それは静かに 静かに

「・・・・・・クロス、」

「あぁ?」




相変わらず歩幅の大きいクロス。
その後を歩く僕は自分の顔から血の気が薄くなっているのに気づく。




「なんですか、この、悪趣味な城とか飾り。」




さっきくぐり抜けてきた顔を象った巨大な門、見渡す限りにある不気味なオブジェ、眼前にある大きな城。

とてもじゃないがまともな趣味とは考えられない。




「ここの城の奴の趣味だろ。」

「・・・・悪趣味ですね。」




本当に。
雰囲気あり過ぎだ。

人肌が恋しくなって、ぎゅっとクロスの腕にしがみつく。




「どうしたなまえ?怖いのか?」




クロスは意地の悪い。
ニヤニヤとこちらを見てくるクロスを見て認識が正しいことを感じた。




「・・・・・こ、怖くなんか、」





――ガサガサッ





「ひゃ・・ぅ・・・!!」




不意に聞こえた音に、思わず変な声を上げてクロスに抱き着いてしまった。




「・・・・・やっぱり怖い、です、クロス。」

「・・・・・・・」




地面を向いて静かにそう告げると、何故かクロスが立ち止まって黙り込んでしまった。

不思議に思って顔上げると、ほんの少し目を見開くクロス。




「・・・・・素直なのもいいな。」

「へ?」

「なんでもねぇ。なぁなまえ?」




小さく何かを呟いて、どこか楽しそうに笑いながらクロスは口を開いた。




「なんです?」

「早く大人になりたいか?」

「え、唐突になんですか?」

「いいから、イエスかノーで答えろ。」

「・・・・・・それは、まぁイ「騙されたら駄目であるーーーーッ!!」

「・・・・・ある?」




バンッと勢いよく開かれた城のドア。

そこから長身の、真っ黒なマントを着た男性が表れた。




「チッ」

「え?クロス??」




忌ま忌ましげに舌打ちをするクロス。

そして苛立ちさを隠しもせずに口を開く。

・・・・・とばっちりなど貰いたくないのでそっと掴んでいた手を離す。




「おい、お前。」

「な、なんであるか。」




・・・・・ある?
今時珍しい口調で話す人だなぁ。




「この城に、アレイスター・クロウリーは居るか?」

「・・・・・・何の用であるか。」




真剣な表情のクロスにつられたのか、男の表情に警戒の色が浮かぶ。




「心配すんな、ここの爺の訃報を聞いて来た。あと、預かりもんを返しにな。」




クロスの口からそう言われた男は、警戒を解き少し呆気にとられたような表情をした。




「御祖父様のご友人であるか・・・・?」

「あ?んじゃ、お前が孫のアレイスター・クロウリーか。」

「そうである。」

「じゃあ、話が早い。友人の孫のよしみで金を貸せ。」

「クロスーーー!!」




此処でもまたそんなこと言うのかあなたは!!


























「たぶんね。たぶん。あると思うんだよねイノセンス。」







書類やら資料やらに埋もれながらコムイさんは僕とリナリーに言った。




「といっもたぶだからね たぶん。期待しないでね。たぶんだから。絶対じゃなくてたぶんだから。でもまあ たぶんあるんじゃないかなーってね たぶん。」

「わかりましたよ、たぶんは。」




崩れた資料に埋もれていくジョニーを横目に僕は答えた。




「なんてゆーかさ。巻き戻ってる街があるみたいなんだよね。」

「巻き戻る?」

「そう。たぶん時間と空間がとある一日で止まってある日を延々と繰り返してる。」




そこまでコムイさんは僕らに告げるとリーバー班長ーと怠そうに声をあげた。

ウィース・・・・とこちらも死にそうな感じのリーバー班長がやって来た。




「調査の発端は、その街の酒屋と流通のある近隣の街の問屋の証言だ。
先月の10月9日に「10日までにロゼワイン10樽」との注目の電話を酒屋から受け翌日10日に配達。ところが何度街の城門をくぐっても中に入れず外に戻ってしまうので気味が悪くなり問屋は帰宅。すぐに事情を話そうと酒屋に電話をしたが通じず。
それから毎日同じ時間に酒屋から「10日までにロゼワイン10樽」との電話がかかってくるらしい。
ちなみに問屋はノイローゼで入院した。」




こ、怖い・・・・・。
入団してから1番怖い話かもしれない。




「調べたいんだけどさあ。この問屋同様、探索部隊も街に入れないんだよ。とうワケでここからはボクらの推測。」




相変わらず怠そうに話を続けるコムイさん。




「@もしこれがイノセンスの奇怪なら同じイノセンスを持つエクソシストなら中に入れるかもしれない。
Aただし街が本当に10月9日を保持し続けてるとしたら入れたとしても出てこられないかもしれない。空間が遮断されているだろうから。」




ずるずると身体を机に倒し、本で顔を隠すコムイさん。




「そして調べて回収!エクソシスト単独の時間のかかる任務だ・・・以上。」

「わかりました。行きましょうリナリー。」

「じゃあ、30分後に下で会いましょう。」




ソファーから立ち上がりお互いに確認し合い僕らは部屋を後にした。
















(その先に何があるかなんて誰もわからない)


title by 彗星03号は落下した
2018.03.18

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