知られざる少女

「き、みは・・・・・」



なまえの頭に一瞬にして浮かんだのはついこの間の出来事だった。

仲間の居る山奥へと訪れた時のこと。

一人たたずんでいたなまえに声をかけてきた少女が。



『こんにちはなまえちゃん』



なまえの脳裏に甦ったのは心を暴かれた不快感と暗く甘い囁き。




「きみは・・・・誰なんだ・・・・!!」



輝く金髪を揺らしながら少女は笑う。

『また会いましょう』と唇が動いた。



「!!!」



なまえの目が衝撃に見開いた。

わき腹をバレットの銃弾が命中したのだ。

なまえはたまらず膝をついた。



「か、はぁっ・・・・!」



わき腹からの出血がひどく、足に力を込めることができないのだろう。

なまえは浅く呼吸を繰り返す。

不意にその場に不釣り合いな着信音が鳴り響いた。

音源はバレットのポケットからだった。



『バレット、次のお仕事が待っているよ。退却しなさい。』

「了解しました。」



バレットは携帯に短く応答するとすぐに退却しようと銃を拾い上げた。

なまえは念動力で体に力を込めて立ち上がった。

逃がすわけにはいかないのだと、その表情は物語っていた。



「ま、待ってよ、」

「さよならだ、花嫁。」



銃声が、闇夜に響いた。






























アフリカ大陸某国のとある廃墟に兵部はいた。

兵部の見つめる先には黒雲を上げる豪邸がある。

このあたり一帯は紛争中であり豪邸には紛争の元凶である独裁者がいる。



「フ・・・・。バカなオッサンだ。僕らを護衛に雇ってりゃ死なずにすんだものをね。金をケチるとこうなるのさ。殺したのはやはり「ヤツ」か?」

「はい。間違いなさそうです。」


兵部のそばに控えていた真木は懐から一発の弾丸を取り出した。



「僕らがマークしているのに気付いていながら仕事を片付けていくとはね・・・。相手にとって不足はないな。」

「は。・・・・少佐、余計だとは思いますが「花嫁」のことは・・・・、」

「知ってる。・・・・「花嫁」は死なないから大丈夫さ。」



兵部は僅かばかり眉を下げて笑った。

その表情に僅かばかりの苦しさを見つけた真木は静かに目を閉じた。



「・・・蛇足でした。」

「いや。それに、むしろ好都合さ。あの怪我じゃ「花嫁」は簡単には僕らに干渉できない。・・・・行くぞ真木!ヤツの次の仕事は日本だ。」

「はい、少佐!」

2018.01.22

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