一歩踏み出す前

「・・・一体何をしたんですか、ラビ。」

「・・・オレは何もしてねぇよ。」




ラビのぷっくりと腫れた額と鼻。

かわいそうだけど、こちらとしては結構笑える。

かと言って笑うと、ラビの機嫌がさらに悪くなるのは目に見えている。




「だけど、あんななまえは僕見たの初めてですよ。」

「って言われてもなー。」




ぐったりとソファーに沈むラビ。

なまえは会って数日もしない人に対して、攻撃をするほど短気ではなかったはずだ。

特に、超能力で力いっぱい人を地面に張り付けるなんてことは。




「まぁ、暫くはなまえに近づかない方が1番賢いんじゃないんですか?」

「・・・・そうするさ。」




ますます落ち込むラビ。

・・・・やっぱり可哀相かもしれない。


































「なまえ――――さん?」

「こんにちわ、えっと・・・・・。」




なんだっけ名前。

確か起きた時に居た子だ。




「リナリー・リーです。リナリーで大丈夫ですから。」

「すいません、えっと・・・リナリー。」

「いえ、大丈夫です。」




にっこりと微笑むリナリーと共に揺れるツインテール。

・・・・可愛い女の子ってリナリーのようなことを言うんだろう。




「どうしたんですか?こんな所に。」




屋根の上なのに。

わざわざイノセンスを発動してまで来るのだから、何か重要な用事でもあるのだろうか。




「ただ・・・・話したかったっていうのは、ダメですか?」




そんな風に、ちょこんと首を傾げて懇願するように言われたら。




「いいですよ。」




って言うしかないじゃないか。

・・・今は、一人になりたいのに。




「なまえさんって、何歳ですか?」

「僕は今―――たぶん14。」

「じゅ、14!?」




もともと大きな目をさらに見開くリナリー。

・・・・・今まで会った人に年齢を言うと、みんな驚くのはなんでなんだろう。




「あ、ごめんなさい!その、雰囲気が落ち着いていたから・・・同じ年か年上だと思っていたから・・・・。」

「大丈夫。よく間違えられるから。」




慌てて申し訳なさそうな顔をしたリナリー。

多分、悪い人ではないと思う。
優しい感じ。
ちょっとアレンに似てる・・・かも。




「あの「なまえ。」

「え・・・・?」

「呼び捨てでいいよ。敬語もいらないよ、だってリナリーのほうが年上だし。」




途端に笑顔になるリナリー。

なんだか、こっちまで笑いたくなるような笑顔だ。




「なまえって東洋人?」

「うん。日本人だよ。」

「なら、神田と話が合うかもしれないわね。」

「かんだ?」




珍しい苗字だなぁ。

神田って人は、リナリーの表情が柔らかいのを見ると昔からの馴染みかもしれない。




「うん。ちょっと気難しいけどね、いい人だから。」

「そっか。」




でも多分、僕とその神田が会うのは暫くないだろう。

・・・・・クロス、

貴方がそう簡単に見つかるとは思えないですから




「リナリーは教団に長く居るの?」

「えぇ。・・・・・・最初は、一人で教団に連れて来られたの。でもね、何年か経ってから兄さんが室長になって教団まで追い掛けてきてくれたの。」

「室長さんが・・・・。」

「そう。・・・だから私はね、兄さんの為に戦うの。」




強い兄妹の絆。

僕は、彼女のように誰かを思って、強くなれるのだろうか。




「なまえは?」

「・・・・僕はね、クロスに助けてもらったの。」

「元帥に?」

「そう。・・・・彼が居てくれたから、僕は僕になれた。」




ここで異質な存在である僕にとって、人との繋がりはとても重要なものだ。

認識されなければ、僕ではいられない。

一人で居ることなんて、堪えられない。




「・・・・けどね、僕はクロスに置いていかれたんだ。」




夜風が寒くて、足を抱えた。所謂、体育座り。

彼がいないと知った時から消えない寂しさ。




「・・・・・僕は、どうしたらいいんだろう。」




なんかもう、自分がわからないや。

夢をみてから追い掛けなければとは思うのだけど。




「・・・なまえはクロス元帥のことが好きなのね。」

「・・・え?」




優しい声。

隣にいる彼女はとても綺麗に笑っていた。

・・・じゃなくて!
好きって、いや、え、ありえない!




「すすす好きとかありえない!!あんな女ったらしで鬼畜で悪魔で飲んだくれで・・・。」

「うん。」

「借金まみれだし、人のこと・・・考えないし・・・。」




・・・けど、優しいんだ。





「クロス元帥と一緒に居たいんでしょう?」

「うん、」

「それなら、追い掛けて・・・・元帥に言ってあげればいいのよ。」

「なんて?」

「「一緒に居たい」って。」




「だって好きなんでしょう?」微笑むリナリー。

好き、なのかな。

嫌いでは、ないけど。

・・・・わからないけど、




「うん、僕・・・・・クロスのところ行ってくる。」




寂しいのは、置いてきぼりは、もう、嫌だから。















(決意はできたの)(後はあなたに会うだけ)


title by みっけ

2018.03.18

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