあの子たちが死んだ方がいいなんて思えんよ。」

「・・・・・!!」

「口きかなくなる前のうちの娘もあんなんだったなあ・・・くれぐれもあの能力、使い道を誤らんようにしてくれ!」

「・・・ご心配なく、そのためにバベル・・・いや、僕がいます!」



銀行員の言葉が嬉しかったのだろう。

皆本の口元に笑みが浮かんだ。



「ん?」



何かものが降ってくるような音に、訝しげに薫が上を見上げようとする。



「ぎっ!?」

「か・・・薫ちゃん!!」



頭上から降ってきた金塊が薫の頭に直撃した。

金庫にあった金塊が全て打ち上げられていたのだろう。

続々と金塊は空から降ってきた。



「うわっ、金塊ーーーーーーーー!!」

「このっ、ふぎっ!!」

「え、」



念動能力で金塊をガードしようと伸ばした手からは何も起こらず、薫の頭にはまたしても金塊が直撃した。



「にゃーーーーーーーーっ!?」

「わーーーーーーーっ!?ちょっと!?どうしたの!?」



度重なる頭部への打撃により、薫は念動力が使用できなくなる。

薫の念動力によって宙に浮いていたため、全員が急激に落下していく。



「いかん・・・!!退避しろ!!ブーストは薫の体に負担が大きいんだ!!しばらく超能力は使いものにならない!!」

「にゃ!?そ、それを先に言わにゃきゃーーーーーーーー」

「テレポート!!」



葵により、落下中の一同は銀行の屋上へと瞬間移動する。

銀行の周りには金塊や札束がどんどん降ってくる。




「ちょっ・・・コラーーーーーー!!拾うなーーーーーーっ!!それは当銀行のものだああーーーッ!!やめろドロボーーーーーー!!」



銀行員の叫びは、虚しく夜空に響いた。









(本人は知らないだけで)(実際はたくさんの人から愛をもらってるんだ)

2018.01.22

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