君が気づくことはない

似ている、からだろうか。

そこには踏み込んではいけなかったのに。



誰だって、触れたくない所は―――あるのに。























「なまえ?」

「アレン――――、」




名前を呼ばれ、意識が戻る。

どうやら無意識の内にアレンのいるホテルにテレポートしていたらしい。


駆け寄ってくるアレンを見て、強張っていた(らしい)表情が緩む。




「さっきはご―――――!?」

「こ、怖かったよーー!!」




アレンに抱き着く(という名のタックルをかました)。

ぐえ、とかアレンから聞こえた気もする。
けど、さっきまでの恐怖を考えたらアレンに会えた安堵でそれどころじゃない。



「ん゙ぅ゙・・・・!く、苦し・・・・!!」

「こ、殺されるよーー!!僕、クロスに殺されちゃうーーー!」

「・・・・・・・・・・・(その前になまえに殺される――――)」

「へ?」




何も言わないアレンを透視したら、彼は大変なことになっていた。




「アレーーン!?」

「だ、だい・・じょうぶです、・・・たぶん。」




慌てて解放すると地べたに座り込み息を吸うアレン。

・・・・手加減を間違えたのだろうか。念動力を使った覚えはないけど、しがみついた位置が悪かったようだ。




「で、師匠に殺されるってどういうことですか?」

「・・・・クロスが教団嫌いなのは知ってるよね?」

「あー、・・・・・・・はい。」

「・・・・・・会っちゃたんだよ・・・・・エクソシストに。」

「・・・・・・え゙。」




ピシリッとアレンの表情が固まる。

次にだらだらと汗が流れ出し、顔色が青ざめてゆく。




「・・・・・・そ、そ、それで・・・・な、何かしちゃったんですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、いや、なんていうか。」

「・・・なにかしちゃったんですね。」



無意識にやってしまったこととはいえ、クロスにバレたらなんて言われるか・・・!

飛んでるの目撃されたみたいだし、手・・・弾いちゃったし、テレポート・・・・しちゃったし・・・・・・・。


僕の表情が変わったのがわかったのか、アレンの目が鋭くなる。




「えーと・・・・・クロスについては・・・・・・・話して・・・・ない、けど、」




多分、僕については・・・・・室長に報告してると思う。罪悪感にもごもごと下を向いて話す。

アレンの顔を見れない。アレンの地雷は踏むわ、クロスに迷惑をかけるわ・・・・・。




「最悪じゃん、僕・・・・・・・。」

「・・・・・・なまえ、」




頭に感じる温もり。

アレンの手はそのままわしゃわしゃと僕の髪を混ぜた。




「約束、覚えていますか?」

「約束?」




酷く優しいアレンの声に、そろそろと顔を上げた。

アレンは眩しいくらいの笑顔。




「そうです。僕が、なまえを守るって約束。」

「あ、・・!」




その様子だと忘れてたみたいですねと笑うアレン。

ううん、忘れていたわけじゃない。忘れるわけなんてない。
だって、あれはこの世界で初めてもらった、大切な言葉だから。

力を込めて首を振って、忘れていたわけじゃない、と否定を主張したらアレンが少し声に出して笑った。




「で、でも・・・・・そ、それがクロスと何の関係が・・・?」

「要は言わなければいいんです。」

「え、」




今なんて言ったのだろうか。

邪気なく笑うアレンの笑顔からとんでもない言葉が飛び出た気がする。




「大丈夫です。何も言わなければ流石の師匠だって、言ってもいないことに気付けはしませんよ。」

「そそそそんな恐ろしいこと・・・・・・!!」




頭の切れるし、感のいいクロスをどうやって騙すと言うのか。

アレンは僕を落ち着かせるように僕の両手を包みこんだ。




「大丈夫です。なまえ、いつも通りにしていればいいんですから。」




ね?と可愛いらしく微笑まれたら、「うん・・・・・。」としか言えないじゃないか。

返事を聞いて満足げに笑うアレンに、もしかしていまの可愛さ全て計算だったのかという僅かな懸念を僕は頭から振り払った。





























「そういえば・・・・何か変わった事はなかったかい?」




電話越しにそう言うコムイに、やっぱり出発前にあんな話をしたのはわざとだったと確信した。

ふふ、だがなコムイ聞いて驚くがいーさ!






「それがあったさ。」

「何が?」

「とーても楽しいことが!」




焦らす様に言えば、よっぽどそれが嬉しかったんだ?とコムイ。




「そう!オレ、とある女の子に会ったんだよね!」

「女の子?」

「そうとびっきり可愛い女の子さ!しかもその女の子、なんの手助けもなしに空を飛んでたんさね!」

「・・・・・エクシストかい?」




興味津々の、コムイの声。

やっぱり思い通り、食いついてきたさ!




「オレとユウで、なんとか接触まではこぎつけた。」

「それで?」

「逃げられたさ。」

「・・・・・・・・・・は?」




たっぷりと沈黙を作ってからコムイは言葉を漏らした。

こんなコムイ滅多に見れない。声しかわからないのは残念だ。




「手、弾かれた。」

「弾かれた?素手で?」

「いや、なんかこう――――いきなり強い力で弾かれた。」

「・・・・・それで?」

「んで、逃げられた。」

「どうやって?」

「急に姿を消したんさ。走った訳でもない、高くとんだ訳でもない。」




ただいきなり消えた。

コムイは思考しているようで、電話からは何も聞こえなくなった。

暫くしてコムイは、わかったとだけ告げた。




「あ、それと。」

「なんだい?」

「その子、逃げる前にクロスって言ってたさ。」

「でかしたよ!ラビ!!」




じゃあ僕はやることあるから!と慌ただしく切られた電話。

自分が期待している結果が見えそうで、オレは一人にやにやと笑う。












(足音を隠して忍び寄るそれに)(僕が気付くことはなかったのです)





title by 彗星03号は落下した

加筆修正:2018.03.18
2018.03.18

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