世界とは案外せまいもので
「なぁ、おじちゃん!」「なんだジャン。てかおじちゃんじゃなくてお兄さんな。」
「その薄い頭とメタボなお腹をどーにかしたらそう呼んでやるよっ!」
「そんなこと言っていいのか?いつものやつにピーマン入れちゃうぞ。」
「え!?俺のハンバーグ!」
「そのまま渡して欲しいなら謝るんだな。」
「ご、ごめんてば!」
随分と和やかな会話が聞こえてくる。
自分の周りには中々ないような会話だ。
くるくるとフォークに巻き付くスパゲティーを眺めながら耳を傾かせる。
「で、どうしたんだ?」
「エクソシストを見たんだ!」
「ふーん。」
「あ、なんだその反応!」
テーブルに置かれたハンバーグにがっつきながら少年は、メタボなおじちゃん(仮名)に叫ぶ。
エクソシスト、か。
この間、別れたばかりのアレン達でないことは確かだろう。
だって進行方向が同じ訳ないし。
「そいつがさ!オレの発明した物見てさ!「お前は将来良い科学者になるぞ」って言ったんだよ!」
「ほー。それは良かったじゃねーの。」
「でもさ、エクソシストって言うわりには自分のこと神父って言うし、口も悪くて、それにあんな目立つ赤毛見たことない!」
・・・・・なんだか見覚えがありすぎる人物が頭に浮かんだ。
とりあえずもう少し話を聞いてみよう。
はやとちりだったら恥ずかしいし。
「そんなに目立つなら、俺も一度くらい見たことありそうだがなぁ。」
「それはないよ!だってそいつ、この街にはちょっと立ち寄っただけって言ってたし。」
「急ぐ旅でもしてるのかね?」
「うん、東の遠いほうに行くんだってさ。」
なんだ、やっぱり居るわけないか。
というか、これまだ私と一緒に行動してた時の話な気もする。
・・・・次の行き先は、とりあえず中国かな。
「ごちそうさま。」
空になった皿にフォークを置いて立ち上がる。
ここのスパゲティーは中々美味しかった。
また今度来ようと心に決めた。
「エクソシストといえばさ、アレン、元気かな。」
「かなりの大食いなんだろう?なら、元気にやってるさ。」
「・・・・だよな!」
背中からそんな会話が聞こえて、思わず微笑んでしまった。
良かったね、アレン。
「さてと、暫く頑張りますか。」
例えばやさしい世界の話
(彼にとっての日常)(僕にとっての非日常)
Title by ≠ENTER
2018.03.18