大人の会話
「なまえが任務中に負傷!?」
「シッ!静かにしなさい!!声が大きいわよ!」
驚きに目を見開く皆本の口元を不二子は勢いよくふさいだ。
口元をふさがれて皆本は苦しそうにあえいでいる。
皆本の口元から手を離すと不二子はため息をついた。
「そうよ、コメリカでの任務中にね。」
「コメリカってことは、グリシャム大佐たちと一緒に任務だったはずじゃ・・・!!」
「大佐もメアリーも命に係わるほどではないけれど負傷中よ。・・・・それだけ今回の任務は危険だったの。」
「なんでそんな危険な任務に行かせたんですか!?」
『それは仕方なかったのデース。』
皆本と不二子の目線は机に備え付けてあったパネルへと移された。
「ケン!」
『久しぶりデス、皆本。今回の件については深く謝りマース。』
「本当よ!大佐には無傷を条件になまえを派遣したのよ?それなのに・・・!」
画面に向かってにらみを利かせる不二子に対してケンだけでなく思わず皆本もたじろぐ。
不二子にとってなまえはかけがえのない妹であり家族なのだ、その怒りはもっともなのかもしれない。
ケンもそう思っていたのか苦しそうに笑う。
『管理官の怒りも仕方ないデス、・・・・・奴はあっという間に事を片していきましタ。それだけ圧倒的だったのデース。』
「奴、って?」
『黒い幽霊デース。皆本、これは友人としての忠告デス。奴の次の狙いは日本、くれぐれも気をつけてくだサイ。』
「・・・ありがとうケン。」
『では、また会いまショウ。』
ケンは最後に軽く微笑むと通信を閉じた。
「この件、実はチルドレンも無関係じゃないのよね・・・・。」
「管理官?」
「今度の任務にパーティーの警備があったでしょう?」
腕を組み難しい表情をする不二子に皆本は眉を寄せた。
そして訝しげに頭の中で今度の任務の内容を反芻した。
「たしか、来日するサルモネラ大統領のですよね?」
「ええ。会場にはれっきとしたSPと軍のエスパーが警護に当たるわ。」
「超度7とはいえ「ザ・チルドレン」はまだ子供ですからね。」
「そうよ。・・・だから逆によかったと思えるのだけど。」
不二子は小さく息を吐き出した。
「サルモネラ大統領は「暗殺されるのも時間の問題」とささやかれるほど敵の多い人物よ。その人物の来日と同時期に黒い幽霊の来日。・・・・あなたはどう思う?」
「!!まさか、「黒い幽霊」の標的は・・・!!」
「おそらく、サルモネラ大統領でしょうね。・・・・さっきも言ったように会場には軍のエスパーをはじめとしたプロが警護にあたるわ。」
超度7とはいえ「ザ・チルドレン」はまだ若干11才の子どもだ。
しかし、政府にとっては子どもも超度7という「強大な力を持った化け物」にしか写らない。
黒い幽霊は標的を暗殺する際に、まず警備のエスパーを仕留めるという。
つまり、不二子たちはにとっては本来そんな危険な任務に関わってすら欲しくないのだ。
だが、政府はそれを許さない。
せめてもの抵抗として、会場の警備には加わらずいざという時の戦力として会場の傍で待機させる形をとるしかなかったのだ。
皆本は一つ瞬きをすると静かに息を吐いた。
「・・・・僕らにできることは、」
「チルドレンは今のままで大丈夫でしょう。・・・・なまえには上から会場の警備にあたるように通達が来てたけど、負傷を理由に断るわ。」
「はい。」
「ただし、この件はチルドレンにもなまえにも言わないこと。・・・・なまえはもっと、他人を頼るべきなのよ。」
唇を噛み締める不二子。
その瞳には強い意志が輝いていた。