救いはどこか
「僕に任せて下さい、」そう言って僕に背中を向けた白髪の少年を、僕は馬鹿みたいにぼんやり眺めることしかできなかった。
少年は左手を前に出すようにしてアクマを睨みつけている。
『あぁ?なんだ、こいつ俺達とやり合うつもりか!』
『ギャハハハ!無理だっつーの!!』
『俺が遊んでやるよ!ガキ!!』
「僕だって…エクソシストなんだッ!!」
力強く叫ぶ少年。
彼が叫ぶと同時に彼の左腕がにぶく光りだす。
「な…に?」
『あいつの左手、イノセンスじゃね?』
『もしかして、あいつエクソシストか!?』
『おれ!おれが殺る!』
光がおさまった後に彼の左腕は少年の腕には不釣り合いな、白く大きな手になっていた。
指先にあたる部分は大きく尖った爪が生えている。
エクソシストと、自らを名指す彼。
ティキ・ミックから透視した情報にはエクソシストは"ノアや千年公を除いて唯一アクマを破壊できる人物"とあった。
アクマを破壊する為に使う武器は”イノセンス"というらしい。
ならエクソシストと名乗った少年の左腕はイノセンスなのだろうか。
「僕が…守るんだッ!!」
少年へと腕を振る、アクマ。
少年は変形した左腕を前にだし、攻撃を防ぐが勢いに負けてそのまま飛ばされる。
「くッ!!あぁッ!!!」
視界の中で少年が宙を横切る。
壁にぶつかり、力無く崩れ落ちる少年。
「…っ!!く…!」
霞む頭を振り絞り、重い体をサイコキネシスで持ち上げ、少年を助けようと僕は立ち上がった。
ミシミシと体が唸る。
「……少年ッ!!」
掲げた腕に力を込めて、少年を攻撃しようとしていたアクマを押さえる。
しかし、万全でない状態ではあまり押さえることができない。
血を流しすぎた。力が出ない。
『ふ、ざ…け、やがっ…てぇええええ!!』
「くッはぁ、ッ!!」
ギ、ギギと徐々に動き出すアクマ。
しかし、敵はそいつだけでなかったことを、僕は失念していた。
『くっそぉぉ!!これでもくらえ!』
きゅぃぃぃんと高く不快な音が、した。
「いっあ、ああぁああぁぁあぁああぁぁぁあぁ!!!!」
ピキッと、頭のどこかが唸った。
意識を、保てない。
かざしていた手で今にも壊れそうな自分の頭を抱える。
『やったぜぇ!!!おれのおかげだな!』
「(苦しい、くるしい、)」
『どーでもいいから、とりあえず捕獲しようぜ!』
「(もう…や…だ…、)」
『あぁ!ノア様に褒めてもらうんだ!!』
「もう…い…や、」
ひりつく喉で自分がさっきまで叫んでいたことに気付く。
感覚が麻痺しているのかあれほど感じていた痛みを感じなくなっていた。
動くことはおろか、考えさえももう何も考えられない。
「(このまま、千年公の元へ連れていかれるのか、)」
恐怖はなかった。
もう、どうでもよかった。なにもかも。
「────もう、いいよね、」
「よくねぇよ、」
閉じかけた視界に飛び込んできたのは、赤を身にもつ男だった。
赤い、長髪が風に靡いている。
「(ああ、やっと会えた。)」
そう思ったのが最後。
あとは知らない。
何もない
気が遠くなるほどひろい空間
独りだった
だれもいない
だれもいないんだ
走るのはもうやめた
(疲れたたんだ、全部)
title from ララドール
2018.03.18