霞み揺らぎ忍び寄る
「!来ましタ!「黒い幽霊」東南にあるビルの屋上から逃走中デス!こちらの方向に向かってきマース!」
『了解した。行くぞ、メアリー。』
『必ず捕まえマース!』
遠隔透視能力によって黒い幽霊を発見したケンの声に寄り待機していた大佐とメアリーが飛び出していく。
精神感応能力で三人の声を届けたなまえは静かに瞼を上げた。
「(相手は殺しのプロ・・・確かに無線よりも僕の精神感応能力で連絡をとるっていうのは良い案かもしれないね。)」
『見つけましタ!「黒い幽霊」!』
『やはり、こんな幼い少年が・・・。』
なまえとケンの居るビルからいくつか建物を挟んだ屋上で、大佐とメアリーは黒い幽霊と対峙した。
額に白いバンダナをし、黒の短パンと淡白なTシャツの上にジャケットを羽織った少年は突然の来訪者を静かに見つめている。
薫たちとそう年が変わらないであろう少年は動じることなく佇んでいる。
「この子が・・・、」
なまえは表情を固くした。
大佐とメアリーは、少年から発せられる雰囲気に驚きを隠すことができずにいた。
だがメアリーは気を引き締めるように一度こぶしを握るとすぐに攻撃をしかけた。
メアリーの念動力により形づけられた水は少年へと向かっていく。
「大人しくウォーター・プルーフ・ドラゴンの餌食になりなさイ!!」
「・・・・・。」
少年は見た目通りの身軽さで軽々とメアリーの攻撃を避ける。
少年は懐から拳銃を取り出した。
「(まずい・・・・!!)」
なまえは今朝見た資料を思い出した。
少年はどうやら念動能力者であり、超能力者と相性の悪い鉛を操るのが得意らしいのだ。
弾を撃たせてしまってはこちらが不利になってしまう。
『メアリー!!大佐!!撃たせたらダメだ!!』
「・・・こんな話を知っているかね?」
少年の背後へと瞬間移動した大佐は念動能力で少年を地面に押さえつけようとするが、失敗に終わる。
だが、大佐の真骨頂は話術にある。
「ある街にマッチ売りの少女が・・・・・」
「・・・・・・・・。」
しかし、少年は大佐の話など微塵も聞いていなかった。
ただ凍てつくような瞳を大佐へと向けただけだ。
「・・・君の心にはどんな話も響かないようだ。」
「死ね。老いぼれ。」
少年の銃が煙を上げた。
至近距離からの弾丸を避けることのできなかった大佐はビルのフェンスへと吹き飛ばされる。
「た、・・・・・大佐あああああああ!!!」
「大佐!!」
夜空になまえの悲痛な声が響く。
フェンスにもたれかかる大佐の姿を目にしたメアリーは感情のままに攻撃をしかける。
「この・・・・!!」
しかし感情に任せたメアリーの攻撃はあっさりと少年に避けられる。
少年はまた、引き金を引いた。
「くっ!ウォーター・プルーフ・バリア!!」
「メアリー!!」
「!なまえ!」
攻撃に使用した水を防御に回すメアリーを見たなまえは戦いが行われている屋上へと瞬間移動した。
ケンが引き留めようと手を伸ばすが、なまえの姿は既に消えていた。
「う、あああああ!!」
「メアリー!!」
メアリーは、弾丸によって弾き飛ばされる。
ビルの屋上へとたどり着いたなまえはメアリーを抱き上げた。
打ち所が悪かったのかメアリーはぐったりとして動かない。
屋上へと現れたなまえを少年は訝しげに見た。
「ガキ・・・?」
「見た目で人を判断すると後悔するよ。「バレット」。」
少年・・・バレットの言葉に凍えるような冷たい視線で答えた。
バレットはなまえに呼ばれた瞬間に表情を一変させた。
「お前、何者だ!?」
「・・・今の君に教えることは何もない、よ!!」
なまえは勢いよく走り出すと、念動力で風を巻き起こしバレットへとぶつける。
バレットが防御へと気を取られている間になまえはバレットの背後へと瞬間移動する。
なまえが攻撃を仕掛けるより先に素早くバレットは持っていた拳銃をなまえへと向ける。
銃口から放たれた弾丸はなまえへと向かう。
寸でのところで体を横にすることで弾丸を避けたなまえ。
「!!」
「避けても無駄だ!一度放たれたからといって終わりじゃないぞ!」
バレットの言葉通り弾丸は弧をえがいて再びなまえへと迫る。
なまえは素早くバレットの腕をとると自らのほうへと腕を引く。
突然のことでバランスを崩したバレットの背中を押すなまえ。
驚愕したバレットの眼前に弾丸が迫る。
「くっ!」
「慌てたんでガードが緩くなってるよ?」
なんとか弾丸を避けたバレットへと悠然と微笑むなまえ。
その手にはバレットが握っていたはずの拳銃があった。
「銃を奪ったところで無駄だ。俺は既に放った弾も操れる!!」
バレットの周りに今まで発砲した弾丸が集まる。
なまえは眉を寄せた。
鉛は超能力が効きにくいために直接の力勝負に持ち込まれては不利なのは断然なまえである。
「(・・・・こうなったら、精神攻撃しかないか・・・・・!)」
なまえは唇を噛み締めた。
そして精神感応能力でバレットへと催眠能力を使おうと試みた。
つい、深入りしてしまったのだ。
『こんにちは。「花嫁」』
なまえの中に声が、響いた。
それは薫たちと同じくらいだろう少女の声。
「(この、声は・・・・!!)」
聞き覚えのある声だった。